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【質問】民間の船員が予備自衛官になるのは「事実上の徴用」?

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前回の観光案内の続き……の予定だったのですが、ご質問を頂いたので今日はその回答を。

他にもたくさんご質問を頂いているのですが、「これはもうちょっとしっかり調べてから回答したいなぁ」というのが多々あり、お待たせしっぱなしで申し訳ありません。
気長にお待ち頂けると嬉しいです。

では今回のご質問。

【質問】
いつも楽しくブログ拝見しております。
以前徴兵のことで質問しました。
しっかりした内容でよかったです。
徴兵制度が出来る前に戦争が終わる、ごもっともです。
でも、こんな記事がありました。
http://www.huffingtonpost.jp/karin-amamiya/japan-defense_b_9312194.html?utm_hp_ref=japan
詳しく調べたわけではないのでどこまで事実かわかりませんが、徴兵はなくとも徴用はありえるのかな?と思いました。これって実質自衛隊と同じところで作業することになるんですかね?
真理さんの意見が聞きたいです。
急がず待っています。


【回答】
「急がず待っています」のお気遣いが嬉しすぎます。
ありがとうございます。

さて、本題。
ご質問にあるリンク先サイトの内容をこちらで要約してその後回答……というのが親切だと思うのですが、現時点で超長文になりそうな気配がムンムンなのでお手数ですが各自リンク先サイトをお読みください。
今回は「事実上の徴用?」についてなので、お時間がなければ最初の部分だけでも構いませんので。
もちろん、全部読んで頂ける方はぜひお願いします。

ではまず、「予備自衛官補」、「予備自衛官」という制度がどういうものなのか……本コラムではもう既に何度も何度もしつこく書いていますが、今一度。

「予備自衛官」は、非常勤の自衛官です。
なんか大変なことが起きたときだけ招集されて「自衛官」に変身する人たちで、普段はサラリーマンや主婦、学生といった「フツーの人」として生活をしています。

なんでこんな非常勤の自衛官「予備自衛官」という存在がいるのかというと、ざっくり言えば「お金の問題」です。

なにか大変なことが起きたときは、たくさんの数の自衛官が必要です。
ので、万が一に備えて「たくさんの数の自衛官」を普段から置いとけばいいんですが、「たくさんの数の自衛官」にお給料を払うには「たっくさんのお金」が必要になります。
「たっくさんの税金」が必要になります。

でも、そうはいかないですよね。
「必要だから増税増税!はいまた増税!!」ってワケにはいきません。
とはいえ、災害や有事には備えが必要で……。

というのを解決するために、
・普段は必要最低限の数の自衛官を置いておく
・そして、万が一のときは自衛官を「たくさんの数」にするために、「非常勤の自衛官(予備自衛官)」を確保しておく
という制度を取っています。

郵便局でも、普段は必要最低限の数の人たちが雇用されていますが、年賀状のためにたくさんの人が必要になる年末だけ臨時のバイトを募集してたりしますよね。
それと一緒です。

自衛隊の場合は、「はい、大変なことが起きました!たくさんの人が必要です!だから臨時に募集します!」では訓練が間に合わないので、平時の今から予備自衛官を確保して定期的に訓練を続け、必要となったら招集するという仕組みになっています。

そして、自衛官にも予備自衛官にも、いろんな役割があります。

自衛官だと、戦闘機に乗る人、護衛艦に乗る人、戦車に乗る人……と、各個人にそれぞれの役割があります。
乗るだけじゃなくて、それらを整備する役割の人もいます。
乗ったり整備したりする人たちをサポートする役割の人もいます。
日本に飛んでくるミサイルを撃ち落とす人、飛行機が安全に飛べるよう管制をする人、そのための気象予報士、救難救助をする人、レーダーを計測する人、物資を運ぶ人、建物や橋を作る人、パラシュートで降りる人……たくさんの役割があります。
ひとことに「自衛官」といっても、各個人の役割はさまざまです。

