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激化するアップルとFBIの舌戦、両者譲らず

先月、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官がある会合で顔を合わせ、テロと戦うためワシントンとシリコンバレーがどのように協力できるかを話し合った。

 カリフォルニア州サンノゼで1月8日に行われたこの会合には、マクドノー大統領首席補佐官やリンチ司法長官らも出席した。その場の討議内容を知る関係者らによれば、クック氏は席上、これら政府当局者に対し、暗号化の効用を公に認めるよう求めた。これに対しコミーFBI長官は、捜査で求められているデータについて企業は裁判所に指示されたアクセス実現方法、つまり暗号化回避の方策を政府と協力して考案すべきだと述べたという。

 関係者によれば、会合では両氏とも、当時は秘密だったアップル・FBI間の争点には触れなかった。つまり、昨年12月2日発生したカリフォルニア州サンバーナーディーノ銃乱射事件のサイード・ファルーク容疑者が所有していた「iPhone(アイフォーン)」のロック解除をめぐる論争だ。しかし先週になって、この論争は公に知られるようになった。連邦地裁がアップルに対し、このアイフォーンのセキュリティー機能を迂回できるようにするため司法省とFBIへの協力を命じたためだ。

 今や、クック氏とコミー氏は、セキュリティーとプライバシーの間でどうバランスをとるかをめぐる国民的な議論でそれぞれの陣営の旗頭となった。法廷の場でも世論の場でもそうだ。

 21日夜から22日朝までの数時間に、両氏はいずれもインターネット上でそれぞれの立場を主張した。

 コミー氏は「われわれは、この手掛かりを追跡しなければ、銃撃事件で生き残った人々に顔向けできないし、鏡の中の自分自身にも顔向けできない」とブログに投稿。同容疑者のアイフォーンのロック解除が重要なのは、他のテロリストたちを突き止めるカギになるかもしれないからだと述べた。

 これに対しクック氏は、従業員向けの電子メールで、政府の動きは「危険な先例であり、あらゆる人の市民的自由を脅かす」と述べた。そして検察当局に要求を取り下げるよう促すとともに、暗号化利用の高まりによって提起されている難題に対応する委員会を設置するよう政府に提案した。

 アップルの社外弁護士セオドア・ブトラス氏は22日インタビューに応じ、「これが重要な政策問題であることには誰もが同意している」と指摘。同氏は、議会と大統領が市民のプライバシーと法執行の必要性の間でバランスを取るべきだと述べた。アップルは26日の法廷で、政府への正式の対応を提出する予定だ。

 現時点で、世論はFBIに味方している。ピュー・リサーチ・センターが22日発表した調査結果によれば、アイフォーンのロック解除でアップルは政府に協力すべきだとの回答は全体の51%だった。協力すべきでないは38%、分からないは11%だった。

 関係者らによれば、プライバシーとセキュリティーに対するクック氏の立場は、多くのアップルの上級幹部と同様、日がたつにつれて強固になっているという。これまでアップルはセキュリティー対策を強化し、ユーザー情報の暗号化も進めてきた。クック氏は、プライバシーはアップルが支持しなければならない基本的人権だと信じるようになったと関係者らは言う。

By Daisuke Wakabayashi and Devlin Barrett

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