記事

トランプ氏の連勝が共和党に意味するもの

 サウスカロライナ州予備選でのドナルド・トランプ氏の勝利は共和党に2つの問いを突きつけている。1つは戦術面に関する問題。もう1つは、同党の政策展望と統治哲学の根幹に関わる問題だ。

 まずは、米大統領選の序盤3戦で2勝したトランプ氏の候補指名獲得はもう止められないのかという問いだ。

 これには肯定・否定の両面から議論できる。サウスカロライナは次に予備選・党員集会を控える各州によく似ている。大半が南部の州で、保守的かつ福音派の影響力が強く、全米平均よりも世帯収入が低いといった点などだ。トランプ氏がサウスカロライナで勝利できるなら、3月1日のスーパーチューズデーでは規模の大きな複数の州で勝利する可能性が高い。

 だがその一方で、サウスカロライナでのトランプ氏の得票率は開票初期の段階で33%程度だった。これはニューハンプシャー州での得票率や、全国規模の世論調査の集計結果をやや下回る。トランプ氏のライバルたちにしてみれば、これは同氏の支持率が頭打ちになったとの希望が持てる水準だとも言える。

 仮に共和党候補が2、3人に集約されれば、30%前後の支持率ではトランプ氏が勝利するに十分とは言えない。候補者の集約は始まりつつあるが、そのペースは不透明だ。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は20日に撤退を表明したが、元神経外科医のベン・カーソン氏やオハイオ州知事のジョン・ケーシック氏は今のところレースに残っている。

 打倒トランプ氏は企業寄りの政策を標榜する共和党主流派らの願いだ。彼らはトランプ氏では本選に勝てないばかりか、党全体に幅広くダメージを与えることにもなるとみている。

 だが、トランプ氏が指名候補になろうとなるまいと、今回の勝利は第2の問い、つまり共和党にとってより根本的な問題を提起する。それは、選挙戦を成功させる上で重要なブルーカラー有権者層のニーズと要望に共和党はどう応じるのかという問題だ。

 ブルーカラーの有権者は、下院や多くの州の知事選で共和党候補が勝利する上で、中核を占める支持層となってきた。米南部や南東部のほか、ペンシルベニアからノースダコタへ至る北部の州では労働者階級の有権者は民主党を見限り、大勢の共和党候補を下院に送ってきた。

 サウスカロライナの結果に、こうした有権者の多くがトランプ氏を自分たちの代弁者だとみていることが表れている。主要メディアが報じた出口調査によると、同州では大学の学位をもたない有権者の10人のうち4人近くがトランプ氏を支持した。高卒以下の有権者の間では、トランプ氏の支持率はさらに大きい。他の共和党候補と比べると、これは著しく大きな割合だ。

 また同州予備選に関する調査結果によると、45歳以上と低所得層の間でトランプ氏の支持が最も高かった。同氏の支持者は経済的に最も不利な立場にある人々が多い。彼らは反移民・反自由貿易を訴え、経済問題に対する共和党内部の貧弱な指導力を嘆くトランプ氏の言葉に説得力があると考えている。

 トランプ氏を支持することで、ブルーカラー有権者は共和党の多くの指導者や同党と歩みを共にする企業の多くが望んできたものとは、はるかに異なる方向に同党を引っ張っている。つまり、追加的な国際貿易協定の締結や移民制度の自由化から離れつつあるのだ。共和党指導部は移民制度の自由化でヒスパニック系をはじめとするマイノリティーの票を集められると考えている。

 共和党にとってもう1つの課題は、党が打ち出している経済・社会政策の多くの項目にほとんど注意を向けない、もしくは拒否するなかでトランプ氏が有権者の支持を得ていることだ。

 トランプ氏は、低所得者層をヘルスケアの枠組みから排除すべきではないと主張する。これは、「オバマケア(医療保険制度改革法)」の破棄という共和党の政策哲学の要を同氏が本気で考えているのかどうか、疑問を投げかけている。同氏は共和党の社会的保守派が重要な議論だと考える中絶をはじめとする社会問題にはほとんど触れないものの、予備選の結果によると、サウスカロライナの福音派の有権者から支持された。

 トランプ氏の支持者は実際、あらゆるイデオロギー的なレッテルを受け付けないようだ。

 トランプ氏の得票率は、「非常に保守的」を自認する有権者の間ではテッド・クルーズ氏を下回り2位となったが、「いくらか保守的」な有権者と中道派の間ではトップとなった。

 トランプ氏の支持者はイデオロギーで定義されるのではなく、階級や経済的不安、そしてトランプ氏自身の並外れた個性に魅了されているという点で特徴づけられる。ローマ法王フランシスコとの言葉による応酬や、ジョージ・W・ブッシュ前大統領による米同時多発テロ対応への非難にも関わらず、サウスカロライナで勝利したことによってそれが明らかになった。

 共和党サイドにとって今後数日間は、ブッシュ氏以外に何人がサウスカロライナの結果を撤退のサインととらえるか、また党がトランプ氏に代わる候補者の支持でまとまっていくかどうかに焦点が絞られることになるだろう。この点で、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが共同実施し、先週発表した世論調査がヒントになる。

 世論調査では共和党予備選に参加予定の有権者を対象に、最も支持する候補者だけでなく、2番目に支持する候補者についても尋ねた。その結果、候補者が3人に絞られるシナリオが見えてきた。

 今後レースから撤退するだろうとみられる候補者の支持を、他の候補者へ配分し直すと、トランプ氏の支持率はどの三つ巴の組み合わせでも約30%となり、いずれのケースでもクルーズ氏に抜かれている。

By AARON ZITNER

あわせて読みたい

「ドナルド・トランプ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    わいせつ問われた医師に無罪判決

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    ジャニーズ 戦略誤り厳しい局面

    大関暁夫

  3. 3

    大川長男 脱会原因は清水富美加

    文春オンライン

  4. 4

    異例の都ファ欠席 深夜0時議会に

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  5. 5

    トヨタの中条あやみCMは大正解

    永江一石

  6. 6

    日本企業の英国撤退 次は韓国か

    早川忠孝

  7. 7

    肉食べるな 配慮押し付ける社会

    文春オンライン

  8. 8

    橋下氏「高野連の言い訳許すな」

    橋下徹

  9. 9

    私が傷つかない=正義の危うさ

    紫原 明子

  10. 10

    不摂生後悔…堀ちえみガンと闘う

    渡邉裕二

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。