予備自衛官も、それぞれ役割が決められています。
・警備をする人
・病気やケガを治す人(お医者さんや看護師さん)
・建物を管理する建築家さん
・ITを担当する技術者さん
・外国の人とコミュニケーションを取る通訳さん
・法的に問題がないかをチェックする弁護士さん
……まだまだありますが、ざっくりとこんな感じの役割があります。

役割を果たすには、それに応じた知識や技能が必要です。
私は予備自衛官ですが、「フランス人との通訳やって」と言われても無理過ぎるので、フランス語ペラペラの予備自衛官の人がその役割を持っています。
私は予備自衛官ですが医療のことはサッパリ分からないので、ケガの治療には普段からお医者さんをしている予備自衛官の人がその役割を持っています。

災害や有事など大変なことが起きたときには「たくさんの自衛官」が必要ですが、ただ数さえ揃えてればいいってもんではありません。
いろんな知識や技能を持っている人が、必要に応じてまんべんなく揃えられています。

「予備自衛官」は、こんな制度です。

で、この「予備自衛官」にはどういう人がなるのかというと
・元自衛官の人
・「予備自衛官補」の訓練を修了した人
です。

ので、元自衛官じゃないフツーのサラリーマンや学生さんが予備自衛官になるためには、まず「予備自衛官補」に志願して、試験に合格後、訓練を受けます。

予備自衛官にはいろんな役割があるので、予備自衛官補では「いろんな人」を募集しています。
「いろんな資格や技能を持った人」を募集しています。

それはどんな資格や技能なのか。
ここは敢えて「ざっくり」ではなく「全部」書きます。
たぶん目が滑ると思うので、ざざーっと見てください。
(もちろん、興味のある方はじっくり見てください)

医師、歯科医師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、臨床検査技師、看護師、救急救命士、栄養士、准看護師、歯科技工士、英語(に堪能な人。以下、語学は同じ)、ロシア語、朝鮮語、中国語、アラビア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、アプリケーションエンジニア、プロダクションエンジニア、第1種情報処理技術者、ソフトウェア開発技術者、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、システム運用管理エンジニア、テクニカルエンジニア(ネットワーク、データベース、システム管理、情報セキュリティー、円別途システム)、上級システムアドミニストレータ、情報セキュリティーアドミニストレータ、第2種情報処理技術者、基本情報技術者、システム監査技術者、応用情報技術者、ITストラテジスト、システムアーキテクト、エンベデットシステムスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト、ITサービスマネージャ、第1級総合無線通信士、第2級総合無線通信士、第3級総合無線通信士、第1級陸上無線技術士、第2級陸上無線技術士、AI第1種工事担任者、アナログ第1種工事担任者、DD第1種工事担任者、デジタル第1種工事担任者、AI・DD総合種工事担任者、アナログ・デジタル総合種工事担当者、第1種、第2種又は第3種電気主任技術者免状の交付を受けている者、1級又は2級建築士、測量士、測量士補、1級又は2級建築機械施工技士、木造建築士、1級又は2級建築施工管理技士、1級又は2級土木施工管理技士、1級又は2級管工事施工管理技士、1級大型又は小型自動車整備士、1級又は2級二輪自動車整備士、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士、2級二輪自動車整備士、第1種又は第2種放射線取扱主任者、弁護士、司法書士

以上。

予備自衛官補は2002年から採用がスタートしましたが、最初はこんなにたくさんではありませんでした。
「この資格も必要だね」、「こういう資格を自衛隊でも活かして欲しい」ということで、徐々に増えて今ではこんなにたくさんになりました。

そして、ここに新たに「海技資格」を加えよう……ってのが、今回のおはなしです。

……という、単純なことなんですが。
しかし、ご質問で頂いたリンク先サイトによると、全日本海員組合さんから「民間船員を予備自衛官補とすることに断固反対する声明」が発表されたとのこと。

