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『1998年の宇多田ヒカル』史上最もCDが売れた年のこと

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藤代裕之氏の「Yahoo!嘘つき発言」問題と、それに関連する諸々の賛同の声を見ていて、あぁ、レベルが低いと思い、ココロがザラッとしている41歳2月の週末、月末である。Yahoo!個人にまとめたので、私の気持ちを少しでも汲みとって頂きたい。

ヤフー宮坂社長は藤代氏をスルーしてもいいのではないか ジャーナリズムとは何なのか問題(常見陽平) - Y!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/tsunemiyohei/20160227-00054837/

少しでも気持ちを上げるために、明るい話題を書くことにしよう。

私は出会ってしまった。最高に面白い本に。この本をご紹介するのが遅れてしまったことをお詫びする。お詫びする相手は、著者や編集者、出版社などではなく、このブログの読者の皆さんに対してだ。この本を知る機会を遅らせてしまったことに対してである。まあ、すでに様々な方が絶賛しているので、知っている人も多いかと思うが。



『1998年の宇多田ヒカル』(宇野維正 新潮新書)である。宇多田ヒカルの本か、音楽の本かと思わないで欲しい。この本は、日本のポップカルチャー、コンテンツ産業の見取り図である。私たちが何をどのように楽しんできたのかを読み解く本である。著者の長年の取材と研究による豊富な知識はもちろんだが、時代を読み解く視点が素晴らしい。

私たちの記憶は嘘をつく。大事なことを忘れていたり、過度に美化したりする。そもそも1998年、宇多田ヒカルという言葉を並べられて、私はピンとこなかった。1998年が「史上最もCDが売れた年」だということは、音楽ファンとしてなんとなく覚えていたが、宇多田ヒカルって1998年デビューだっただろうか?と。私は1999年だと認識していた。ファーストアルバム『First Love』が出たのがこの年だったからだ。でも、シングル「Automatic/time will tell」が出たのは1998年12月だったのね。そして、この年、椎名林檎もaikoも浜崎あゆみもデビューしている。「花の1998年組」だ。

宇多田ヒカルといえば、あのソファの前で踊る「Automatic」のPVのインパクトが大で、いきなり「R&B」というジャンルなのだと説明されたりしたのだが・・・。この本にあるとおり、思えば出始めの宇多田ヒカルはアイドル的な捉え方もされていたよなあ、とか思い出したりする。

私はこう見えて宇多田ヒカルのファンでアルバムは全て持っていて、Blu-rayも持っていたりするのだが・・・。長年、謎だったのはそれこそ活動封印ライブ含めて、MCが初々しいというか素人っぽいというか、そんな印象を持ってしまうことだった。実際、Ustream(懐かしい)で配信された2010年の活動休止ライブも、申し訳ないがMCはたどたどしい。しかし、この本を読んでその理由がなんとなくわかった。宇多田ヒカルは幼い頃からスタジオの人で、これまでに67回しかライブをしていないのだ。

宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみにまるごと1章ずつページが割かれているのだが、それ以外にもそれこそ小室ファミリー、渋谷系、SMAPさらにはCD産業全体にも光が当てられていて面白い。・・・たしかに、CD信仰(圧倒的に音が良いとか、ずっと保存できるとか)ってあったよな、とか。洋楽ファンも邦楽を一緒に聴くような時代になったよなあとか。1997年に社会に出て、サラリーマンの娯楽としてCDレンタルやカラオケを楽しんでいた世代としては、まさに音楽を日々楽しんでいたあの頃を思い出す意味でもたまらない1冊である。

一方、不思議な読後感を抱く本でもある。ネタバレになるので詳しくは書かないが、第7章の「2016年の宇多田ヒカル」の最後の1文で、どんよりする。ただ、これが現実なのだろう。そう、ヒッキーが帰ってくるわけなのだけど、それは希望なのか、と。

まだまだ書きたいことがあるが、この辺で。

そうだ、最後に、版元の新潮社には苦言を呈さなくてはならない。価格を見て驚いた。740円+税なのだが、この本は。いくらなんでも安すぎないか。担当者に会ったら、説教してやりたい。著者のアウトプットをバカにするな、と。倍の値段でも私は買う。まあ、少しでも多くの人に読んでもらいたいという配慮なのだとも思うが。

まあ、個人的には、音楽というか、コンテンツ産業の未来を考えるとどんよりすることもあるのだけど、消費者としては、こんなに音楽を手軽に、様々なかたちで楽しめる時代はないわけで。

この本で、コンテンツ産業の現在、過去、未来を直視しよう。うん。

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