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なぜソーシャルゲーム業界はこんなにだらしないのか 続出する不祥事 度を越す”射幸心煽り” - 伊藤 悟

 ソーシャルゲーム業界の不祥事が続出している。数十万円巻き上げられたユーザーも現れ、インターネット上で炎上している様は2012年に社会問題化した「コンプガチャ問題」を彷彿とさせる─。

 またか──。ソーシャルゲーム業界の不祥事が止まらない。今年に入り、サイバーエージェントの子会社で、DeNAも資本参加しているサイゲームス社(Cygames)が提供しているゲーム「グランブルーファンタジー」にて、景品表示法で禁止されている「優良誤認」と「カード合わせ」が疑われる事案が発生。

 また、ドーナツ社(Donuts)はRMT(リアルマネートレード)仲介サイト開設のリリースを行い「賭博場オープン」と批判された(詳細は後述)。

 今や日本を代表する企業になったサイバーエージェントの2015年10~12月期の決算をみると、「ゲーム依存」の構造が浮かび上がる。売上高、営業利益とも過去最高を記録しているが、連結営業利益129億円のうち、ゲーム事業の営業利益は約7割にあたる88億円を占める。ゲーム事業の営業利益率は29・6%を誇り、ゲーム事業で「荒稼ぎ」していることがわかる。

 もちろん儲けること自体は否定すべきことではないが、射幸心を煽ることで「荒稼ぎ」しているとすると、共感できない人も多くいるのではないだろうか。

 ソーシャルゲームは成熟国家・日本における数少ない「有望産業」で、サイバーエージェントのほか、DeNA、mixi、GREE、gumiなど、多くの企業が上場を果たし、創業者や経営者は、政府の公的な会議に呼ばれて意見することもある。

 ドーナツ社のホームページでは東大卒と京大卒の社員が目立つように紹介されている。多くの優秀な人材が引き寄せられる「有望産業」が、射幸心を煽る仕組みを考えることに熱心になっている現状を憂う人は多い。

 今回明らかになった一連の不祥事と業界の未来について、ソーシャルゲーム業界に詳しい木曽崇氏と山本一郎氏に語ってもらった。

 ──今回発生したソーシャルゲーム業界の不祥事について教えてください。

木曽 ここ最近でとりわけ問題になった事案は3件あります。1件目はサイバーエージェントの子会社であるサイゲームス社のソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー」(グラブル)で発生しました。

 ゲーム内で行われていたガチャ(最終ページ参照)で「出現率がアップする」と謳われていたレアキャラ(稀少キャラ)の一部の出現率が異常に下げられているという疑惑から始まりました。これが景品表示法の「優良誤認」にあたるのではということで、騒がれ始めました。

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木曽 崇(Takashi Kiso)
国際カジノ研究所所長。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部首席卒業(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの会計監査職を経て、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社。2011年に国際カジノ研究所を設立。(写真・井上智幸)

 ──サイゲームスは疑惑を否定しています。

山本 否定はしていますが、実態上は完全にアウトです。この問題は被害者がどう考えるかが重要であり、業者がどう思うかでは決まりません。

 ──レアキャラの「アンチラ」が出るまで70万円ほど投入してガチャをやり続けたユーザーがいて、その様子をニコニコ生放送で実況しました。

山本 それ以外にも多額の金銭を注ぎ込んだユーザーの存在も明らかになっています。これはギャンブル依存症を疑う必要があります。依存症には軽度や重度があり、重度のユーザーは不確定なガチャを前にして「次は欲しいのが出るだろう」とのめり込み、消費者金融などから借りた資金を投入します。こうした重度依存の「患者」がソーシャルゲームから出てきているのです。一部の悪質なソーシャルゲーム企業は、高収益を目的にガチャで射幸心を煽り、重度依存を引き起こしていますが、明らかにやり過ぎです。

景品表示法違反が疑われる
サイバーエージェントの中核会社

 ──サイゲームスの「グラブル」は、優良誤認以外の問題もありました。

木曽 2件目の事案は、同じく景品表示法で禁止されている「カード合わせ」にあたるのではといわれるものです。年末年始のガチャイベントの対象キャラクターのうち、異なる複数のキャラを揃えることによって、後のゲームの進行を有利にすることができる特殊イベントが発生するとして、ガチャの販売促進を行っていました。これは12年に社会問題となったコンプガチャ問題(最終ページ参照)と原理的には同じです。

 カード合わせというのは、例えば異なる6枚のカードを揃えれば、景品をあげます、というような仕組みです。はじめの1枚は100%必要なカードを入手できますが、一度手に入れたカードはその後必要なくなるため、2枚3枚と揃っていくにつれ、欲しいカードの出る確率が自然と減っていく賭博的なシステムです。