こちらの声明、全日本海員組合さんのサイトに全文がありましたので、転載します。

平成28年1月29日
民間船員を予備自衛官補とすることに断固反対する声明

全日本海員組合

 一昨年からのいわゆる「機動展開構想」に関する一連の報道を受け、全日本海員組合は、民間船員を予備自衛官として活用することに対し断固反対する旨の声明を発し、様々な対応を図ってきた。しかしながら、防衛省は平成28年度予算案に、海上自衛隊の予備自衛官補として「21名」を採用できるよう盛り込んだ。われわれ船員の声を全く無視した施策が政府の中で具体的に進められてきたことは誠に遺憾である。

 先の太平洋戦争においては、民間船舶や船員の大半が軍事徴用され物資輸送や兵員の輸送などに従事した結果、1万5518隻の民間船舶が撃沈され、6万609人もの船員が犠牲となった。この犠牲者は軍人の死亡比率を大きく上回り、中には14、15歳で徴用された少年船員も含まれている。

 このような悲劇を二度と繰り返してはならないということは、われわれ船員に限らず、国民全員が認識を一にするところである。
 政府が当事者の声を全く聞くことなく、民間人である船員を予備自衛官補として活用できる制度を創設することは、「事実上の徴用」につながるものと言わざるを得ない。このような政府の姿勢は、戦後われわれが「戦争の被害者にも加害者にもならない」を合言葉に海員不戦の誓いを立て、希求してきた恒久的平和を否定するものであり、断じて許されるものではない。

 全日本海員組合は、民間人である船員を予備自衛官補とすることに断固反対し、今後あらゆる活動を展開していくことを表明する。

以上



うーん、なんでだろう……。
なんで全日本海員組合さんだけからこういう声明が発表されるんだろう……。

これまで、2002年からずーっとお医者さんの予備自衛官補採用は続けられてるんですが、全国医師協同組合連合会さんから反対声明が発表されたというお話はとんと聞きません。
弁護士さんの予備自衛官補採用は3~4年くらい前に始まったと記憶しているんですが、全国弁護士協同組合連合会さんから反対声明が発表されたというお話はとんと聞きません。
全国薬剤師協同組合連合会さんも全国英語通訳協同組合連合会さんも全国エンベデットシステムスペシャリスト協同組合連合会さんも……そんな名前の組合があるのかどうかも知らずにテキトーに書いてますが、そんなお話はとんと聞きません。

というか、職業の枠を超えた労働者たちの全国組織であろう全国労働組合総連合さんですらそんなお話はとんと聞きません。
今、全労連さんのサイトを見たら、全日本海員組合さんどころじゃなく派手な文字でデカデカと「戦争法廃止」とか「憲法闘争」とか書かれていましたが、「民間労働者を予備自衛官補とすることに断固反対する声明」というのは見当たりません。

予備自衛官補って、上記の資格や技能を持った人じゃなくても志願できるんですよ。
私はそのタイプです。
上記資格や技能を持った人は「技能区分」、持っていない人は「一般区分」と分けられていて、私は「一般区分」です。
全国のたくさんの労働者さんたちがもうすでに、「技能区分」や「一般区分」として予備自衛官補に志願し、訓練を修了して予備自衛官をやっています。
みなさん、自ら志願して、やっすいやっすい手当てで予備自衛官をやっています。

あ、予備自衛官手当てが安いって書いちゃいましたが、私は文句ないですからね。
好きでやってますから。
でも、いろんな資格や技能を持っていらっしゃる方々の民間でのお給料を考えたら、予備自衛官の手当てなんて安過ぎだよなぁ……まあ、みなさんお金じゃなくて国防のために予備自衛官を続けてるんでしょうけど。

ただひとつ、これまでの技能区分の予備自衛官と、海技資格の予備自衛官とで大きく違う点があります。
それは、「入札」が絡んでくるということです。

詳しくはこちら。

民間船舶の運航・管理事業に関する実施方針
http://www.mod.go.jp/j/procurement/chotatsu/ship/h27_06_jisshihoshin.html

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