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アメリカでも流行中!「スマホ×フリマ」で世界を制す【2】 -対談:メルカリ社長 山田進太郎×田原総一朗

村上 敬=構成

主婦や若年層を中心にユーザー数を増やすフリーマーケットアプリ「メルカリ」。サービス開始2年半で日米2900万ダウンロードを突破した。アメリカでの成功を足掛かりに、日本のITサービス初となる世界スタンダードを目指す。

衝撃だったLINEの大ヒット

【田原】その後はどうしたのですか。

【山田】「映画生活」という映画のコミュニティサービスを立ち上げました。僕は映画が好きなのですが、当時は映画の動員数や興行成績はわかっても、見た人が自由に評価をしたり、ネタバレの感想を書き込めるようなコミュニティサイトがなかった。それなら自分でやってみようと。

【田原】これは起業してやったの?

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【山田】最初は趣味の延長です。2001年にウノウという会社にして、2005年に株式会社にしました。

【田原】ウノウでは、どんなことをやったんですか。

【山田】当初は「映画生活」や写真共有サイト「フォト蔵」といったインターネットサービスを運営していました。ただ、このまま頑張ってもグローバルなサービスにはならないというストレスがありました。「映画生活」はもともとドメスティックなサービスだし、写真共有サイトは世界に競合が多い。では、日本独自の強みがあるものは何なのか。そう考えたときに目についたのが、モバイルとゲームでした。これなら世界で勝負できると考え、ソーシャルゲームにシフトしました。2008年くらいです。

【田原】ところが10年に会社を売却します。なぜですか。

【山田】売ったのは、やはり世界でやりたかったからです。売却先はZyngaという世界最大のソーシャルゲーム会社。当時はPC中心ですが、月間3億人くらいのユーザーがいて、その傘下に入ってパブリッシュ力を使えば僕らが海外に行けるチャンスも広がると判断しました。世界で勝負するというミッションと独立性を比べて、ミッションを取った。ただ、結局はここも辞めて独立しました。

【田原】どうして?

【山田】やりたいことができなかったんです。きっかけとなったのは、メッセンジャーサービス。韓国に行ったとき、カカオトークというサービスを見て、これは絶対に流行ると確信しました。さっそく会社に稟議書を出しましたが、通すのに半年かかってしまった。いざつくり始めたら、こんどはアメリカの本社から「日本向けのゲームに集中しろ」と言われて、プロジェクトがストップ。そのうちにLINEが出てきて、あっという間に普及しました。

【田原】メッセンジャーサービスをやろうとしたのはLINEより早かったのに、それができなかったと。

【山田】つくり始めたのが遅かったので、会社から止められなくても結局はLINEのほうが先だったと思います。ただ、ほかにも本社からの指示でプロジェクトがキャンセルされたことがあって、やっぱり自分でやらなきゃダメだと感じました。

【田原】その後、世界一周したそうですね。何か収穫はありましたか。

【山田】半年強かけて20数カ国回りました。いま振り返ると、あのころ自分の世界観が確立した気がします。飛行機をなるべく使わずに電車やバスで移動していたのですが、自分の身体を使って移動していると、地域ごとの文化の違いだとか、豊かな国と貧しい国があることが肌感覚でつかめてきた。これはいま世界展開するうえで役に立っています。

【田原】その後、メルカリを始める。

【山田】帰国して衝撃的だったことがありました。旅立つ前はガラケーが主流で、連絡先を交換するのも赤外線通信だったのに、帰国したらみんなスマホを持っていて、「連絡先? LINEでふるふるしましょうか」となっていた。スマホで個人と個人がより簡単につながるようになっていたんです。元々個人間取引はおもしろいと思っていましたが、ヤフオクには太刀打ちできない。ひっくり返すならスマホが普及したいまだと。それでメルカリをつくりました。

米で成功すれば世界基準になる

【田原】山田さんは、自分はリバタリアンだとおっしゃっている。

【山田】国という枠組みがあることで秩序が保たれていることは理解しているし、それを否定するつもりはありません。ただ、僕はいいサービスをつくって、できるだけ多くの人に使ってもらいたい。そのために規制は少ないほうがいいし、国境も自由に越えられたほうがいい。その意味でリバタリアンと言っています。

【田原】実際、メルカリは早くから世界を視野に入れていますね。

【山田】いまアメリカでやっているのですが、早くヨーロッパもやりたいし、いずれは途上国まで広げたい。最終的には、日本で車を出品したら、アフリカの人が買うみたいな世界をつくっていけたらいいなと。

【田原】いまアメリカには何人いらっしゃるんですか。

【山田】約30人です。ダウンロード数で言うと、500万~600万。アメリカでは販売手数料無料でやっているので売り上げはゼロですが、やろうと思えばすぐ黒字化できるという段階まできています。

【田原】なぜアメリカからなんですか。世界を攻めるなら近場のアジアからという考え方もあると思うけど。

【山田】アメリカが世界の縮図だからです。アメリカの多様な人種の中で受け入れられるサービスをつくれば、世界のどこででも通用します。実際、フェイスブックやグーグルなど、世界中で使われているインターネットサービスはほとんどアメリカ発。アメリカは市場の競争が激しく、人件費も高くて大変ですが、アメリカで成功しなければ世界はないと考えています。

【田原】日本発じゃ無理ですか。

【山田】日本からだと、自分たちは世界に向けたつもりでも、どうしても日本っぽいサービスになってしまうんです。僕たちもアメリカに行ってはじめて、何がユニバーサルなサービスなのかがわかりました。

【田原】具体的に言うと?

【山田】文字に頼った説明はダメですね。日本では商品にいろいろ注意書きがついているのが普通ですが、アメリカだと文字の説明がなくても一目で「これはやっちゃいけない」とわかるデザインにしないといけない。僕たちもやっているうちに日本版はごちゃごちゃ説明が増えてしまっていたので、いまはアメリカ版に合わせてすっきりさせました。

【田原】おもしろい。変えた後、日本のユーザーの反応はどうでした?

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【山田】とくに変わりなかったです。日本人も、すでに日常的にフェイスブックやGメールを使っています。それらを問題なく使っているのだから、日本のユーザーのために日本っぽくする必要はない。そこは間違えてはいけないと思います。

【田原】アジアはどうですか。

【山田】メルカリのビジネスを展開するには、決済と物流のインフラが必要です。日本は支払い方法がたくさんあるし、安価に早く物を届ける物流網もある。アジアはまだ整っていないので、現段階ではちょっと早い。欧米の後に、インフラが比較的整っている台湾あたりから入って、タイやベトナムといったところに広げていくことになると思っています。

【田原】わかりました。世界展開、注目しています。

田原氏への質問:優れた政治家と経営者、違いを教えてください!

【田原】優れた政治家は、よく言えば柔軟、悪く言えば日和見。たとえば安倍晋三は日和見の典型でしょう。従軍慰安婦の問題でお金はこれ以上出さないと言ってきたのに、今回パッと払うことにした。どう考えても矛盾しています。でも、政治家は清濁併せ呑むしたたかさが要る。状況に応じて意見を変えてもいいんです。

一方、経営者は日和見だと大成しない。経営では、市場のニーズに応えて柔軟に対応していくことが大切だと言われます。しかし、経営者を見ていると、市場に振り回される腰の軽いタイプより、むしろ自分の信念を持って、それを貫き通しているタイプのほうが成功している。トップは決してブレない思いを持つことが大切です。

遺言:政治家は日和見、経営者はブレるな

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

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