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人口減少歯止めの秘策

 日本において人口減少に特効薬はない。それは日本というマクロでみても、道府県単位でのミクロでみても同じである。しかし、もう少し細分化された市町村・特別区・行政区というエリアにおいては、少々表現を変えなければならないと思っている。

 すなわち、この度の国勢調査の結果を見ても、総じて減少傾向にあるもの、微増のエリアもあれば、ほぼ横ばい傾向のエリアもあり、そこには一定の理由・原因があると見なければならない。だとするならば、その理由を紐解くことによって、全体的には減少傾向である地域人口に対して、将来的に○○万人程度で安定させる或は激減又は減り続ける傾向を鈍化させるという対処は可能ではないかという仮説は立てることができる。
 事実、各自治体においては、人口減少に歯止めをかけるという直接的な目的でないにしても、人口増加を求めて様々な施策が実施されている。
 
 人口減少に特効薬はない。同時に、人口減少に歯止めをかける秘策も一様にあるわけではない。しかし、地域毎に自治体毎に取組む余地は十分にあり、詳細な分析と将来的な戦略をもちつつ官民協働で対処しなければならないと考える。


 最近購入した中央公論新社の『23区格差』には、<「定住こそが発展の礎」というウソ>という小見出しがある。簡単に言えば、住宅施策として定住人口を増やす様な取組みは結果として将来的な衰退をもたらす傾向にあり、寧ろ流動人口を増やす方がエリアの新陳代謝をもたらし継続的にエリアは発展するという内容と読み取る。
 都心部においても下町と言われる地域はかねてより地域のコミュニティーが醸成されており、土地柄も落ち着いていて安定の住居エリアとして選択されてきた。しかしながら、戦後世代の次の世代は、親世代の下町を定住の地として選択せずに町には空き家が増え、過疎化が進んでいく。ニュータウンと言われる様な地域は、戦後の高度成長期に流行し多くの若者の定住の地となったが、その後エリアは全体として高齢化し、流入人口が激減する状況にあっては街の衰退が如実に顕在化することになる。

 結局、街そのものを高齢化させない為には、一定規模の流入人口を常に見込める街を作り上げる施策が求められるという事になる。
 では、流入人口を見込める様な施策とは何か。秘策などない。容易なことではない。
 ただ、会社を起こす、学校を選ぶといった人生における大きな転換期に選択される様な魅力・特徴を、よしんば街の歴史や伝統・文化に基づき持つことなのではないだろうか。
 例えば、教育。人口減少・少子化で学校の統廃合に伴い「小中一貫校」が注目を浴び、増加傾向にあるが、もはや「小中一貫校」であるだけでは選ばれる対象にはならない。国際化に伴い、特に語学に力を入れる(勿論、特徴と言える力の入れぐあいが求められる)取組み、或は中小企業のまちであれば「ものづくり」に特化して、幼少の時から「ものをつくる」仕組みと発想を身につける教育を重視する様な小中一貫校があっても良い。また、受けた教育と将来の職とが密接に結びつくことが大切で、小中よりも中高、或は大学も巻き込んでの密接な連携、更には一体的な取組みができれば、人口を流入させるインパクトに繋がるのではないかと考える。
 入ってきた人口はやがて巣立っていく。しかし、また時と場合によって、人生の転機にUターンしてくる様な仕掛けも必要だ。例えば、起業支援。当該地域在住歴が○年以上ある人が、当該地域で起業する際には、家賃の減免がある、或は別途支援があるということがあってもいい。芸人になるのか、音楽家になるのか、芸術家になるのか分からないが、修行の地として選ばらる当該地のインセンティブ施策を打つ。その中から有名になる成功者がでれば、その街は「○○家を排出した街」としてブランド力を高めることになる。

 少し絵空事の羅刹になってきていないか心配でもあるが、このような発想のやり取りを各自治体・地区で地域に思いを持つ人間と行政を含めた専門家を交えて深めていく事で、当該地域で真に効果のあるアイデアが生まれてくるのではないだろうか。

 大阪府下の人口が減少傾向に転じる一方で、大阪市内は微増である。ただ、これも増えているというよりは市外の若干の人口が市内に流入した程度ではないだろうか。そして、市内においては5年前と同様に中心部は激増しているが、周辺部は減少している。今しばらくは傾向の継続が予想されるが、増えている中心部も、減っている周辺部も、今後の全体的な減少傾向を見定めて、どの時点で歯止めをかけるかの照準を合わせて、持続可能な街を創っていかなければならない。

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