 消費者はこの1枚欲しさに「あと1枚だ」と延々とお金を注ぎ込むため、射幸心を煽り過ぎる仕組みとして違法とされています。最後の1枚の出現率を下げておけばすべて揃う確率は極端に低くなるし、出現率を下げなくてもすべて揃う確率はそもそも低くなるようにできています。

 ただ、今回の件は景品表示法に触れるかどうかの非常にギリギリのところを突いています。2枚揃える必要があるカード合わせなのですが、入手できる時期がわかれていて、1枚目は昨年末、2枚目は今年になってから引くガチャでしか出ないようになっています。

 そうすると、カード合わせの「徐々に出現率が下がっていく」という状態にはなっていないので、ギリギリセーフとも言えるんです。どう判断するかは議論がわかれるところですが、問題視する人も多くいます。

山本 ソーシャルゲーム業界の多くの企業がカード合わせ的なものを提供しており、それぞれギリギリのラインで何かしらの逃げ口をつくってやっているのが実情です。ガンホー、ミクシィ、スクウェア・エニックスなど、返金騒動に見舞われた企業は多くあります。

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山本一郎(Ichiro Yamamoto)
イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。データビークル取締役。東北楽天ゴールデンイーグルス編成・育成データ担当。1996年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。ゲーム業界も熟知している。(写真・井上智幸)

「賭博場」開設で炎上したドーナツ社

 ──3件目の事案としてドーナツ社がリリースしたRMT(リアルマネートレード)仲介サイト開設の問題もありました。

山本 あれは問題外の事案です。「賭博場を開くので皆さん来てくださいね!」と宣言したに等しい。

木曽 RMTとは、ゲーム内で取得できるアイテムやゲーム内通貨を現金取引する行為のことです。使い方によっては射幸心を煽る賭博的なサービスの提供を可能とするもので、以前から問題視されていました。多くの企業は「ゲーム規約でゲーム内アイテムによる現金授受を禁止し、適切な監視を行っている」という理屈で、懸念をかわし続けてきました。

 ところが今回は、自社のゲーム内で獲得できるデジタルアイテムに加えて、あらゆるゲームのアイテムをユーザー同士が取り引きできるRMT市場アプリのリリースを行ったのです。その後ドーナツは「サイト上に誤って記載された」と主張したものの、このアプリの機能をAPI(ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様、またはインターフェースのこと)としてゲーム内に直接取り込めるような仕様とし、自社ゲームはもとより他社に対してもゲーム内公式RMT市場の採用を推奨しました。これは従来の「ゲーム機能が賭博的には利用されない」という論拠を根底から覆し、ゲーム内アイテムの現物資産としての価値を認めたうえで、その現金取引を公式に進めたということになります。

山本 ドーナツは基本的な法律すらわかっていなかったと思われます。賭博罪の可能性が高く、刑法で禁じられている賭博開帳図利に引っ掛かる可能性すらあります。これは賭博場を開き、人を集めて賭博による利益を図った者を罰する法で、主に胴元の取り締まりに適用されるものです。まともな企業とはおよそ無縁な法律のはずです。

──なぜコンプガチャ問題が発生したあとに、ギャンブルに関連する風営法や刑法改正などの「根治治療」を施さなかったのでしょうか。

山本 コンプガチャ問題が発生した12年は民主党政権の末期で、軽量級の政権というか、ソーシャルゲームなど向けに新法をつくるほど政権が安定していないとみられていました。当時、警察庁としては風営法改正で対処したいと考えていたようですが、根治治療を施すには、ガイドラインの変更ではもたず、大掛かりな改正が必要となります。そうすると1~2年後にしか実効性をもたない。いつまで続くかわからない政権だったので、当時の消費者庁の判断として、実効性より即効性を求めたといわれています。知恵を絞った結果、さきほども話題にのぼった景品表示法の「優良誤認」と「カード合わせ」を適用することになりました。

 ──今の自民党政権は政権基盤が安定しているので、法改正しやすいのではないでしょうか?

山本 その通りです。16年型のソーシャルゲーム規制議論は、12年のコンプガチャ規制よりは踏み込むことになると思います。パチンコやパチスロを含めた風俗営業全体の見直しの中にソーシャルゲームも入っており、法改正を含めた議論もされると見られます。

木曽 難しい問題もあります。日本でサービスを提供しているものの、海外に事業主体もサーバもあるという企業は多数あります。こういった企業に対しても実効性をもった制度を整備していかなければ、日本企業が損をします。海外へ逃げる企業も出てきます。

 コンプガチャ問題のときのプラットフォーマーはGREEやDeNAといった日本の企業でしたが、スマホ時代の現在、プラットフォーマーはアップル、グーグルであり、これもまた問題の解決を容易ならざるものにしています。

 ──実効性のある解決策はあるのでしょうか?

