- 2016年03月04日 10:23
日米印協力で中国覇権主義に対抗せよ - 岡崎研究所
自国中心のアジアの新秩序構築を目指す中国の戦略に対抗するためには、日米印の結束が必要であると在ニューデリー政策研究センターのチェラニー教授が、1月22日付のProject Syndicateで論じています。要旨は次の通りです。
中国がアジアの秩序を作り変えようとしている。「一帯一路」からアジアインフラ投資銀行に至るまで、中国は自国中心のアジアの構築を着実に推進している。地域諸国は、中国の野心を阻止するための戦略を調整出来ていない。
中国修正主義抑制の主導権はどの国が執るべきか
米国のアジア回帰政策の鍵は、TPPだが、米国の同盟国であるインドや韓国が入っていない。TPPは発効までに時間を要し、その効果も大きなものではない。参加国のうち6カ国は既に米国と自由貿易協定を締結しているので、TPPの主たる効果は、日米間の自由貿易地域ができることにある。一方、ASEANが推進しているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)には、米国が入っていない。
中国の「一帯一路」構想は、中国が資金力を梃子に影響力を強化することやインド洋に中国のプレゼンスを築くことなどを目指している。習近平主席がこの構想の半分でも実現できれば、アジアの地政学は深刻な影響を受ける。
アジアの未来は極めて不確定である。地政学的安定を確保するためには、地域の主要諸国の利害の均衡が必要である。しかし、中国がこの数十年間に蓄えて来た政治的、財政的、軍事的な影響力を行使しようとしている中で、そのような均衡を維持することは容易でない。
現状では、一国だけでは、米国でも、中国の国力と影響力に対抗できない。安定した勢力均衡を維持するためには、有志国が結束してルールに基づく地域秩序を守る必要がある。
中国の修正主義的野心を抑制する為の主導権は、どの国が執るべきであろうか。米国は他の戦略的課題を抱えており大統領選もあるので、米国に期待することは出来ない。アジア諸国、特に経済が伸びているインド、政治的自己主張を強める日本が役割を果たすべきである。2014年に訪日したインドのモディ首相は、「18世紀の膨張主義的思考様式」が「我々の周りに蔓延」していると述べ、中国の膨張主義を間接的に批判した。昨年12月、日印首脳は、全ての諸国に対し「一方的行動を避ける」よう共同で呼びかけ、中国による人工島建設を暗に批判した。
中国の野望が実現すれば、日印両国にとって不利な地域秩序が出来てしまうことは明らかである。日印両国は、ミャンマーやスリランカのように中国の圧力に脆弱な国に対する政策や投資につき調整すべきである。
アジアの主要国は、安定した地域のパワーバランスを維持するために協力すべきである。日米印の「マラバール訓練」は軍事面での協力強化と海洋の安全強化のために有益である。
如何なる戦略も経済抜きでは完全ではない。アジアの主要国は、自由貿易地域を超えて、小国の核心的経済利益に資する地理経済学的な共同プロジェクトに着手すべきである。それが出来れば、小国が中国の投資やイニシアティブに頼る必要はなくなる。安定した規則に基づく秩序が維持出来れば、より多くの国がその秩序の中で繁栄できる。
出 典:Brahma Chellaney‘Upholding the Asian Order’(Project Syndicate、January, 22、2016)
http://www.project-syndicate.org/commentary/asian-powers-cooperation-for-regional-order-by-brahma-chellaney-2016-01
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日米印関係が中国覇権主義への協力な対抗に
筆者のチェラニー教授は、ジャーナリスト出身の著名なインドの戦略専門家です。中国の膨張主義に対抗するためには、日米印の三か国の協力が必要であり、また、弱小国が中国の経済的圧力に屈することのないように、経済面で大型の共同プロジェクトを立ち上げる必要があると論じています。インドの置かれている戦略環境が良く解る論調と言えます。
2015年12月、安倍総理が訪印し、モディ首相との首脳会談の後、「日印新時代」の道しるべとなる共同声明「日印ビジョン2025特別戦略的グローバル・パートナーシップ、インド太平洋地域と世界の平和と繁栄のための協働」に両首脳が署名しています。この共同声明を読むと、日印間で極めて多様な分野に亘り、協力関係が進みつつあることが理解できます。
首脳会談の冒頭、モディ首相は、日印関係は一段上のレベルに上がっている、強いインドと日本はお互いにとって重要であり、その友好関係はアジア全体に大きな影響を及ぼすと述べたのに対し、安倍総理は、日印関係は「世界で最も可能性を秘めた二国間関係」であり、モディ首相と協力して、日印関係を可能性のつぼみから、現実に開花させて咲き誇る関係にして、日印新時代の幕開けを迎えたい、強いインドは日本のためになる、強い日本はインドのためになる、強固な日印関係でインド・太平洋地域、さらには国際社会の平和と繁栄を牽引していきたいと述べたと発表されています。
このように、良好な日印関係が、中国の覇権主義に対抗する方策を、米国と共に構築していく上で、強力な基盤となることは確かです。
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