記事

「日本にとって沖縄とは何か」を読む

 岩波新書の新刊「日本にとって沖縄とは何か」(新崎盛暉)を読みました。著者は元・沖縄大学の学長で、沖縄現代史の専門家だということです。辺野古の埋め立てが当面の大問題になっていますが、そもそも日本にとっての沖縄とは何であったのか、その全体像がつかめるのではないかと思いました。読んでみても、すっきりした解答が得られたわけではありませんが、沖縄が歴史的にも「疑いのない日本の一部分ではなかった」という事情は理解できました。それは同時に「本土の人間は、沖縄の土地とそこに住む人々を、同胞として心から愛しているか」という問いにつながるのです。

 太平洋戦争においては、日本は沖縄を戦場にすることで本土の延命をはかりました。戦後の占領下にあっては、沖縄を戦利品としてアメリカに差し出すことによって、早期の独立回復と冷戦下の安全保障を得ました。そこには沖縄の人々の意思は全く考慮されていません。戦後の祖国復帰運動においても、沖縄と本土の間には深い断層があり、それは沖縄返還が実現しても、少しも埋まりませんでした。

 「核抜き・本土並み」という掛け声にもかかわらず、1972年の沖縄の本土復帰を境にして、アメリカ軍基地の負担が本土からは目に見えて軽減される一方で、その75%が沖縄に集中して行ったという事実は、長いこと私にとっては理解不能の謎でした。その謎は明快には解けなかったのですが、アメリカにとっても日本政府にとっても、沖縄に基地を集中することが好都合であったのです。沖縄の施政権返還が、日本政府によって祝賀される一方で、沖縄にとっては屈辱と反対運動の対象になったのには、新たな「琉球処分」だという、それだけの理由があったのでした。

 今は日本にとっての沖縄問題は、辺野古の埋め立てを強行するか、それを止められるかの問題に集約されています。日米安保をますます強化して、日本の未来はアメリカとの運命共同体として進むしかないと決めているのなら、辺野古に最新鋭の基地を築いて半永久的に運用するというのが必然になります。普天間基地の危険性を除去するためというのは、もはや小さな言い訳の一つに過ぎなくなりました。

 本書の「あとがき」で、著者は前著から引用して次のように述べています。これが「日本にとって沖縄とは何か」の答えです。

 「日本はますます近隣アジア諸国から孤立し、これと対立を深めながら、超大国アメリカに寄り添い、沖縄を軍事的対立の最前線に置こうとしている。沖縄は、そして日本国民は、それを容認するのか、それとも拒否するのか。いま、そのことが問われている。」

あわせて読みたい

「沖縄」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ホロコースト揶揄を報告した防衛副大臣に呆れ 政府のガバナンスは完全崩壊か

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    07月23日 10:46

  2. 2

    不祥事続く東京五輪 大会理念を理解せず、市民の生活を軽視した組織委員会

    森山たつを / もりぞお

    07月23日 10:25

  3. 3

    将来的に車検で印紙払いが廃止 キャッシュレス払いによる一括払いにも対応

    河野太郎

    07月23日 21:36

  4. 4

    累計8700億円「日本一レコードを売った男」酒井政利氏の〝武勇伝〟

    渡邉裕二

    07月23日 13:02

  5. 5

    「BTSって誰?」今さら知らないとは言えないので、初心者が通ぶれる小ネタ集めてみた

    放送作家の徹夜は2日まで

    07月23日 08:07

  6. 6

    感染爆発は起こらないことが閣議決定されました

    LM-7

    07月23日 22:45

  7. 7

    東京2020オリンピック競技大会の開幕にあたって

    上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

    07月23日 17:52

  8. 8

    橋本会長、「選手のプレイブック違反」証拠をお見せします 出場資格を取り消せますか

    田中龍作

    07月23日 08:33

  9. 9

    電通・博報堂の価値観のままで、オリパラを乗り切れるか

    篠田 英朗

    07月22日 12:16

  10. 10

    「飲食店いじめ」「五輪強行」に思うこと 経済財政でも「金メダル」を目指せ

    わたなべ美樹

    07月23日 13:19

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。