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都立高校入試でまた出題ミス 理科教員の地学離れは深刻 - 勝村久司 (高等学校地学教諭、元厚生労働省医療安全対策検討WG委員)

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 2月24日に実施された東京都立高校の理科の入試問題を解いてみて驚いた。正解として4点を与えるべき選択肢が不正解とされている。

 受験した都立高校を1点差で不合格になった生徒もいるだろう。既に合格発表がされてしまっているが、今からでも遅くはない。都教委は、合否判定をやり直して不合格が合格に変わる生徒に対しては、適切な対応をすべきだと思う。

2016年の理科 第3問の問1

 解答が間違っているのは、第3問の問1の金星の位置の設問である。

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(出所)東京都教育委員会:問題はこちら、解答はこちら


 この問題は、図1、図2の情報を元に、金星が図3のア~エのどの位置にあるかを答える問題である。考えてみよう。

 まず、図1より、金星は火星と月の間に見えていることから、アの位置ではないことがわかる。もし、アの位置ならば、図1で、金星は火星よりも地平線側(下)に見えていなければいけないからだ。

 次に、図2より、金星を望遠鏡で見たスケッチが、満月形と半月形の中間形になっていることから、エの位置でもないことがわかる。なぜなら、もし、エの位置ならば、金星を望遠鏡で見たときに、半月形になっているはずだからだ。

 だからこの問題の答えは、一目見て、アやエではなく、イかウのどちらかであることがわかる。

正答は「イ」なのか「ウ」なのか

 では、続けて、イとウのどちらが正解なのかを考えてみよう。

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 まず、図1から、西の空に見えている金星の位置は、火星と月の間のちょうど中間のやや火星寄りだ。これは、図3において、金星がイとウのどちらに位置しているときの見え方だろうか。

 それを考えるためには、錯覚をしないように補助線を引くとわかりやすい。筆者が図3の上に補助線を引いた図を見てほしい。

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 これを見ると、ウの位置に金星があるときに、ほぼ、月と火星の中間地点に金星が見えることがわかる。もし、イの位置に金星があったとすると、図1の西の空の図においては、金星はそこに書かれている場所よりも、かなり火星に近い場所(図1で書かれている金星の位置と火星の位置の中間地点、もしくはさらに火星に近い側)に見えているはずであると考えられる。

 なお、ウの位置が、月と火星の視線方向のほぼ中間にあたっていることや、イの位置が、視線方向としてはかなり火星に近いということの理解は、補助線を引いて見てみないと錯覚してしまいやすく、注意が必要だ。

 また、補助線を引くときには、模式図における個々の惑星や月の中心どうしを直線で結ぶ必要があることも押さえておかなければいけない。太陽系のスケールに比べて、惑星や月のスケールは極めて小さく、本来は点で表現すべきところ、それではわかりにくので、便宜上、大きめの丸で表現しているだけに過ぎず、それぞれの丸の大きさには全く意味が無いからだ。

 まとめると、図1をもとに考えると、イもウもぴったりと合わないけれども、どちらかを選べと言われたら、私なら、ウの位置の方が明らかに図1の状況に近いので「ウ」を選ぶだろう。

 続けて図2を見てみよう。

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 これは、金星を望遠鏡で見たスケッチであるが、満月形と半月形の中間の形といえるだろう。ここで再び図3をみてみよう。地球、太陽、金星の位置関係からすれば、イの方がより満月形に近く、ウの方がより半月形に近くなる。

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 図2は、満月形と半月形の中間の形なので、イもウも該当するが、どちらかと言えば、かなり満月形に近い印象のスケッチであり、どちらか一つを選べと言われれば、私なら「イ」を選ぶだろう。

 つまり、図1からは「ウ」、図2からは「イ」を選ぶことになってしまい矛盾が生じている。

 図1は肉眼で観察したスケッチであり、図2は望遠鏡の性能によってはぼやけていたかもしれないスケッチである。どちらか一つを選べと言われれば、私ならば、肉眼で観察された図1の方がより正確と考えて、「ウ」と解答するだろう。

 しかし、この設問では「イ」も×にはできず、「イ」と「ウ」の両方を正解にすべきである。

 ところが、都教委は、「イ」と解答した生徒には○で4点、「ウ」と解答した生徒には×で0点、として採点をして、合否判定をしてしまっているのである。

なぜ都教委は間違ったのか

 なぜ、このようなはっきりしない設問になってしまったのか。その理由としては以下のようなことが考えられる。

 実はこの設問は、フィクションではなくノンフィクションの形態をとっている。平成27年3月24日という日付を明記し、その日の実際の惑星の位置についての設問としているのである。そして、当日の金星の実際の位置を調べてみると「ウ」の位置だった。だから、解答が「ウ」となるように設問が作られるのが健全だったはずである。

 にもかかわらず、解答が「イ」になってしまったのは、作成者が実際の位置をイだと勘違いして、それに合わせるように図2のスケッチを描いてしまったからではないか。

 ノンフィクションのフリをしながらも、フィクションで設問を作るのならば、図1の金星の位置も、月と火星の内分点で3:1から4:1くらいの比で、思い切り火星の近くに書いておくべきだった。

 そもそも、理科の問題で、フィクションなのにノンフィクションのフリはすべきではない。まして、ノンフィクションなのに、事実と異なる答に至るように誘導する設問は、極めて不健全だ。

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