記事

求刑25年に対して無期懲役の判決 死刑までも検討したという裁判員裁判

 宮崎地裁では、女性が殺害され遺体が切断された事件で、殺人、死体損壊・遺棄などの罪に問われた主犯格の被告人に対して、2016年2月29日、求刑25年に対して無期懲役の判決が下されました。

 事件としては被害者1名の殺人でしたが、殺害したあと遺体をバラバラにしたということで非常に残虐さが際立つ事件でした。
 これに対する求刑が懲役25年だったわけですが、判決が有期刑の上限である30年を超えての無期懲役ですから、かなりの重罰です。

 しかも、この量刑の判断にあたっては、死刑まで検討されたというのです。
裁判に教育効果」(宮崎日日新聞2016年3月2日)
「検察側の求刑は懲役25年だった。裁判長は死刑についても真剣に考えた、という。」

 何のための死刑の検討だったのでしょう。この事案で死刑はあり得ません。どう考えても裁判員のためとしかいいようがありません。遺族の意見は「死刑」ですが、だから死刑の検討は飛躍し過ぎです。
 その結果が無期懲役ですから、まさに裁判員裁判の結果です。
 これに対する裁判員の感想も報じられています。

遺族心情酌み量刑 宮崎市女性殺害・裁判員会見」(宮崎日日新聞2016年3月1日)
「終了後、裁判員5人と補充裁判員2人が宮崎地裁で会見に応じ、求刑を上回る量刑判断を下した理由について「被告の残虐さを考えると、(求刑25年は)軽過ぎる」などと語った。」

宮崎市女性殺害判決」(宮崎日日新聞2016年3月2日)
「裁判員たちも残虐さや遺族の心情を考慮し「一般市民の意見を言わせてもらった結果」と理由を語った。」
「裁判員や補充裁判員たちは求刑を上回る量刑判断を下した理由として「被告の残虐さを考えると(求刑25年は)軽過ぎる」「被害者は逃げられない環境にいた。あまりにもひど過ぎる」と語った。」

 残虐性ばかりが強調されていますが、犯行としては死体に対する損壊です。殺害の手段ではありません。
 しかし、判決は逆です。
「苦痛想像絶する」交際女性殺害、求刑上回る無期懲役判決 宮崎地裁「猟奇的で非人間的」」(産経新聞2016年2月29日)
「遺体を損壊して遺棄した点は「猟奇的で非人間的」と判断した。
 求刑についても言及し、「殺人罪に重きを置きすぎている」と検察側を批判した上で、全体的に悪質性が高いと結論づけた。」

 これに対して、検察は求刑が軽すぎたのかどうかも含めて再検討だそうです。
 ここでは求刑の8掛けとかいう次元の問題ではありません。裁判員裁判が始まってからはその当初こそ求刑の8掛けでしたが、そのような関係はとうの昔に崩れています。
 そのような中での懲役25年の求刑ですから、決して軽いというものではありません。
 このような重罰については、最高裁は一定の指針を示しています。
裁判員の暴走への歯止めになる? 最高裁 量刑不当を是正

 量刑の均衡は刑事裁判における生命線であり、これを裁判員裁判だからという理由だけで重罰化するのは法治国家としても是認できないことは当然のことです。
 しかし、今回の無期懲役の判決はこれに真っ向から反するものです。

 宮崎日日新聞は、このように論じます。
「09年の裁判員制度施行後、プロの裁判官だけで審理していた時代に比べ、求刑を上回る判決が増加。過去の判例とどうバランスを取るかという課題もあるようだ。だが市民感覚を取り入れる制度の性格上、過去の判例と一致しないのは当然でもある。制度の今後にも注目したい。」(前掲宮崎日日新聞2016年3月2日)
 上記最高裁判決が出たときも、多くのマスコミは一様に批判的な論調でしたが、それは裁判員裁判ということに重きを置きすぎるものであって、刑事裁判の適正という観点は全く捨象されてしまっています。
 今なお、マスコミがこのような重罰判決を市民感覚と持ち上げているのは、改めて量刑を重罰化させるための世論喚起と、それによって裁判員制度を浮揚させる狙いがあります。
 裁判員制度自体は、既に裁判員になることの拒否率が過去最高を更新中だからです。
裁判員出頭率がさらに減少 当局の発表でも7割を切る!

あわせて読みたい

「裁判員制度」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    堀江氏 バイトテロは昔からある

    キャリコネニュース

  2. 2

    海老蔵が豊洲で都知事をバッサリ

    BLOGOS編集部

  3. 3

    バカッター 実は低リスクで驚き

    シロクマ(はてなid;p_shirokuma)

  4. 4

    「貧乏人は犬飼うな」はその通り

    永江一石

  5. 5

    徴用工訴訟 逆提訴が日本のカギ

    AbemaTIMES

  6. 6

    いきなり! セブン出店戦略に学べ

    内藤忍

  7. 7

    西川先生の池江巡る発言は暴論?

    中村ゆきつぐ

  8. 8

    日韓関係 耳傾け合う姿勢が希薄

    宮崎正

  9. 9

    慰安婦解決と天皇の謝罪は別問題

    非国民通信

  10. 10

    「悪夢の前政権」外交面では事実

    MAG2 NEWS

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。