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朝日新聞記事の“再エネ電力は選べないのか?”との質問への答えは、直ちに “No!”・・・

 今朝の朝日新聞ネット記事は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーに関するもので、“再エネ電力は選べない? 4月自由化、家庭向けわずか”という見出しになっている。

 で、“再エネ電力は選べないのか?”との質問への答えだが、直ちに “No!” だ。

 この記事の抜粋(以下の斜字部分)を見ながら、再エネを巡る正解と誤解・曲解に関して解説を試みたい。

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4月から一般家庭でも電力の購入先を選べるようになるが、新電力会社のうち、太陽光などの再エネ中心に作られた電気の供給を自由化開始の時点から始められるのは、4社にとどまることが環境団体のまとめで分かった。電力会社間の価格競争が激しくなる一方で、環境を重視する人たちの選択肢は当面限られそうだ。
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 そもそも、“4月から一般家庭でも電力の購入先を選べるようになる”というのが事実誤認。既存大手電力会社以外の購入先を選べるようになる消費者とは、4月から新規参入する“新電力会社”の提示する条件に合致する需要家だけ。

 具体例については、先のブログ記事『電力小売自由化の最大の盲点 〜 “誰でも電力会社を自由に選べる”ことにはならない・・・』を参照されたい。

 もっともこれは、政府・経済産業省が作成したパンフレットにそう書いてある〔資料1〕ので、この度の“電力システム改革”という名の制度変更を成立させた政治・行政に最大の問題と責任がある。

〔資料1〕
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(出所:経済産業省・“電力システム改革が創り出す新しい生活とビジネスのかたち”)

 先のブログ記事『電力会社のスイッチング:今日時点では0.1%未満・・・』でも書いたように、新電力を選ぼうという世帯は、先月29日現在、全国の全世帯の0.1%にも至っていない〔資料2〕。施行前の今から既に、これが『大山鳴動して鼠一匹』の如くの失政・失策であることに気付いているはずだ。

〔資料2〕
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(出所:電力広域的運営推進機関・ “スイッチングの申し込み状況の公表”)

 “環境を重視する人たちの選択肢は当面限られそうだ”と書いてあるが、“再エネを選ぶ人たち=環境を重視する人たち”とはならない。風力発電所や太陽光発電所は、発電時にCO2やSOx・NOxを排出しない点では環境配慮電源である一方で、立地予定地域の環境保全の観点から地元住民に反対されたため撤回を余儀なくされた例はこれまで幾つもある。

 因みに、高効率火力発電や原子力発電については、厳しい環境アセスメントなどの手続を経た上で、地球温暖化防止の観点からの環境配慮電源として評価されてきた。今後当面は、そうあり続ける見通し。その点では、再エネも化石燃料も原子力も、それぞれ相応に環境配慮電源と見做されている。

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 原発や化石燃料になるべく頼らず、再エネを電源とする事業者を選ぶ人を増やすことを目的にした環境団体でつくる「パワーシフト・キャンペーン」事務局が約200社の新電力会社を調査した結果、20~30社が再生エネ中心の供給を目指しているが、27日現在、一般家庭向けの送電を4月1日から始められるのは4社・・・。
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 電力小売全面自由化による仕組みでは、“再エネを電源とする事業者を選ぶ”ことはできない。これもまた、大きな誤解・曲解だ。発電所から送電網に入った電気は、他の発電所からの電気と混合されるので、需要地で受電される電気はどこの発電所からの電気なのか、判別できない。

 詳細は、先のブログ記事『電力自由化の誤解 〜 再エネを選択できるようになるのは、“まだ先”ではなく、『まだまだまだまだまだずぅーっと先』・・・』の後半を参照されたい。

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 大手電力会社や大手提携会社も再エネ供給が遅れており、ソフトバンクや出光興産系の子会社も一般家庭向けの開始時期は未定。準備の遅れは、発電量自体が少ないことが一因。14年度の日本の総発電量に占める割合は3.2%(水力発電除く)にとどまる。
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 これは、先のブログ記事『電力自由化の誤解 〜 再エネを選択できるようになるのは、“まだ先”ではなく、『まだまだまだまだまだずぅーっと先』・・・』の前半で書いたことと同じ趣旨。再エネとは、中小水力・地熱・バイオマス・風力・太陽光の5つ。国内の発電電力量の構成において、直近14年のデータで再エネの割合は3.2%程度しかない〔資料3〕

〔資料3〕
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(出所:2016.1.19 経済産業省・調達価格等算定委員会資料

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 キャンペーンの中心となっている国際環境NGO「FoE Japan」は「自由化されても消費者の選択肢が少なすぎ、高まっている再エネへの関心を低下させかねない。再エネ事業者の準備が整い次第、契約の変更を促していきたい」と話す。 電力自由化で、再エネを使う電力会社を選べるようになる。送電は既存の大手電力会社10社の送電網を使うため、ほかの電気と区別はつかないが、再エネを応援する意思を示すことになる。
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 “消費者の選択肢が少なすぎ”るのではなく、そもそも、再エネによる電力量が少な過ぎるのだ。それを理解し、正確に消費者に伝えていくことが、再エネ促進のキャンペーンを進める人たちのあるべき姿勢のはず。文学的思考から工学的思考に転換すべきだ。そうでないと、ただの理想主義で終わってしまうだろう。

 記事には、電気の流れに関する絵図〔資料4〕が貼付されている。これは間違っていない。しかし、記事本文では、“ほかの電気と区別がつかない”と書いておきながら、“再エネを使う電力会社を選べるようになる”と書いている。これではまるで霞が関文学そのものだ。これを正確に読解できる読者が、果たしてどれだけいるだろうか?

〔資料4〕
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(出所:2016.2.28 朝日新聞ネット記事

 今もって、再エネに関する正確な報道がなされていない場合が多い。正確な報道をしなければ、読者である一般の消費者には正確な知識は浸透しない。それは、再エネの振興にとっては、大迷惑であり、邪魔だ。

 自分たちの一方的な思い込みだけで再エネ報道をしたり、再エネ喧伝をしたりすることを、再エネ信仰のマスコミ関係者や再エネ事業関係者が止めない限り、再エネの健全な発展は期待できない。

 これは、今までの原子力・火力・水力の普及から得られる教訓そのものである。 

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