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“生きた耳と顎の骨のプリントに成功” 臓器移植不要な近未来到来か - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

現在急速に普及が進む3Dプリンターだが、有用な使途として期待されているのがバイオテクノロジーの分野。生体の一部をバイオプリンターによってプリントアウトする、という試みが現在多くの大学で研究されている。

 その中で、米ウェイク・フォレスト大の研究チームが「生きた耳と顎の骨のプリントに成功した」と発表し、脚光を浴びている。

 同大学の手法は、生きた細胞と特殊なジェルを使い、生体のCTもしくはMRIデータを元に器官をプリントアウトする、というもの。もちろんそこへたどり着くまでは様々な試行錯誤があった。

 研究チームを率いるアンソニー・アタラ教授は「プラスチックで型を作り、その中に細胞を埋め込んでいく手法、器官の形に細胞をプリントアウトする方法などを試みた。しかし表面は器官の形になっても、内側の細胞が死滅してしまう、あるいは型なしの方法では細胞が増殖して膨れ上がってしまう、などの失敗を繰り返してきた」という。

 今回の方法はプリントアウトするときは液体だが、すぐに固形となるジェルを用い、成型しながら細胞を注入する、という方法だ。ジェル部分が細胞間に隙間を作り、「血管が育って器官に栄養を行き渡らせるまでの間、培養液から器官に養分を運ぶ役割を果たした」ため、死滅や膨張が起こらず最終的な形へと成長した。

バイオプリンターはインテグレーテッド・ティシュー・オーガン・プリンター(ITOP)と呼ばれるもので、「理論的には人間のどんな器官でも再現できる」。

 アタラ教授のチームは2006年に世界初の人工膀胱を作り、実際に人に移植することに成功した。以来軍の再生医療研究所と協力して「自分の細胞を使った人工器官の作成と移植」を目標としている。傷痍軍人、特に腕や身体の一部を失った人々に新しい器官を与えるのが目的だが、もちろん研究が進めば一般医療への適用も視野に入る。

 作り出した器官の中にジェルによる「通路」を作り、24時間後に血管が育つことで器官全体に栄養を行き渡らせる、という課題はクリアしたが、もうひとつの問題は「プリントアウトした細胞を正しいタイミングで固形化する」技術だ。プリンターのノズルから放出される細胞溶液は液体だが、培養器の中で形成された瞬間に固体になる必要がある。これについては生きた細胞とポリマー、栄養素を混合したものを噴射することで解決した。教授はこれを「バイオインク」と呼ぶ。

技術確立で臓器移植不要に

 現在このチームは肝臓、肺の一部、腎臓などのプリントアウト研究を行っている。実際に我々が自分の細胞から新しい内臓や器官を作り出し、それを自分の身体に移植できるようになるにはまだ数年が必要だという。

 しかしこの技術が確立されれば、現在臓器移植に頼らざるを得ない人々の多くが助かることになる。自分の細胞を使った臓器形成だけに、拒絶反応を防ぐ薬を一生飲み続ける必要もない。

 このチームが作り出した人間の耳はマウスの身体に移植され、2ヶ月後も「生存」が確認されている。つまり、移植後も人工器官は壊死することなく人間の身体の一部となる可能性が極めて高い。

 チームはこのほか人間の筋肉の一部のプリントアウトにも成功しており、生体3Dプリントの分野では他の研究機関より一歩先んじた形だ。

 3Dプリンターで自分のレプリカが作れる、というSF映画のような世界は、そう遠い未来ではないのかもしれない。

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