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映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を華麗に楽しむための基礎知識 - 初心者編 - 本田康博(証券アナリスト)

注目の映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が、いよいよ3月4日に公開されます。評判は上々のようですが、映画の中で頻出する専門用語がどうにもピンとこないという声も目立ちます。若者など住宅ローンや投資にあまり縁のない人には、特に難しく感じるかもしれません。

そこで、映画の中で重要な役割を担う「モーゲージ担保証券」を、1999年に日本で初めて作り上げた経験を持つ証券アナリストが、金融の初心者向けに、映画を気持ちよく楽しむための基礎知識をお伝えすることにしました。

(映画のキーワードの一つ「サブプライムローン」については、「Why American people!? 米アカデミー脚色賞を受賞した注目映画で、アメリカ人が住宅ローンを返せなくなったのは当たり前」をご覧下さい。http://sharescafe.net/47953593-20160229.html

■モーゲージと住宅ローン

多くの人が最初につまずくのが、「モーゲージ(mortgage)」という聞きなれない言葉かもしれません。「モーゲージって何なの?」「住宅ローンとどう違うの?」そんなことを疑問に思う人もいるでしょう。

「モーゲージ」を辞書で調べると、おそらくまず最初に「担保」や「抵当権」という意味が載っていると思います。これが本来の意味なのですが、米国などでは、モーゲージがそのまま住宅ローンを表すことが一般的なのです。

住宅ローンは、住宅購入者でもあるローンの借り手が、ローンの貸し手から住宅購入のための資金を借り、その代わりとして、長い時間をかけて少しずつ借りた資金(元本)とそれにかかる金利を返済する取引です。

このとき、貸し手としては元利金を返済してもらう約束だけでは心許ないので、借り手が約束を守らなかったときに物件を自由に処分できる「権利」を、貸し手はきっちり押さえます。この「権利」が、即ち「抵当権」です。

米国の住宅ローンは実質的にノンリコース(住宅処分後に借入人がローンの残額を請求されることがない)ですので、抵当権(モーゲージ)を行使した際に得られる住宅処分価値が、住宅ローンそのものの潜在的な価値とおそらく大きくは変わりません。

それが、米国で住宅ローンをモーゲージと呼ぶことになった理由なのかもしれません。

■債権と債務

住宅ローンの契約では、借り手には貸し手から住宅購入資金を受け取る「権利」と、将来にわたって返済する「義務」があります。逆に、貸し手は借り手に住宅購入資金を支払う「義務」がある一方、借り手から将来にわたって返済を受ける「権利」があります。

住宅ローンは、その貸出しが実行された瞬間、借り手の「権利」と貸し手の「義務」はどちらもなくなり、借り手の「義務」と貸し手の「権利」だけが残るのです。

ここでは、大雑把に、誰かに何かをしてもらう権利を「債権」、何かをしなければならない義務を「債務」と理解しておくと良いでしょう。

ここでわざわざ「債権」について説明したのは、映画評などで「債権」と「債券」を混同している例をいくつか見かけたためです。

国債や社債等の「債券」と、「債権」は、別物です。映画に出てくる「モーゲージ担保証券」は「債券」です。

■モーゲージに投資するということ

借り手にとって借金であるモーゲージ(住宅ローン)が、投資の対象となる金融商品になるというのも、借り手側の経験しかない一般の人には、何となく腑に落ち難い部分なのかもしれません。

借金は、当たり前ですが、貸し手側から見たら貸金(かしきん)です。貸金というのは、きちんと約束通り返してもらえないリスクのある、一種の投資なのです。

モーゲージを約束通り返してもらえない典型的なケースは、借り手が失業する等して返済能力がなくなり債務が履行されないことで、そうした債務不履行となることを「デフォルト」と言います。

「デフォルト」という言葉は、システム等の「デフォルト設定」のような形で使われることも多いのですが、金融で「デフォルト」と言えば、債務不履行を意味するとても重要な言葉です。

投資先としてのモーゲージには、デフォルト・リスクの他に、借り手が繰上返済することで期間が短縮してしまうリスクもあります。日々の生活の中でも突然予定が狂って色々困ってしまうことはよくありますが、それは投資でも同じことなのです。

■初級編に続く

「映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を華麗に楽しむための基礎知識 - 初心者編」で説明しなかった、モーゲージ担保証券(MBS)やCDO(コラテラライズド・デット・オブリゲーション)等の証券化についてや、映画の中で勝負の切り札となるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)等については、これに続く「初級編」や「中級編」等の中で解説します。

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を観るだけで金融について学ぶのは難しいですが、映画をきっかけに自分なりに調べたり学んだりすることで、金融リテラシーを高めることは可能でしょう。そんな人たちの中から、映画の四人のように、いつの日かとんでもない大勝負に挑む人が現れるかもしれません。

第88回アカデミー賞で脚色賞を受賞した注目映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、3月4日公開です。

≪参考記事≫
■Why American people!? 米アカデミー脚色賞を受賞した注目映画で、アメリカ人が住宅ローンを返せなくなったのは当たり前。 本田康博
http://sharescafe.net/47953593-20160229.html
■スター・ウォーズを特別料金にするのはともかく、日本がそもそもダントツに映画が高い件。 本田康博
http://sharescafe.net/46947203-20151119.html
■不遇の天才チューリングの半生を描いた脚本家が感動のアカデミー賞スピーチで訴えた、日本に一番足りないもの。 本田康博
http://sharescafe.net/43977373-20150326.html
■「100分中20分が性描写」と話題の女性向け官能恋愛作品がもたらした衝撃と、大人の事情。 本田康博
http://sharescafe.net/43385921-20150216.html
■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。 本田康博
http://sharescafe.net/42555365-20141225.html

本田康博 証券アナリスト・馬主

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