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焦点:ユーロ圏強化めぐる独仏の溝、欧州統合阻む真の障害

[ブリュッセル 21日 ロイター] - 欧州の統合深化にとって、英国が欧州連合(EU)を離脱するか「特別な地位」を得てとどまるかの選択は本質的な問題ではない。むしろ真の障害は、ドイツとフランスがそれぞれ経済的、政治的な文化の違いからユーロ圏強化の具体的方法に関する溝が埋まらず、事態が前に進まない点にある。

先週末のEU首脳会議は、英国が求めていた改革案に合意。これについてベルギーのミシェル首相などの欧州連邦主義者からは、英国だけでなく他の加盟国からも例外的な扱いを求める声が広がり、EUの解体につながるのではないかと懸念されている。

確かに移民問題では、オーストリアがこのほど難民申請制限を開始したほか、昨年には東欧4カ国がEUの難民割り当てを拒絶するなど、結束がほころびるリスクが浮き彫りになってきた。

だが、欧州統合の基本的な枠組みにとって憂うべきは、ユーロ圏において独仏指導者の一体となった指導力が発揮されなくなっていることだ。両国は長年、同床異夢の関係を続けている。

2010─12年にユーロ圏債務危機が深刻化した際には、両国はなんとか最低限の合意にこぎ着け、財政ルールの厳格化や独自の救済基金創設、部分的な銀行同盟の導入などを実施した。

ところが欧州中央銀行(ECB)が12年にユーロ防衛のために「できることは何でもやる」と表明して以降は、経済面のガバナンス(統治)強化やリスク共有に向けた諸改革は停滞してしまっている。

<相互不信>

12年にEU首脳とECB総裁、ユーロ圏財務相が「真の欧州通貨同盟に向けて」と題した改革案に調印したことで銀行同盟への実現への第一歩が踏み出されたが、その後は進展が見られていない。

フランスは、国内の硬直的な労働市場と大盤振る舞い的な社会福祉制度の改革についてEUとの間で拘束力のある取り決めを結ぶのを拒絶してきた。そんな契約をすればストライキが頻発し、政権が倒れかねないからだ。

一方でドイツとその影響下にある国は、こうした改革を約束させるために金融面のインセンティブを提供することに不満を見せている。またドイツは、今の枠組みの下でのユーロ圏の予算共通化や債券の共同発行、預金保険機構の一本化などの考えを一蹴した。

昨年にはより穏当な3段階方式のユーロ圏改革案の概要を記した報告書が公表されたものの、改革に弾みはつかなかった。

それどころか独仏両国はお互いに不満と不信感を抱いている。ドイツは特にフランスで財政規律に関するルールがまだ適切に実行されていないと考え、フランスはドイツが南欧諸国支援で示す連帯感が足りないとみている。

ドイツは大規模な難民の流入、フランスは国内におけるイスラム過激化による攻撃への対処といった国内に差し迫った問題も抱えている。

独仏ともに国政選挙が予定されるのは来年で、両国が欧州統合問題で正念場を迎えるのはそれ以降になるだろう。

フランス政界のインサイダーによると、オランド大統領は左派勢力が分裂したり、05年に欧州憲法条約が国民投票で否決されたような事態が再び起きるのを恐れ、欧州統合に関する政策の推進には腰が引けている。

今度の選挙でオランド氏が再選されるか、あるいは中道右派が政権を奪回した場合でも、主権の共有化により前向きになるかどうかは分からない。

ドイツでは、数百万人の難民受け入れが1990年代初めのドイツ再統一以来の壮大なプロジェクトであるがゆえに、メルケル首相の任期中ずっと、あるいはその後継者になってからも政治的に注目を集める問題になり続けそうだ。

<強まるドイツの力>

ドイツが経済的に成功している半面、フランスは成長が停滞し、両国の力関係ではどんどんドイツの力が増していることも、事態をより複雑にしている。

ドイツが理想とするのはルールに基づく欧州で、予算編成権に関する国家主権は中央当局に移行され、この当局がルール違反国を処罰したり追放する権限を持つ。またEUの裁判所が、経済改革を実行させる強制力を有することになる。

こうした形なら、ドイツは債務共通化は無理でも、限定的なユーロ圏の予算と預金保険機構の共通化を受け入れるかもしれない。

逆にドイツ国民が悪夢と考えるのは、豊かな工業地帯の北部から規律に欠ける南部への富の再分配を進める統合だ。これはモラルハザードへの道を開くと懸念されている。

フランスはといえば、より中核的な国で形成するユーロ圏で、税率は統一するかより高い水準に全体を近づけ、最低賃金と失業率保険を共通化し、共同借り入れによってかなりの規模の共通予算を編成する、という姿を思い描く国民が多い。

しかしほとんどのフランス人は依然として、財政や経済政策の権限を手放したり、監督を受けることには拒絶反応を示している。

今後英国の国民投票でEU残留が拒否されればユーロ圏改革の取り組みを積極化させるべきだとの政治的な圧力が生まれるだろう。だからといって、英国がEUを離脱しようと残ろうと、それによって独仏の立場の違いが魔法のように解消されるわけではない。

英国がEU側から一定の妥協と引き換えに、ユーロ圏の統合促進を妨げないとの正式の意思を表明したのは間違いない。

とはいえ、まずはユーロ圏諸国こそがどうやって通貨同盟を深化させていくかの方法について足並みをそろえるべきだろう。

ユーロ圏11カ国が金融取引税導入問題でいまだに全面合意に達していないという事実は、意見統一がいかに困難かを如実に物語っている。

(Paul Taylor記者)

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