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嫌われ者の人事 グローバルカンパニーとの違いは? - 寺川尚人

「新規事業に手を出したくても人事がついてこない……」

 先日、大手メーカーの斉藤社長(仮名)はため息をつくように言った。いろいろな経営トップと話をすると、決まって人事と組織に関する話題になる。

 会社は、人事のイノベーションを起こさずして変われないということ。ビジネスの成功は誰がやるかにかかっている。どういう組織でやるか、誰に任せるかで会社の成長に貢献できるかが決まる。ヒトと組織というテーマを抜きに経営の議論はできない。

 永年人事の仕事に関わってきて感じるのは、人事の役割が大きく変わっているのに、旧態依然とした仕事を続けているために人事はビジネスや経営がわからないというレッテルを貼られていることだ。業績悪化に伴い、人材の整理や見直し等、後ろ向きのリストラに終始したこともその印象を強めている。

 世界を見渡せば、経営トップの右腕として、重要な意思決定のサポートができる戦略的な人事が登場している。

 米GEの会長兼CEOのジェフ・イメルト氏は常々「最も重要なのは人材であり、CEOとしての時間の30%程度をあてている」と発言している。

 日本企業は、経営の三要素ヒト、モノ、カネのうち、モノとカネについては国際標準と比較して遜色のない水準まで改革してきた。しかし、ヒトに関しては、経営の根幹をなす戦略部門として位置付けてきただろうか。

日本企業が競争力失わぬためには

 筆者は60を超える業態・業種に関わる機会を得て、40を超える経営実務を通じて、いかにヒトの問題がビジネスの成否に直結するか、どのように組織にすれば人材が活きるのか、あるいはダメになるのかも見てきた。

 グローバルに戦うことが避けられない中で、経営やビジネスに貢献でき、組織をリードできる人事を作らないと日本の企業は競争力を失うという危機感を持っている。今こそ、新たな人事へ脱皮する必要がある。

 人事が寄与すべきテーマは多岐にわたる。経営機構の改革、取締役会のあり方、社外取締役の役割と期待……組織やヒトが関係しないテーマはなく、書き上げればきりがない。

 経営企画部門が人事戦略のコアを握り、人事は作業だけで意思決定のカヤの外という企業も多いだろう。経営企画はヒトのプロでないため、貸借対照表や損益計算書には出てこないインタンジブルな無形資産を適切に評価できるとは限らない。

 オーナー経営者は得てして枢要な人事を好き嫌いで決める。人事はヒトと組織のプロとして、私利私欲を捨て、会社や組織の持続的成長のために必要な人材発掘や人材配置を進言し、実現できる力を持つことが絶対必要である。

 「人事が変われば会社が変わるという気概で、世の中を変える仕事をしたら」と元ソニーCEOの出井伸之さんから言われたことを思い出す。経営トップの最大限の後押しが必要なことは言うまでもない。会社の競争力はまさに人材の質と量にかかっていて、それを実現できる人事によって決まるのである。

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