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自民党の憲法改正草案の「緊急事態条項」は危険だ~田原総一朗インタビュー

BLOGOS編集部
今年の政治の大きなテーマは「選挙」だ。7月に参議院選挙が予定されているが、さらに衆議院選挙もあわせた「ダブル選挙」になるのではないかという声もささやかれている。与野党の選挙に向けた動きが活発化しているが、政権を握る安倍晋三首相は1月下旬の国会で「憲法改正を参院選の公約に掲げる」と明言した。選挙では憲法改正の是非が大きな争点になる可能性があるが、このような動きをどうみるのか。田原総一朗さんに聞いた。

自衛隊が国防軍になったら・・・

安倍首相は2月初めの衆議院予算委員会で、憲法9条の改正の必要性について口にした。憲法の9条2項には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書かれているが、安倍首相は「7割の憲法学者が自衛隊について憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきではないか、という考え方もある」と発言し、そのような状況をなくすために憲法改正が必要だという考えを示した。

「7割の憲法学者が自衛隊について違憲の疑いを持っている」というのは、朝日新聞が昨年6月、憲法学者にアンケートしたときの結果をさしている。この調査は、安保関連法案についてのものだったが、同時に自衛隊についても聞いている。

アンケートに回答した122人の憲法学者のうち50人が自衛隊は憲法違反だと答え、27人が違憲の可能性があると言った。つまり、合計すると、63%が「自衛隊は憲法違反か、その疑いがある」と言っている。この点を、安倍首相は気にしているのだと思う。

では、安倍内閣は憲法9条2項を、どう変えようとしているのか。参考になるのは、自民党が野党だった2012年に作った「憲法改正草案」だ。

それによれば、9条2項の戦力不保持の規定は削除され、かわりに、9条の2という条文が新設され、国防軍を設置することになっている。また、現行憲法のやはり9条2項にある「国の交戦権は、これを認めない」という規定も削除され、「自衛権の発動を妨げるものではない」という文言に変更されている。

国防軍を持ち、交戦権を否定しないということは、戦力を持つということだ。いま日本は平和国家をうたい文句にしているが、9条2項をこのように変えてしまうと、平和国家のうたい文句はなくなるのか。そういう問題がある。

歯止めないと危険な「緊急事態条項」

それ以上に問題なのは、緊急事態条項だ。憲法改正の入り口となるのではないかとも言われている。

緊急事態条項というのは、自民党の憲法改正草案の98条と99条に登場する。まず、98条の1項にはこう書かれている。

「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」

この緊急事態の宣言は、国会の承認が必要だが、事後でも良いとされている。

緊急事態が宣言されるとどうなるかは、草案の99条に書かれている。国民にとって重要なのは、99条3項だ。そこには、こうある。

「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」

つまり、緊急事態が宣言されると、内閣総理大臣が全権を握ることになる。そうなると、まかり間違って、総理大臣が誤った独走をしかねない。そういう危険が生じる可能性があるということだ。

海外でも、憲法に緊急事態条項がある国は少なくないが、首相や大統領の暴走に対する歯止めはどうなっているのか。

たとえば、ドイツの憲法(基本法)にも緊急事態条項は定められている。ドイツの憲法では、緊急事態をいくつかのパターンに分けているが、そのうちの防衛事態(連邦領域が武力で攻撃されるか、このような攻撃が切迫している事態)については、「連邦政府の申立てに基づき、連邦議会が連邦参議院の同意を得て行い、連邦大統領によって公布される」となっている。

ドイツ憲法では、防衛事態のために仮に連邦議会が議決不能となった場合、合同委員会が設置されることになる。合同委員会は、連邦議会議員32人、連邦参議院議員16人の48人で構成されるが、これが大統領の独走の歯止めとなる。

このようにドイツの憲法には、連邦大統領の独走に歯止めをかける合同委員会が設けられているが、自民党の憲法改正草案の緊急事態条項は大変危険だ。

もし憲法を改正して緊急事態条項をやりたいのならば、歯止めを作らないといけない。そして、国会を始めとするいろんな場で、どんどん議論しないといけない。

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