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二度目の“航行の自由作戦” 敢行した米国の真意は - 岡崎研究所

Diplomat誌のティエッツィ編集長が、1月30日に行われた米国によるトリトン島への航行の自由作戦は昨年10月の作戦とは違う法的意味を持ち、それゆえ中国の強硬な反応を惹起している、と指摘しています。論旨は次の通り。

 1月30日、米駆逐艦カーティス・ウィルバーは、航行の自由作戦(FONOP)の一環として、中国が実効支配するパラセル諸島のトリトン島(ベトナム、台湾も領有を主張)の12カイリ内を航行した(「航行の自由作戦FONOP」)。これは事前の通報が必要とされない無害通航として計画されたものだった。

 中国外務省は、中国の法律を犯し中国の承認なくしてその領海に侵入したとして厳しい反応を示すとともに、中国の領海接続水域法により外国の軍船は領海に入る際は中国の承認を必要とする旨を述べた。

 米国の狙いは、無害通航について事前の承認を要求する正にこの国内法に対抗することにあった。アシュトン・カーター国防長官は声明の中で、「この作戦は、領海を通過する際に事前の承認ないし通告を要求し自由航行の権利と自由を制限しようとする中国、ベトナム、台湾の試みに挑戦したものである。過剰な主張は海洋法条約に具現される国際法と整合しない」と述べた。

一層強まる中国の反発

 2月1日、中国外務省は米国のこの説明を拒否した。さらに、「米国は航行の自由の名のもとに海洋覇権を追求しており、米国による力の示威が南シナ海の軍事化の最大の原因である」と主張した。同省報道官は中国の艦艇や航空機は直ちに対応したと述べたが、米国防省は中国艦艇による米艦の追尾はなかったと述べた。

 10月の作戦と今回の作戦はいずれもFONOPと分類されているが、法的な理由は明確に違う。10月の作戦は中国が建設した人工島は法的には低潮高地であり島とは見なされないことを突き付けるものだった。中国は怒ったが人工島にも領海があると主張することは避け、非難は曖昧だった。

 しかし今回は違う。中国はパラセル諸島の領海を明示的に主張するのに対して、米国は、中国の主張の二つの点(事前の承認と領海の基線の引き方)について対抗している。米国は、中国の主張は過剰であり国際法に整合しないと拒絶する。中国の反発は一層強いものになる可能性がある。

 米国のFONOPはこれで終わりではない。ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、FONOPはこれから増える、「挑戦水域」での複雑さと範囲も拡大していくだろうと述べている。

出典:Shannon Tiezzi,‘China Rejects Latest US FONOP in the South China Sea’(Diplomat, February 2, 2016)
http://thediplomat.com/2016/02/china-rejects-latest-us-fonop-in-the-south-china-sea/

*   *   *

 1月30日の第二回目の航行の自由作戦は、領海の有無ではなく領海の中味に関する中国の立場)に真っ向から挑戦するという点で、第一回目より法的意味合いはより直截である、との論説の指摘はその通りでしょう。

今回の作戦の背景に透ける歴史的経緯

 しかし、問題は領海の線引きと無害通航だけに限られません。この記事は言及していませんが、中国がこの島を実効支配するようになった歴史的経緯にも注意が必要です。トリトン島は、元来、南ベトナムが実行支配していました。しかし、1974年に中国が銃撃戦により同島を含むパラセル諸島の全島を自らの支配下に置きました。その後統一されたベトナムが中国にこの件を提起してきましたが問題は解決されず今日に至っています。米国は領土紛争については判断を明らかにしないとの原則論を維持していますが、今回の作戦の実施決断にはこのような歴史的背景もあるかもしれません。ここ数十年の中国の一貫した「振る舞い」が問題なのです。1月に公表されたCSISの『アジア太平洋リバランス報告』も、2030年までに南シナ海が事実上中国の湖になる危険がある旨を警告しています。

 今回作戦への中国の反応が厳しかったと見るか、抑制的だったと見るか、見方は分かれます。筆者は厳しかったと見ており、一層厳しくなる可能性があると指摘します。他方、中国の言明にもかかわらず、中国による追尾はなかったと米国防省は明らかにしています。対中警戒心が高まる国際政治状況や上記の歴史的経緯などを考えれば、中国の立場は完全ではありません。中国としては、公的立場は強く維持しつつも、現状を既成事実化し問題がこれ以上大きくなることは当面避けることが有利と考えているかもしれません。

 米国が航行の自由作戦を継続していくことが、妥当かつ必要なことです。ハリス太平洋軍司令官の「作戦の複雑さと範囲は今後増大するだろう」との発言は示唆的です。二回目の作戦はもっと早く行われるべきだった、との批判があります。バラク・オバマ大統領が軍部による計画を抑えていたとも報じられています。米議会ではジョン・マケイン議員などが早期に実施すべきとオバマを批判していました。2月15-16日の米ASEAN首脳会議の開催がオバマの決断を促したと見方もあります。ともあれ、二回目の作戦が実施されたことには意味があります。

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