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「歩きスマホ」もはや笑い事ではない

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ラッシュの時間帯に巨大なチューバッカが立っていても、スマホに集中している通行人は簡単にそれを見逃してしまう(英語音声のみ)Photo/Video: Emily Prapuolenis/The Wall Street Journal

 マニー・フィオリさんの仕事は、スマートフォンが死亡事故を起こさないようにすることだ。同氏はサンフランシスコにある私のオフィスに近いガレージの出入口に立ち、画面に集中するあまり交通の往来に気づかない歩行者と自動車がぶつかるのを防いでいる。

 フィオリさんは「人々は最近、(スマホに)没頭しすぎている」と話す。同氏はビルの警備員で、叫んで指示を出すばかりか、両手を広げて自動車と歩行者を止めることだってある。

 朝のラッシュを車道から見守ることで、スマホ中毒の恐怖を測定できる。先週には見上げることすらしない歩行者が1時間に70人いた。スマホでテレビ番組を見ている人もいたし、しかめっ面でメールを打っている人も多かった。車にぶつかるのを止めてくれたフィオリさんに礼を述べたのは、その中の5人だった。

 私も潔白ではない。私のスマホにはネコと争ったかのような傷がついている。実はテキストを打ちながら壁にぶつかったのだ。

 こうした「歩きスマホ」現象が発生した当初、それは一種のジョークだった。動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」には、メールを打ちながらフラフラ歩いている人が噴水に落ちるといった動画が満載だ。ドイツではこうした人々のことを「smombie」、つまりスマホとゾンビをかけ合わせた言葉で呼んでいる。

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昨年11月にストックホルムに掲げられた、スマホユーザーに注意するよう運転手に警告する標識 Photo: Jacob Sempler

 しかし、自分自身から自分を助けるために、ガレージに警備員を雇わなければならない状況にまでなれば、歩きスマホはもはやジョークとは言えなくなる。

 これはひとつの公共安全問題で、中毒症状だ。スマホは私たちの注意を引くすべを習得してしまった。少なくとも、これはスマホの構造上の欠陥だ。この問題への対処でどのような責任がIT(情報技術)企業に要求されるかが問われる時代になっている。

 米消費者製品安全委員会のデータを探ったところ、歩きスマホをしていた人が救急救命室に運ばれた回数は2010年から14年までに124%増加し、06年からは10倍に増えたことが判明した。

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歩きスマホをしていた人が救急救命室に運ばれた回数の推移。2010年から14年までに124%増加し、06年からは10倍に増えている Photo: The Wall Street Journal

 一部の研究者によると、携帯電子機器が原因で負傷した歩行者の割合は1年間で全体の10%に上り、同じ理由で6人が死亡したという。運転中にスマホを操作すればさらに深刻な危害につながるが、歩きスマホによる事故も一般的になってきている。

 米国家運輸安全委員会の委員長を務め、現在は非営利団体「米安全性評議会(NSC)」の最高経営責任者(CEO)であるデボラ・ハースマン氏は、こうした事故について「衝突や打撲のことを言っているのではない。肉離れや脱臼、骨折した人の話をしているのだ」と述べた。

チューバッカに気づくか

 スマホの登場で、私たちは複数の仕事を同時にこなせると思うようになった。ただ、今やスマホが私たちの働きに害を与えていることが証明されている。スマホを使うことで私たちの歩き方に変化が出てくる。スピードが落ちるか、道からそれてしまうのだ。

 今週、私は同僚に米国の映画「スター・ウォーズ」に登場する、毛むくじゃらのチューバッカの格好をしてもらい、朝のラッシュの時間帯にサンフランシスコをうろついてもらうよう頼んだ。そして、私はスマホをのぞき込んでいる歩行者に話しかけ、伝説的なチューバッカが歩いているのに気づいたか尋ねてみた。多くが気づいていなかった。

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米カリフォルニア州ヘイワードに掲げられた、歩きスマホをしている歩行者に警告を発する標識。「頭を上げよう 道路を横切る際は」「そしたらフェイスブックをアップデートしよう」と書かれている Photo: Robert Galbraith/REUTERS

 米ウェスタンワシントン大学のアイラ・ハイマン・ジュニア教授(心理学)によると、これは「非注意性盲目」と呼ばれている。同氏は2008年に私と似たような実験を行い、歩行者に一輪車に乗った道化師に気づいたかを尋ねてみた。するとスマホをしていない人の半分がそれに気づいたと述べたが、歩きスマホをしている人ではたった4分の1だった。

 ハイマン氏は、「人々は気づいたとの印象を持っているが、どれほど見逃しているかについては分かっていない」と指摘した。

 強い意志を持つ人でさえ、騒々しいガジェットに影響されやすい。ガジェットは新しいことを見つけたり、社会に加わったりしたがる脳の欲求に応えるよう、完全に作り込まれているからだ。受信メールをどれほど長く無視できるか試してみるといい。

 カンザス大学のポール・アチリー教授(心理学)は、「これはFOMO、つまり取り残される不安のことだ」とし、スマホが「あなたの注意をハイジャックしようとしているのだ」と述べた。

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