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主張/診療報酬16年改定/安心の医療が揺らぐばかりだ

厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)が、2016年度から実施する新たな診療報酬を決めました。診療報酬は診察、検査、手術、入院などの医療行為にたいし公的保険財政から医療機関に支払われる“医療の価格”です。安倍晋三政権は昨年末、社会保障費削減の一環として診療報酬総額のマイナス改定を決めました。その結果、診療ごとの報酬点数(額)でも、医療従事者と患者に多くの矛盾と困難を強いる内容にされています。安全・安心の医療を求める国民の声に逆らい、社会保障の制度破壊をすすめる安倍政権の姿勢は重大です。

苦難広げるマイナス改定

 診療報酬は、2年に1度改定されます。総額は予算編成のなかで政府が決め、個々の医療・薬価の報酬点数(1点10円)は中医協が審議し、決定する仕組みです。

 第2次安倍政権発足後、診療報酬の改定は2回目ですが、2回連続で改定率を実質マイナスに抑え込みました。とくに今回は10年ぶりに1%以上の大幅なマイナス改定(1000億円超の国費削減)です。その流れのなかで、個々の診療報酬の点数配分でも医療費削減を具体化・促進する「政策誘導」が強く打ち出されました。

 その一つが入院医療で、看護体制が手厚い「患者7人に看護職1人」(7対1)病床の削減方針を鮮明にしたことです。政府は「7対1」病床が“増えすぎて医療費を増加させている”として前回の診療報酬改定で削減方針を決め、これまでに1万床以上減らされました。しかし“まだ減り方が足りない”と、今回改定で「7対1」削減の加速策を盛り込んだのです。

 具体的には「7対1」病床を認める要件の厳格化です。入院患者に占める重症者比率を15%以上から25%以上へ大幅に引き上げました。重症者が基準を下回る病床は報酬減となり病院経営を圧迫します。収入確保のため軽症者の早期退院を無理に求めるケースも生まれかねません。行き場のない患者はどうなるのか。影響は重大です。

 「7対1」病床は、看護師不足などによる現場の疲弊が深刻化するなか、安心の看護体制拡充を求める国民の声を反映して実現したものです。安心の医療体制づくりに逆行する改定は許されません。

 政府は“入院から在宅へ”をすすめるとしていますが、地域の在宅医療を支える診療所や中小病院の基本的な診療報酬は、今回改定でも据え置かれたままです。

 大学病院など500床以上の病院に紹介状なしで初診した患者に5000円以上追加請求することも盛り込まれました。“大病院への患者集中を防ぐ”ためとしていますが、追加料金徴収による「患者抑制の効果」は証明されていません。むしろ低所得者の難病患者などが必要な医療から締め出される危険性も指摘されています。

医療の拡充求める声広げ

 新たな診療報酬は今年4月から実施されます。マイナス改定の影響が、医療現場や患者・家族に与える被害や弊害に歯止めをかけ、改善させていくことが大切です。

 医療の危機打開のために、患者の窓口負担の軽減策をはかりつつ診療報酬を抜本的に引き上げることが必要です。大企業向けの法人税減税中止や軍事費など財政の無駄を削るなどして、社会保障財源を確保することが急がれます。

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