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「憲法改正」国民の理解増す ―現実論的解釈できない法学部教授会の劣化― 屋山太郎

理事・政治評論家 屋山太郎

 今年の建国記念の日は、全国各地で盛大な式典が行われた。これは5、6年前にはない風潮で、「憲法改正」の国民的運動が盛り上がりをみせている証拠なのだろう。片方で「憲法改正反対」のために開催している会もあったが、一見して差がわかるほど低調である。

 どうやら護憲派も末期を迎えているのではないか。北朝鮮に核やらミサイルで脅されている時に、「非武装でよし」とする論調では国民を説得できない。憲法改正ないし、“現実論的解釈”を加えざるを得ない社会状況になっていることを国民も感じているのだろう。

 そもそも憲法9条第2項が「非武装を打ち出した項目」だと主唱したのは東大の宮沢俊義教授である。宮沢氏は戦前、欽定憲法解釈の第一人者だったそうだが、戦後、法についても最大の権威者となった。宮沢氏は当初、戦後憲法についても「帝国憲法でもポツダム宣言に対応可能」と言っていたが、マッカーサーの意向を知るや、“平和憲法”派となり、成立後はその守護神となった。この間の変節は江藤淳氏が探り出し、炙り出している。

 宮沢氏は憲法第1条の天皇は「日本国の象徴であり日本国民の統合であって」についても「この条文では天皇を元首ということはできない」と述べ、東北大学教授の清宮四郎氏は「元首の名に値するものではない」と述べている。この解釈を引き継いで、日本法学協会の解釈は「天皇を元首とみるのは正当でない」というものである。読売新聞、産経新聞が独自に出した憲法草案では共に「天皇は元首である」と明記されている。

 宮沢氏の発想は日本統治の第一人者は「天皇ではなくてマッカーサー」との理解の上に立った土下座の解釈の結果だと言われている。

 9条第1項の「平和主義」には誰も異を唱えていないが、第2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」をどう読むか。現実政治家は「前項の目的」たる平和主義を達するために「戦力」を持たず「交戦権」も認めないとは解釈しない。「平和」が危くなった時にどう対応するかとは書いてないが、現実の判断として平和を達するために警察予備隊を作り、自衛隊に発展させてきた。今はその平和が更に脅かされて、国の存立が危ういところにきている。「集団的自衛権の行使」が、延長線上にあると解釈するのは当然だろう。

 戦後の国際情勢が様変わりしたのに、条文解釈は変えない。改憲にも反対というのは正に亡国の徒だ。法学世界は何故こういう馬鹿ばかりかと原因を追究していくと、これまでの教授会制度に行きつく。東大法学部の教授は教授会の多数決によって採用される。現職の教授が後任の教授を選ぶ時、自分の子分か同じ学派の人しか選ばない。自分を超えていくような大学者は敬遠する。法学部の教授会が劣化してバカばかりになったのも不思議ではない。その証拠が護憲論者9割の世界だ。

(平成28年2月17日付静岡新聞『論壇』より転載)
屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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