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米国の模倣でないオープンイノベーションを!

海外の商品より売れる日本の商品をつくる

「GDPは何の略語か?」という質問にアイドルグループのメンバーが流暢な英語で正解したので、思わずテレビに目が行ってしまい仕事の手が止まった。2/19(金)に放送されたNHKのシブ5時というニュース番組の録画が再生されていた。

・10円で輸入された種芋
・農家が芋を育てて30円で菓子メーカーに売る
・菓子メーカーはポテトチップスをつくって80円で流通に売る
・流通はポテトチップスを100円で売る

さて、GDPにカウントされるのはいくらか?

流通の生産(100円 - 80円) +菓子メーカーの生産 (80円 - 30円) +農家の生産 (30円 - 10円) = 90円

これもアイドルグループが正解。オォー!

そして「安倍首相が表明したGDP600兆円を達成するにはどうしたら良いか?」という質問への回答が次のようなものだった。
  1. 関税をあげる
  2. 海外の商品より売れる日本の商品をつくる
  3. 工場を増やす
  4. 観光に力をいれる
  5. Sexy Zoneが売れる!!
  6. 自給率をあげる
  7. 外国人労働者をふやす!
オォォォー!全部が正解ではないが、すごい!

GDPの計算でキャスターがおかしな数字を答えていたので、仕込みではないと素直に受け取ることにする。Sexy Zoneというアイドルグループだ。高校の授業で習ったのだろうか。彼らが何歳ぐらいなのかは知らないが、大学受験の勉強をしているなら知っているのも当たり前なのかもしれない。
しかし、彼らでも「海外の商品より売れる日本の商品をつくる」ことができていないということに気づいている。「彼らでも」という表現は、日本経済などに関心がなさそうに思える若者たちでも、という意味で、それほど「海外の商品より売れる日本の商品をつくる」ことができていないことが、誰でもが認識している明白な事実だということだ。

日本の製造業とスタートアップの現状

リーマンショックとその後の円高で、一般消費者向けの製品をつくる日本の製造業は、それまでの勢いを完全に失ってしまった。金融緩和政策によって誘導された円安によって表面的には業績が回復したように見えるが、実はその間に、アイドルグループがGDPを上げるために必要なこととして挙げた「海外の商品より売れる日本の商品をつくる」力が完全に失われていた。多くの製造業は、生産のコストダウンや海外シフトに気を取られ、競争のパラダイムが生産の力からソフトウェアの力に急速に移りつつあることに気がつかなかった。
これまでハードウェアの価値の向上に集中してきた製造業にとって、 Webサービスやスマートフォンのアプリケーションなどは非常に不得手な分野に違いない。ソフトウェアというと、膨大な投資で開発運用する社内の総務関係や生産管理のITシステム、あるいは機器に組み込まれメカや電気の隙間を埋めるだけのファーム・ウェアと呼ばれるものしか思い浮かばない経営層も多いだろう。自社の事業にとっての、スマートフォンのアプリの重要性など想像もつかない。これは、IoT時代を生き抜こうとする製造業にとって致命的な問題だ。
製造業のイノベーションに必要なのは「アプリの力」
液晶のシャープもカメラ用センサーのソニーも、アップルのiPhoneの売り上げに頼って一時的に業績が回復したに過ぎない。iPhoneがクシャミをするだけで、日本の電子部品メーカーは風邪を引いてしまう。技術だけに頼った部品やハードウェア製品の消耗戦に勝ち続けることも非常に難しいだろう。

以下は、スタートアップについてのマックス・マーマーの手厳しい意見だが、筆者も日本のスタートアップの多くに同様の印象を抱いている。
起業のコストが劇的に下がり、まったく新しい層の起業家が会社を創ろうとしている。「取るに足らない会社」を始めようとする創業者は、10億ドル規模の会社を作ろうと目論む起業家とは違う。そのような創業者は世界を変えたいとは思っていない。彼らは家族を養ったり、車を買ったり、自由を得たりするために必要なお金を稼ぎたいだけなのだ。彼らは、情報経済社会における中小企業の経営者に過ぎない。ただテクノロジーのおかげで、これまでの店舗経営より効率的で収益性が高くなっただけだ。彼らはレストランや美容院を始める代わりに、多くのレストランや美容院で使えるクーポンアプリを作る。
ビッグアイデアの減少に歯止めをかける
一年ほど前に月刊Wedgeの「シリコンバレーがかえる ものづくりの常識」という特集のために、シリコンバレーでハードウェアのスタートアップを取材した。
シリコンバレーといえば、Google、Facebookに代表されるIT企業やソフトウェアが思い浮かぶ。しかし、いま第2のAppleの誕生を予感させる「ハードウェア・ルネッサンス」ともいえる動きがはじまっている。
しかしハードウェア・スタートアップには、ソフトウェア・スタートアップにはない難しさがある。
iPodやiPhoneの例を見ても、ビッグアイデアのプロダクト・マーケット・フィットには少なくとも3年はかかると考えたほうがいいだろう。その時間で、人々の思いを積み上げ、製品や連携するサービスに改良を加えて「構築 - 計測 - 学習」のサイクルを繰り返す必要がある。そして徐々に、その価値が人々に理解されていく。ハードウェア・スタートアップにとって、3DプリンターやEMSを利用できるようになったとはいえ、「構築 - 計測 - 学習」のサイクルを繰り返すには、会社設立時に集めた数百万円程度のシードマネーだけででは不十分だ。 最初の製品が売れなければ、次のサイクルのための製品を作るための資金を獲得することも難しくなる。
ハードウェア・スタートアップのジレンマ

日本の製造業のためのオープンイノベーション

米国では大企業がスタートアップを支援するコーポレート・ベンチャーキャピタルと呼ばれる取り組みが増えているという。それは単なる投資事業ではなく、大企業が保有する知的財産やバリューチェーンなどのアセットを提供し、新規事業の創出に成功したスタートアップとのパートナーシップによって自身のイノベーションをはかろうとするものだ。

日本でも、オープンイノベーションを推進しようとする活動が始まっているが、その多くは米国で行われている取り組みの形を真似たものに見える。

戦後の米国と日本の製造業はお互いに大きな影響を与え合ってきたが、決して同じ道を歩んできたわけではない。米国では戦後の資本主義経済の浮き沈みのなかで、人材の流動性や多くのベンチャーキャピタルが生まれてきた。米国という明確な目標があって、その目標に追いつき追い越すことに成功した日本の製造業は、かなり保守的になっていて「ものづくり」という成功体験から離れることができない。そこに米国式のオープンイノベーションを持ち込んでも、なかなか受け入れられないように思う。

これまで一般消費者向けの製品をつくってきた日本の製造業は、ビックアイデアへのチャレンジを諦めて、デバイス事業やBtoBのビジネスへのシフトしようとしている。さらには製造業からの退却をも模索しているようにも見える企業もある。しかし日本の製造業のハードウェアの力と、スタートアップのソフトウェアの力を合わせてビッグアイデアにチャレンジすることができれば、競争のパラダイムがソフトウェアの力にシフトした世界で「海外の商品より売れる日本の商品をつくる」ことができるはずだ。

それには米国の模倣でない、日本独自のオープンイノベーションの方法を考える必要がある。

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