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バブルとマネートレイン

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今日はバブルとマネートレインのお話をさせていただきます。

これまでに何度も、バブルの話とか、マネートレインの話をしてきましたが、記事があっちこっちバラバラになってしまっていて、リンクする時にもちょっと不便なので、まとめを書いてみようかなと思いまして。


まず、そもそも価格がどうやって決まるのかという話から。

金融市場で取引されている、株や債券、通貨、REIT、デリバティブ、コモディティなどの金融商品はもちろん、果ては不動産や絵画やレア物まで、モノの値段というのは買い手の買いたい値段と、売り手の売りたい値段、の合致したところで決まります。あるものを100円で買いたい人、90円で買いたい人、80円で買いたい人がいて、売り手のほうには120円で売りたい人、130円で売りたい人、140円で売りたい人がいる。この状態では取引は成立せず、売買できないわけですから売買価格も決まりません。そこに、120円でも買う!という人が現れると120円で売りたい人との売買が成立し、120円という売買価格が生まれます。もちろん、100円でも売りたい!という人が現れてもOKです。これを需給バランス(需要=買いたい人、供給=売りたい人、のバランス)と言います。

金融商品や不動産といったものには、本来、「絶対的な価値」というものはありません。今、100円の売買価格が成立しているものは「絶対的な価値」として100円の値段があるというわけではなく、明日には100円の価値はないかもしれないのです。その「確からしさ」はもちろんモノによって変わってきます。例えば国債は政府が償還日になったら額面にある金額を返してくれると約束してくれているものですが、そんな国債でも値段は変わります。もちろん、投資家が要求する利回り水準の変化によって国債の価格が変動することが多いわけですが(より高い利回りを要求=債券価格下落、低い利回りでもOK=債券価格上昇)、信用度合いによっても、需給バランスによっても国債の価格は動きます。同様に、というよりももっと不確かなもので例えれば、100円で取引されている株式はいつまでも絶対に100円というわけでもなければ、100円という絶対的な価値があるわけでもありませんし、5億円で取引が成立した土地だって絶対に5億円の価値があるというわけでもなければ、1年後も5億円で売れるというわけでもありません。

更には、価値を測るモノサシとなっている「お金」の価値自体もインフレやデフレによって変わってしまいます。極端な例ですが、1億円だった土地が10年後に1億円のままの価格を保っていたとしても、インフレが進行して物価が10倍、お金の価値が10分の1になっていれば、1億円という価格を保っていたその土地の価値は実質的に下落していることになります。
(もちろん、インフレが進行すれば土地の値段も上がるのが普通ですが、ここで言いたいのはそういうことではなくて1億円というモノサシの目盛自体が変わってしまうこともあるという話です。釈然としない、気持ち悪い、という方は「土地」を「債券」に置き換えて読んで頂いても結構です。)


そんな不安定な「価格」ですが、「本来的な価値はこのくらいのはずだ」「本源的な価値としてこのくらいの価格はつくはずだ」という考え方もあります。こうした考え方を使うと便利なことも多いので、結構いろんなところで使われます。例えばこんな会社、A社の株があったとします。

【A社】
① 発行済株式数:10株
② 利益:10万円
③ 1株当り利益:1万円(②÷①)
④ PER:20倍
⑤ 株価:20万円(③×④)
⑥ 配当性向:100%
⑦ 1株当り配当:1万円(③×⑥)
⑧ 配当利回り:5%(⑦÷⑤)

株の取引に慣れている人であれば、PERが20倍だし、配当利回り5%なので、そんなに極端に「割高」でも「割安」でもないだろう、と感じるのではないでしょうか。PERやPBR、配当利回り、といった指標は銘柄間の「割高」「割安」を比較することができるだけでなく、「本来的な価値」とか「本源的な価値」とか「妥当な価格」はどのくらいなのかを考え、現在の価格がそれに対して「割高」なのか「割安」なのかを考えるアプローチでもあります。

銘柄間の比較というのは、ここに全く同じ経営を行う別の会社B社があって、そのB社の株はこんな感じだったとします。

【B社】
① 発行済株式数:10株
② 利益:10万円
③ 1株当り利益:1万円(②÷①)
④ PER:5倍
⑤ 株価:5万円(③×④)
⑥ 配当性向:100%
⑦ 1株当り配当:1万円(③×⑥)
⑧ 配当利回り:20%(⑦÷⑤)

B社の株はPER5倍、配当利回り20%ですから、A社の株よりずっと「割安」に見えます。これが銘柄間の比較です。

ではここで、もし、A社の株価が10倍になったとしましょう。20万円だったA社の株価は200万円に。これは割高になったのでしょうか?あるいは「妥当な」株価上昇なのでしょうか?これを判断するにはもう少し数字が必要ですよね。こんな感じだったらどうでしょうか。

【株価が10倍になったA社】
① 発行済株式数:10株
② 利益:100万円
③ 1株当り利益:10万円(②÷①)
④ PER:20倍
⑤ 株価:200万円(③×④)
⑥ 配当性向:100%
⑦ 1株当り配当:10万円(③×⑥)
⑧ 配当利回り:5%(⑦÷⑤)

株価は10倍の200万円になりましたが、PERは20倍のまま、配当利回りも5%のまま、で変わりません。ということは、株価は上がったものの割高になったわけではなく、特に割高にも割安にもならず、A社の株の「本質的な価値」が上がった分を株価が反映しただけ、と言えそうです。

では、こんな感じだったらどうでしょうか。

【株価が10倍になったA社の別のケース】
① 発行済株式数:10株
② 利益:10万円
③ 1株当り利益:1万円(②÷①)
④ PER:200倍
⑤ 株価:200万円(③×④)
⑥ 配当性向:100%
⑦ 1株当り配当:1万円(③×⑥)
⑧ 配当利回り:0.5%(⑦÷⑤)

株価は先ほどの例と同じく10倍の200万円になりましたが、利益は全く増えていないため、PERが跳ね上がっています。なんとPER200倍、利益の200年分を株価が織り込んでいることになります。配当利回りも低下して0.5%。配当分だけで株の投資金額を回収しようと思ったら200年かかってしまいます。A社の利益も配当も全く増えていないのに株価だけが上がって、PERは上昇、配当利回りは低下、これは単に割高になりながら株価が上がっただけで、A社の株の「本質的な価値」が上がったわけではないと言えそうです。こんな馬鹿げたことが実際に起こるのでしょうか。残念ながら実際に起こります。もちろん逆も然りで、リーマンショックの時などはあらゆる株が投げ売りされ、利益が激減した会社の株と、利益がめちゃくちゃ伸びている会社の株が全部一緒くたに売られて、物凄く割安な株がそこら中に落ちていました。

こういう事態をよく発生させるのは、取引規模や市場規模に比して大きな資金の出や入りがあった場合です。

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