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「Yahoo!の中に埋没するつもりは全くない」 〜朝日新聞・渡辺雅隆社長インタビュー

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「ネットの巨人」Yahoo!をどう見ているか?

―「課題解決型」という言葉は、ネットの世界でいうと、Yahoo!がここ最近、使っている言葉です。検索エンジンではなく、課題解決のために役に立つエンジンなんだということを繰り返し言っています。Yahoo!ニュースも、ただ単に情報を伝えるのではなく、課題解決のために情報を伝えていくのだ、と。

そこで、Yahoo!について聞きたいと思います。日本におけるネットのニュースの世界では、Yahoo!が圧倒的に強いといえます。Yahoo!ニュースは約300の媒体から記事をもらっていて、1日約4000本を載せています。朝日新聞も記事を出していますが、正直に言って、ワン・オブ・ゼムだと思います。ネットのニュースの巨人であるYahoo!について、どのようにお考えでしょうか?


オーサーカンファレンスの模様 (C)Yahoo! JAPAN
渡辺:これは、もうすでに、そこにそういうふうにして存在するものですから…。Yahoo!が過去に立ち上がってきたときにこうすれば良かったと言う人もいますけど、いまあるサービスというのは、お客様の必要に応じて、必要性の中で生まれて育っていくものなので、Yahoo!が大きくなったということは、お客様の必要性にマッチしていたということだと思うんですよ。僕らがそこのところをやりきれていないとすれば、それはそういうことなんだと思います。

ただ、私たちは、Yahoo!に載っていないけれど、朝日新聞にはこれだけの価値あるコンテンツがある、というものを目指していかなければいけない。2000人の記者を抱えているメディアとして、「朝日新聞から目が離せない」と思えるようなコンテンツなり、仕事なりを、しっかりとやっていくことが大事じゃないかなと思います。

―Yahoo!は先日(2月18日)、メディア向けのカンファレンスで「メディアステートメント」というものを発表しました。「ヤフーのメディアづくりは新しい時代へ」と題して言ったのが、「品質と信頼」「多様性」「豊かな流通」の3つです。これまではプラットフォームとして、外のメディアが作ったものを受け入れて並べるだけだったところから、一歩踏み込んで、「我々自身が信頼したメディアになりますよ」という宣言をしたようにも受け取れるかなと思いました。

Yahoo!がそういう宣言をするところまで来ていますが、その中で、朝日新聞はどうやっていくのか。その中の「供給者」の1つとしてやっていくのか。


発表された「メディアステートメント」
渡辺:供給者の1つになってしまうのか。それとも、その中でちゃんとした存在感を示せるのか。そこは違うと思うんですよ。僕らは埋没して、その中に入ってしまおうという気は全くない。Yahoo!がそういう形で「信頼されるメディア」ということを言い出すとしたら、その中でメディアを選別していくわけですから。

Yahoo!がメディアを選別したり、自分でメディアを作ったりしていくということは、日本のメディア環境にとってマイナスかと言ったら、そんなことはないと思いますよ。僕は、良質なメディアがしっかりと存在して、メディアリテラシーを持った人たちが、発信されるものをしっかりと受け止めるということが大事だと思っています。競争相手が大きくなったり、増えたりすることについて、一つひとつ、びっくりしたり、こわがったりしている暇はないというのが、いまの正直なところですね。

―中期経営計画の中では、経営基盤の強化策の一つとして「人件費の抑制」というのが書かれています。具体的な数字としては、年間100億円の抑制と聞いています。
また、週刊新潮の報道によると、30歳だと平均年収が88万円減って、786万円になる。40歳だと192万円減って、1053万円になるとされています。

この点について、僕の知り合いのメディア関係者の感想は「うらやましいな」というものでした。つまり、リストラがあっても、朝日新聞はまだこんなに年収が高いのか、と。早期退職もかなり手厚い補償がされるということで、その点も「うらやましい」という声が出ていました。

ただ、今後の売上目標として「現状の年間2700億円から5年後に3000億円にする」ということですが、それは「新規事業で増やそう」ということですから、ちょっと楽観的なのではないかと思います。そうなると、人件費の水準がまだ高すぎるのではないかとも思うのですが、その点はどうお考えでしょうか?


渡辺:人件費の問題を考えていくときは、企業としていい人材を採りたいというのもあります。同業他社との比較みたいなものは常に考えますよね。そういう中で考えたというのが、1つあります。私たちは、新聞記者も含めて「人」が財産の会社です。仮に今回、転身支援に応じる人たちがいたとしても、これまで朝日新聞に対して貢献してきた人たちなので、その人たちの転身をしっかり支えていく。この人たちは、今後も朝日新聞にいろんな形で返してくれる人たちでもあるわけですから。そういう意味でやっていきたいということです。

もちろん、2700億円を3000億円にするという今の目標が、そんなに簡単な目標ではないというのは、僕らもわかっています。ただ、目標を掲げて走るということをしないと、前例踏襲になってしまったり、去年こうだったからこれでいいやとなってしまう。いままでの仕事の仕方を変えようというモチベーションが働かなくなるということもあるので、しっかりと目標を掲げたうえで、そこに向かって走る。「私たちは何を変えなければいけないのか」ということを常に言うために、高い目標を掲げることが必要だったという側面もありました。

ただ、僕らがこれまでやってきた仕事の中で、もっと伸ばせる部分が実はあるんじゃないかなとも思っています。新しい事業として乗せていく部分と、もし可能ならば今までのところでもう1回復活させる部分というのを、常に考えていかなければいけない。「ここはこれでいいや」とは思っていないです。

―組織の面でいうと、「経営体制の見直し」というのが中期経営計画の中で書かれています。たとえば、産経新聞は、10年前に「産経デジタル」という会社を、外部のIT企業との合弁会社という形で作りました。現在、140人ぐらいの社員がいますが、10年間でそれなりの成果が出ているということです。

このように、新規事業を「分社」という形でやるというのも一つの形ではないかと思います。そのほうが意思決定がスピーディーにできたり、責任を明確にできるということがあると思うんですが、そういう形の組織改革という発想はないのでしょうか?


渡辺:いや、ないわけではないんです。たとえば、朝日新聞出版を別会社にしたように、過去にそういうことをやっているケースもありますし、朝日インタラクティブのように、ネット系の会社を買ってきて、いろんなことをやってもらっているということもありますから、「こうあらねばならない」というものを決めているわけではないんです。ですから、必要ならば「分社化」ということだって、いつも視野に入っています。今度、編集新社も新しく作ります。そのほうが動きやすいメリットがあると判断すれば、そういう形(分社化)にするということもありだと思います。

―デジタルについて、たとえば、「朝日新聞デジタル」の部分を分社化してしまうという形はないですか?

渡辺:現時点では、その話を具体的にしているわけではありません。いま、編集局の中で統合しようという話をしているところですので。

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