- 2016年02月29日 06:10
【トランプの米国、マジで?】
彼が一気に有名になったのは私がちょうどワシントンに赴任した2004年に始まったThe Apprentice(見習い)というテレビ番組がきっかけです。
トランプの会社の1つを任せてほしいと思っている若者が何人もやってきて、課題を与えられ、それを達成できないと、トランプに You’re fired (おまえはクビだ)と番組降板を言い渡される内容。
当時の流行語に引っかけて、今週のThe Economistの表紙は、Uncle Sam(=アメリカ国家)に扮したトランプに You’re firedのポーズをとらせつつ、記事のタイトルは「あんたをクビにする時だ」。ウィットに富んでいます。もとの絵はこちら。
アメリカ軍のリクルーターのポスター。ま、いろんな意味で、いろんな意味が表紙には込められているのだと思います^_^
3月1日は、トランプを追う保守強硬派のクルーズ上院議員の出身地テキサス州を含む党員集会/予備選挙が行われるヤマ場のSuper Tuesday。 15日には保守本流のホープ、ルビオ上院議員の出身地フロリダ州の予備選挙が行われます。
出身地でトランプに負ければ一気にトランプ熱が高まりそうなので、それを前にざっくり内容です(全文の翻訳ではありません)。
(The Economist)
The Republicans, Time to fire him – Donald Trump is unfit to lead a great political party(共和党はトランプをクビにするべき時だ~トランプは立派な政党を率いる器ではない)
あと1週間あまりで共和党の候補選びは事実上終わっているかもしれない。ドナルド・トランプはこれまでにおこなわれた4つの党員集会のうち、 3つで勝利を収めている。3月1日のSuper Tuesdayには、さらに12の州で投票が行われる。世論調査によるとトランプは3つを除く州でトップに立っている。それでも、まだ、代議員の数で別の候補がトランプを追い落とすことは可能だ。ただそれにはフロントランナーであるトランプに何か大きな政治的な失敗が必要だ。さもなければ、トランプの共和党は敗北するだろう。
トランプが選挙戦で語ってきたことは、共和党のトップとして、言わんやアメリカのトップとしてまったく相応しくないことばかりだ。トランプは怒りと暴力をあおってきた。いったい何をするのか想像もつかず、ホワイトハウス近くのポジションにいると考えるだけで恐ろしい。彼の躍進を止めなければならない(He must be stopped)。
(The Economist)
トランプ的なこと(Trumpism)があまりに増えて、ちょっとやそっとでは驚かなくなってしまったが、振り返ってみよう。
国境を越えてくるメキシコ人はレイプ野郎だと言った。捕虜に対する拷問が大好きだと言う。イスラム教徒の米国入国禁止を提案した。テロリストの家族を殺せと言った。最近の選挙集会では、反対者の顔を一発殴ってやりたいとも言った。枚挙にいとまがない。
トランプの唯一の政策はおとぎ話(fantasy)に過ぎない。メキシコとの国境沿いに壁をつくり、その建設費をメキシコに負担させると言う。
仮に南シナ海での危機、アメリカに対するテロ、あるいは新たな金融危機に直面したらいったいどう対応するのか?誰も分からない。本選挙で勝つ人物として最も相応しくない。もちろん大統領として国家を率いる者としても。
トランプの対抗馬のクルーズ上院議員とルビオ上院議員の最初の直感は、フロントランナーに対する批判を避けることだった。のちのちトランプ支持者の支持も取り付けたいからだ。党員集会/予備選挙のプロセスは、時にサーカスのようだが、それでも候補者のリーダーシップと勇気を示す場でもある。その意味ではクルーズもルビオも失格だ。共和党はもっと正面からトランプと戦わないといけない。2012年には 6000万を超える有権者がロムニー候補に一票を投じた。ほとんどが、まともとで思いやりがあり、寛容な人々で、政治的な暴力、偏見、嘘を拒絶している。こうした思いやりのある保守主義の指向者は、11月に口の汚い移民排斥主義者(snarling nativist = トランプ)と民主党候補者の2人から選ぶような事態になればいかにも心が折れるするだろう。
(The Economist)
The Economistとしては、ルビオの実力にまだ不確実性があるものの、トランプを退場させるのにまだチャンスはあると判断している。自分が最有力と勘違いしているクルーズ上院議員を含めて、ほかの候補者は、ルビオに道を譲るべきである。
(The Economist)
それを拒否し続けるならば、リンカーンが率いた共和党をトランプに明け渡させないために時間切れとなってしまう。