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嘘と夢の境界線

 「大ぼらを吹いて、それを実現する様な政治家にならなあかん」と言われたことがある。その言葉から、私がイメージする政治家は、淡路島出身の衆議院議員であり、90歳を超えるまで代議士を務められた今は亡き原健三郎先生である。

 1946年の初当選時から淡路島と本州をつなぐ「明石海峡大橋」の建設(明治時代から存在した架橋構想)を提唱されていた。語り口調の豪快さもあってか「ハラケン」の愛称が「ホラケン」と揶揄されることもあったそうだ。しかし、そのホラは現実のものとなっている。「夢を現実のものへとした政治家」として世に知られ、私自身も現役の時のお姿が今もすぐに思い出されるほど印象にも残っている。

 「政治家は嘘ついてはいけない」と言えば多くの人は、その通りだと首を縦にふるだろう。「政治家は夢を語らなければならない」と言っても同様だと思う。しかし、夢と嘘は大きく異なる様で、実は近しい関係にあるのではないかと感じられるのだ。

 前回の投稿で、昨年のW選挙の投票行動において【真実を知る人は「柳本」を支持した】との表題で、「豊かな大阪を考える学者の会」報告会での【データで振り返る「大阪ダブル選挙」】という資料をご紹介した。

 昨年の大阪市を廃止分割して5つの特別区を設置する、いわゆる大阪都構想に対しての住民投票や大阪府知事・大阪市長選挙において、どのような投票行動傾向があったのか。資料では、1割の人しか都構想によって「大阪市が廃止されて消滅する」という真実を認識していなかったという結果が出ている。

 では何故、多くの人が真実を知り得なかったのか?原因がどこにあるのか?

 報告会では、橋下氏の詭弁によるところではないかという流れがあった。私も、同感である。しかし、同感であると同時に、橋下氏はじめ橋下維新の会がこの4年間で積み上げてきた事実も評価しなければならないと感じている。

 4年前「大阪都構想」なるものは既に提唱されていたが、都構想を進める法律は存在しなかった。そして、大阪市会において維新の会は、議会での過半数の議席をもっておらず、都構想議論を進める会議体の設置や住民投票に向けての賛同を得られる状況には、明らかになかった。当時、地域政党でしかなかった大阪維新の会が、都構想に関する法律を国政において成立されることなど想定外であった。

 大阪都構想など夢のまた夢…ウソでしかない。当時は、その様な表現も可能であった。

 しかし、現実はどうだろうか?

 政局が作用した力による結果ではあるが、国での法律も制定され、協議する会議体も設置され、一旦議会で否決された協定書案(都構想の設計図と言われるもの)が住民投票にかけられるまでに至ったのである。

 「ウソを現実にした事実」がそこにはあったのだ。

 改めて橋下氏の言動をふり返ると詭弁の達人であった様に思う。橋下氏を支持する人の多くも「橋下さんは、絶対ウソをつかない人だ」と思っている人は皆無なのではないだろうか。ただ、「橋下さんは言うことは乱暴かもしれないが、大きな夢を語ってくれるので期待がもてる」と思う人は非常に多いのであろう。更に「ウソでも、期待を持たせてくれればいい」「いっそ騙し続けられたとしても、今が良いという実感があればいい」という方々も潜在的におされるのかもしれないと感じる。

 「政治家は嘘をついてはいけない」「真実を伝え続けなければならない」当然、その思いは今後も変わることはない。しかし、「嘘が実現して夢」になることがある。また、「夢が実現せずして嘘」となることもある。「夢は実現しなければ夢のまま」なのである。

 政治は、歴史がその境界線を裁くことになる。

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