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6年生に経済学、ゲームで教える市場の仕組み

金融危機以来、米公立学校で経済学の授業が増加 メリットは?

画像を見る 6年生の経済学の授業で、古代バビロニアの4つの都市国家に分かれた生徒のチームが、それぞれが持つ材料に基づいて貿易交渉をする(米デラウェア州のジョン・ディキンソン・ハイスクール)
Photo:Kyle Grantham for The Wall Street Journal


 米デラウェア州ウィルミントンのジョン・ディキンソン・ハイスクール。エープリル・ヒギンズ先生は6年生のクラスに問いかける。「全ての社会が直面する基本的な経済の問題は何ですか」。

 一人の女の子が手を挙げて答える。「希少性(Scarcity)です」

 ヒギンズ先生が定義を尋ねると、子どもたちが声をそろえて答える。「人々の欲望は無限にあるが資源は限られている」

 6年生の答えとしては悪くない。

 希少性、弾力性、限界利益――。こうした経済学の概念が、米国の一部の学校で早いところでは10歳児から教えられている。教育関係者たちによると、2008年の金融危機を受けて早期教育の取り組みに拍車がかかった。生徒たちに経済学や資産運用、起業家精神といったことに慣れ親しんでもらうのが狙いだ。若いうちに学べば、収支のバランスを取ったり融資を受けたりといった大人の活動が容易になるとの考えに基づいている。

 バンダービルト大学の経済学の上級講師スティーブン・バックレス氏は「07~09年の金融危機で金融リテラシー(知識や判断力)の重要性が大いに注目されるようになった」と話す。同氏は全米の経済学教育の基準やカリキュラムの開発に参加している。金融危機以降、「生徒に中心的な問題を理解させるという点でわれわれは向上している」という。

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6年生の経済学のクラスで、自分のチームが他チームとの「貿易」で手に入れた品物を使って作った完成品を見せる示すマディリン・セイヤーズさん(11)
Photo: Kyle Grantham for The Wall Street Journal


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メラニ・ダリーさん(12)のチームの完成品。レンガ造りに見立てた避難所は、テープとつまようじを使って作った
Photo: Kyle Grantham for The Wall Street Journal


 経済教育協議会(CEE)によると、現在は全米23州の高校で経済学の授業を行うことが義務付けられている。07年時点では17州だった。「物を手に入れるためのカネ」という概念が幼稚園から教えられ始める学区もある。5年生までに需要と供給の関係について学ぶ。デラウェア州などでは、社会科のカリキュラムの一部として経済学に重点が置かれているところもある。

 ヒギンズ先生の6年生のクラスでは、当面の目標は希少性の意味を理解することだ。生徒たちは古代バビロニアの4つの都市国家にそれぞれ割り当てられる。各都市国家では資源が限られている。互いに貿易を行い、小さな厚紙の家とつまようじの船を使って、避難所と輸送機関を作り上げなければならない。最終的には各都市国家が作ったものを比較して、貿易が自分たちの生活の質をいかに向上させたかを知る。

 ヒギンズさんは約5週間にわたって週2~3回、90分単位の経済学の集中講義を担当している。それ以外のときは歴史や地理、公民などを教えているが、常に経済学に重点を置いている。

 ヒギンズさんはデラウェア大学でのトレーニングや経済教育協議会のコースを通して、子どもたちに経済学の理論を教える方法を学んだ。バビロニア都市国家の課題のために、はさみや工作用紙を子どもたちに渡しながら、この年齢の子たちは貿易することが大好きだと彼女は話した。子どもたちにとって交渉することは楽しいようだ。

画像を見る 6年生のクラスに経済学の課題を説明するエイプリル・ヒギンズ先生
Photo: Kyle Grantham for The Wall Street Journal


 彼女が「始め!」と叫ぶと、生徒たちは紙とのりを、つまようじとはさみを交換しようと部屋中を歩き回る。都市国家の一部は資源に恵まれ、また一部は極端に貧困という設定になっている。

 米国は、15歳の金融リテラシーで経済協力開発機構(OECD)の平均を下回っている。経済教育協議会によると、現在は全米17州で高校の卒業資格取得に資産管理コースの受講が義務付けられている。07年には7州だった。

 スタンフォード大学のB・ダグラス・バーンハイム経済学部長は「大半の人々は経済学を恐れながら人生を送る」と話す。若い生徒たちは授業の詳細は覚えていなくても、経済学の用語には慣れており、その後の人生で経済学に対する自信が高まることになるという。

 教育関係者たちは、高校で経済学のクラスを取ることで、その後の人生での貯蓄率が高まると指摘する。

 共産主義に勝る資本主義のメリットについて議論する学校もある。テキサス州の教育規約では、経済学は自由市場システムとその恩恵に重点を置いて教えるよう明記されている。

 ヒギンズ先生の教室では、学習内容が経済モデルに移った。バビロニアの都市国家はかつて計画経済として運営されたことがある。計画経済では物の価格や人々の所得は政府によって決定される。生徒たちは、市場経済で自分たちはより豊かになっているが、良い生活のための取引は非常に疲れるものだと認める。

 バビロニアの課題に参加した11歳のメイリード・チェースさんは「正直言って計画経済中心の課題が好き。私は権威が好きだし、目標があるほうが好き」とほほ笑んだ。「何をすべきか命じられるのもたまにはいい」

By NINA SOVICH

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