山本 例えば、日本がEUやアメリカ、OECD各国などとソフトウェアの流通規制をつくるという方法です。ただ、その枠組みに入らない国の企業には適用できません。

木曽 アメリカには、違法インターネット賭博規制法という法律があります。これはアメリカのルール内で違法だと位置づけられる賭博サービスに対して、金融決済を禁ずる法です。事業者は決済手段がなければ商売が成立しません。ただし、日本だとその様な制度の成立に対して積極的に協力する金融機関が少ないのと、仮想通貨なども含めて金融庁が所管しない決済手法がたくさん出てきているので、実効性は薄れます。

山本 ある程度大きくなった企業に対して「そういえばおたくの企業こんなことをしていたよね」と後付けでひっかけることはできます。DeNAもGREEも以前はややこしい企業でした。それが、「あなた方は上場して社会的立場がありますよね。青少年の健全育成に資する活動をしていますか? していないですね。じゃあ自分たちで仕組みを考えて報告してくださいね。しない場合はわかっていますね」とやるわけです。経営者の地方でのイベント登壇日に合わせて公正取引委員会が立ち入りしたこともありました。

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サイバーエージェントの中核会社が提供する「グランブルーファンタジー」(写真・生津勝隆)

 ある程度大きくなれば、広告宣伝を行い、自社のブランディングをします。「このままではブランドを破壊するような動きになってしまいますよ。これまで数年頑張ってきてここでつまずきますか? 嫌だったらちゃんとやってくださいね」という話をするわけです。例えばの話です。大きくなればなるほど、ブランド価値毀損を嫌がります。

 ──今回問題視されたサイゲームスは、日本を代表する企業に成長したサイバーエージェントの子会社です。

山本 大きな企業があんなに派手なことをやれば当然目立ちますし問題になります。今回サイゲームスが問題を起こさなければ、もう1年法改正の議論が遅れていた可能性はありますね。

 ──抜け道もあり、確実にトラブルを防ぐことは難しそうですね。

山本 この手の問題は今後も繰り返されると思います。ただ、繰り返されることは織り込み済みで、当面の問題をクリアできるような法改正やガイドラインの変更などを行い、その後各国間の調整を必要とするようなものについては、TPPやOECD各国のなかで調整するとか、適法行為を予め類型化して示して個別事例を積み重ねるなど、そういう仕組みでやるということになると思います。

 大切なのは、今回のように消費者が騙されたと思ったときや問題だと思ったときに騒ぐことです。業者の善意を信じて、問題取引を事前に完璧に防ぐということはムリです。最悪の場合、消費者金融の過払い問題のように、過去に遡って返金しなさい、ということになる。「射幸心煽ってこれだけの金を巻き上げましたね」と。これは業界にとっては悪夢以外の何物でもありません。スーパーの牛肉偽装事件や米の産地偽装事件でもあったやり方なので、可能性がゼロではありません。

木曽 射幸心を煽る営業やギャンブルは、やはり法の枠内、常識の範囲内でやらなくてはいけない。

山本 高い収益性を謳う産業には必ずウラがあります。ソーシャルゲーム業界に自浄作用を期待するのは困難です。法改正とガイドラインの見直しに加えて、国際的な枠組みの構築、被害を受けた消費者が声を上げ法的措置をとることによる事後的な制裁などが必要でしょう。

●コンプガチャ問題とは
「ガチャ」とはおもちゃ屋や駄菓子屋などに置いてある「ガチャガチャ」のことで、オンラインゲームでは、レア(稀少)アイテムやキャラクターを得るための仕組みとして用いられている。レアアイテム欲しさに何度も課金してガチャを使用するユーザーがおり、これがゲーム会社の利益の源泉となっている。「コンプガチャ」のコンプとはコンプリート(完成)の略で、例えば「レアカードを6枚揃えると素敵な景品がもらえます」と謳う。徐々に必要なカードが出る確率が下がっていく仕組みのため、コンプリートすることは容易でない。「あと1枚でコンプリートする。次こそ出るんじゃないか」と射幸心を煽り過ぎる仕組みのため、ユーザーが何十万円も注ぎ込む事態が次々に発生し、2012年に社会問題化した。

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