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認知症事故判決

行政・地域で支える体制作ろう

在宅介護の実情を踏まえた判決だといえよう。認知症の男性(当時91歳)が徘徊中、列車にはねられて死亡した事故をめぐり、JR東海が犠牲者の遺族に振り替え輸送費などの損害賠償を求めた訴訟で最高裁は1日、家族の賠償責任を認めない判決を下した。

男性は、妻が6、7分ほどうたた寝をしている間に自宅から姿を消し、線路に入った。1審はJRの請求を認め、男性の妻と長男に計720万円の賠償を命じ、2審も妻に360万円の賠償を命じた。

しかし最高裁は、妻や長男という理由だけで監督義務があるわけではないと結論付けた。監督義務があるかないかは、介護者の生活や心身状況、認知症患者の問題行動の有無、介護の実態などを総合的に考慮し判断すべきとした。

妻は事故当時85歳で、要介護1の認定を受けていた。長男は20年以上、男性と同居していなかった。今回の事例で家族の監督義務を問うと、介護現場の負担はより過酷になってしまう。そんな最高裁の判断だった。

一方、今回の判決では「監督義務がない」とされたため、どんな義務を怠った場合に賠償責任が問われるのかが示されなかった。認知症患者が他人を傷付けても、賠償責任を誰にも問えないのでは被害者が救われない。この点、議論を深めていくべきだろう。

厚生労働省の推計では65歳以上の7人に1人が認知症で、2025年には5人に1人になる。家族が認知症になって事故を起こすことに誰も人ごとでいられない。どういう対策を取るか、政治の重要テーマである。

行政と地域が協力して認知症患者と家族をサポートする体制を作らなくてはいけない。公明党が強く推進する、地域で医療、介護、生活支援サービスなどを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の早期構築が望まれる。

認知症の行方不明者が出た時、登録者にメールで情報発信して早期発見・保護につなげるなど、先進自治体の取り組みも参考になる。

政府が策定した認知症対策の国家戦略では、「住み慣れた地域で自分らしく暮らし続ける」ことをめざすとしている。その実現へ向け、政府は力を尽くしてもらいたい。

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