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「小泉独占インタビュー」はなぜ実現できたのか〜ノンフィクションライター・常井健一氏に聞く

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取材手法は「アンチ報道機関」

ー取材対象と信頼関係を築くまでにはかなりの苦労があると思います。また、信頼関係が一度出来上がってしまうと、今度は批判することが難しくはなりませんか?

発言する進次郎氏(常井氏撮影)
常井:報道機関の政治取材は、「番記者」が政治家に接近し、一緒に飲み食いもしながら信頼関係を築いていき、ネタを取っていくのです。ですから、自然と自分のネタ元を批判できなくなってしまいます。

私は報道機関に勤める記者ではありませんから、彼らと同じことをやっても仕方がないだろう、というところから出発しています。

例えば小泉進次郎さんを取材したいと思った時に、彼の知人に近づいたり、仲良しコミュニティに入って親しくなっていくのが正攻法ですが、私はあえて親しくなろうとはしませんでした。秘書との関係も同様です。全国各地で行われる小泉進次郎の講演、演説、視察の模様を3年間で300回以上取材しましたが、事務所から便宜を図ってもらったことは一度もありません。一方、記事や本が出た時には、できる限り事務所に直接届けるようにしています。そして、いつでも反論や批判に応じる覚悟をしています(笑)。そういう緊張関係を作り出しているからこそ、自由に書けますし、信頼して買って読んでくれる読者もおられるのだと思います。これだけ政界で発言力があるのにもかかわらず、彼の言っていること、やっていることを分析や検証をして批判しようとするテレビや新聞は皆無ですから。

私が取材時に意識しているのは、新聞社で習った「記者行動規範」に書いてあることを疑ってみる、ということです。あえて相手の懐に入ってしまって、リアルを描き出す。「中立公正」「不偏不党」じゃなくて、偏っていたって良いじゃないか、と。また、政治記者たちが集団で囲み取材するなら、私は一対一で会う。アポを入れずに、出たとこ勝負で会いに行く。取材NGの場所でも潜入して、素の肉声を取る。世間から「悪党」と後ろ指を指される人にも話を聞きに行く。数週間、数ヶ月と、とことんロングスパンで追いかける……。そうやって、報道にありがちな"予定調和"を崩していこうと心掛けています。

ー取材する上で、気をつけていることはありますか?

常井:今、メディアが信頼されなくなっている理由の一つに、取材のプロセスを隠してしまっていることが挙げられるのではないでしょうか。これだけトレーサビリティとか、原産地表示とかうるさい時代なのにもかからわず、報道は必要以上にブラックボックスを設けている。取材対象からは絶対にお金をもらわない、言いなりの記事は書かないというのは大前提ですが、例えば、一緒に食事をした、ということなどはあってしまうわけで、その場合は「食事した席で……」などと活字に起こすようにする。例えば、今回の小泉純一郎さんとの会場にしても詳細に書くように心掛けましたし、小泉進次郎の同行取材中、沖縄の小さい船の中で彼がマンゴーを食べていて、「常井さんも食べれば」と言われ、一緒に食べたことがあります。そうしたことも、「毒まんじゅうを喰らう気分でかぶりつくと、味わったことのない甘さが口の中に広がった」と(笑)。文字数が限られる新聞では難しいことでしょうが、読者に信頼してもらうためには、そうしたオープンな態度が必要だと思います。

一方で、今のマスコミでは、そういうことは決して外に出さないことが倫理的に正しいとされています。不都合なことこそ、「取材源の秘匿」で逃げようとする。例えば、宮崎謙介議員が、妻の金子恵美議員に「恥をかいてきなさい」と叱られたという報道がありました。記者としては、本来二人しか居ないはずの病室の話を聞くことができ、スクープを得たと考えたのでしょう。視聴率も高かったと聞きます。しかし、どのようにしてそのテレビ局だけがそんな秘密を聞くことができたのか、しっかり明かすべきでしょう。その局はスキャンダルが出る前に夫婦の密着取材に成功していますし、視聴者の中に疑いの種を撒いてしまうことになりかねないと思います。

ーしかし、せっかく取材にこぎ着けたとしても、厳しい論調やありのままに書き過ぎた結果、その方への取材は最初で最後になってしまう、という可能性もありますよね。

常井:基本的に「嫌われてもいい」と思っています(笑)。だからこそ取材対象の本当の人物像が描けると思っていますし、そのぐらいゆさぶらないと本音や素顔なんか出てきません。他の人が聞けないなら、自分が聞いてやろうという強気のモチベーションにもつながっています。そうでないと、マスメディアと同じになってしまいますよね。

取材依頼とは一度、断られたら終わりなんです。「そこをなんとか!」と言って、気の変わる方は滅多にいませんから。だから、電話やメール、手紙で依頼状を出さずに、思い切って直撃してみることもあります。そうすると、意外と「少しなら…」と話をしてくれることもありますから。

一方、取材対象と距離を取る、批判的に見つめるということは、喧嘩するということではありません。取材対象と険悪な関係にあるときこそ、鬱憤晴らしや、ひとりよがりになってしまわないよう、表現には悩みますね。客観的に、読者はどう思うだろうかと考え込みます。2、3行書くのに2日ぐらいかけてしまうこともあります。

おそらく、小泉進次郎さんも本音では私のことを嫌っていると思いますよ。行く先々になぜかいるし、彼がお忍びで通っている場所を割り出してしつこく取材に行ってますから(笑)。父のことまで歴史を掘り起こして調べ上げ、インタビューして本まで作ってしまう。厄介なライターでしょう。ただ、そのようにして、取材対象者に「ここまでちゃんと見ているんだな」と思ってもらえることが大事ですし、彼が政界引退する頃には信頼関係も生まれてくるのだと思います。

(とこい・けんいち)1979年茨城県笠間市生まれ。ライブドア(現LINE)を経て、朝日新聞出版に記者として入社。「AERA」で政界取材担当。退社後、オーストラリア国立大学に留学し、2012年末からフリー。主に政治分野の調査報道を手掛け、国内主要誌に寄稿している。

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