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南シナ海問題は隠れ蓑か 虎視眈々と尖閣狙う中国 - 岡崎研究所

 米ハドソン研究所のハーマン上席研究員とリビー元米副大統領首席補佐官が、1月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙において、中国はオバマの厭戦気性を見て日本との偶発武力衝突のリスクを冒すかもしれない、今年は東シナ海が問題となる可能性がある、と述べています。要旨は次の通り。

東シナ海における武力衝突の可能性

 中国は一つの地域に世間の注意を向かせながら他の地域でことを進める癖がある。今年は、南シナ海の人工島への航空機飛行とベトナム沖への油田掘削装置の移動で始まったが、日米などは東シナ海での動きに注意する必要がある。

 2010年から問題になっている尖閣について、中国は石油の埋蔵が明らかになる70年代までは日本の主権に反対していなかった。それ以後、日中の対立はエスカレートした。2013年には中国のフリゲート艦が日本の駆逐艦に武器発射レーダーを照射し、最近は初めて重武装の海監船艇が尖閣水域に入ってきた。

 東シナ海が中国による周辺国侵入の次の場所になる可能性がある。武力衝突の可能性が高まっている。中国の政府系研究所関係者は問題解決のために危機が必要かもしれないと示唆している。中国は日中衝突に持ち込めば日本は引き下がり、外交解決を図るだろう、特に米の軍事的支持が確保できない場合にはそうなるだろうと読んでいる。関係水域に侵入する中国の航空機や「調査船」の数は増えている。

 中国は日中関係の緊密化を欲していると主張する(14年以降安倍と習近平は二回会談した。李克強は日本の財界人に二国間関係の改善を訴えた)。しかし、中国は対話と武力の示威を両用する癖がある。14年と15年、習近平がインドと首脳会談を行っている時に、中国軍は両国国境の紛争地域に部隊を移動させた(中国軍はインド首脳の抗議を受けて撤退した)。

 中国経済が悪化する中、中国は国民のナショナリズムの高揚が政権浮揚に必要となれば対外攻勢を強めるだろう。衝突は海上での偶発衝突あるいは自衛のための発砲が起き、援護のため同僚艦艇や航空機が集結することから始まる。その後、銃撃や船舶の沈没が起きうる。更に援護勢力が集結するにつれ、外交関係者は自制等を訴える。他国は日本を支持するよりも事態の平穏化がより重要だと判断するだろうから、衝突の結果中国の主張への支持が高まる可能性があると中国は計算しているかもしれない。

 問題再燃の最大の理由はオバマの退陣が迫っていることだ。中国は、ロシアやイランのように、オバマはしばしば紛争から引き下がる、行動は取らず言葉で代えると思っている。日中の対立が武力衝突にエスカレートすれば、中国は米国が日本に自制の圧力をかけるだろうと考えている。中国は、オバマは大統領選挙を前に中国と紛争を構える気はないと思っているかもしれない。

 中国はかかるリスクを冒すか。政治的目的を達成するため短期決戦を利用するのは習近平が初めてではない。73年の第四次中東戦争の際のサダトの例がある。中国軍は東シナ海で迅速に行動し、迅速にそれを終結するだろう。国際調停が叫ばれることになるが、恐らく中国の侵略は既成事実になり状況は中国に有利になるだろう。

 東シナ海問題は、石油資源や日本の領土主権といったことを超えた重要性を持つ。最重要のことは、日本の対米信頼が揺らぐことである。中国にとって、アジアにおける米の最重要同盟国を揺るがすことは石油を掘り当てる以上に価値あることである。

出典:Arthur Herman & Lewis Libby,‘Beijing’s Next Gambit, the East China Sea’(Wall Street Journal, January 25, 2016)
http://www.wsj.com/articles/beijings-next-gambit-the-east-china-sea-1453745380

*   *   *

中国対抗には日米安保強化を

 この論説の想定は、有り得るハード・シナリオです。これを含めあらゆるシナリオへの対応を良く検討しておかねばなりません。かつてサッチャーは「こと安全保障に関する限り自分は保守的な方に間違えたい」旨を述べています。至言です。

 指摘されている中国の思考は可能性のあることです。中国の軍事力が近代化、拡大し、その使い方がおよそ国際ルールに沿っておらず、周辺国に多大の安全保障脅威を与える今の状況が早期に変わる可能性は残念ながら当面見当たりません。これは中国の安全保障についての「ニュー・ノーマル(新常態)」かもしれません。それを前提に世界はこれに対処していかねばなりません。中国の振る舞いを変える圧力を継続することも当然です。

 記事は、日本の対米信頼の重要性を強調しています。これはその通りです。他方、記事は日中衝突が起きれば米は日本に自制を求めるだろうと中国は考えていよう、と述べていますが、中国指導部が日米同盟をそれ程軽く考えていることはないのではないでしょうか。ただし、米国において「巻き込まれ論」があることには関心を持っているでしょう。尖閣が日米安保条約第五条の対象であるとの米大統領の宣言は中国指導部に事実として重く理解されていると思われます(もしそうでなければ全く非合理だと言う他ありません)。しかし、それが本当に内外に信頼性を持つようにするためには、日米関係をきちっと運営し、日米安保関係を強化していく不断の努力が必要とされます。

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