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財政赤字ゆえ貧困層の医療切り捨て

 米国には連邦・州が共同負担、州運営の低所得者向けの医療保険制度・メディケイドがあるが、最近財政赤字に悩む数州は、給付の縮小に踏みきっている。アリゾナ州は給付削減に加え、新規受給者制限を8日から実施。10万を超える貧困層が影響を受けると予想されている。

 メディケイド受給者は、全米で50万人を超えるといわれている。受給申請の際所得や資産が審査され、給付条件など州によって異なっている。

 共和党ジャン・ブリュワー州知事は数か月にわたって、給付の縮小、受給者制限を検討し、連邦政府に許可を求めてきた。この策に抗議する民間団体は、州最高裁にストップをかけるよう働きかけてきたが、連邦政府からも最高裁からもゴーサインが出され正式に実施される運びとなった。

 今回の給付削減の対象には、臓器・骨髄移植手術予定者がいる。「州にはお金がない」という理由で、保険適用を拒否されている。

 このような給付カットは、すでに10以上の州が実施しているが、アリゾナではもう一歩踏み込んだ策に出た。要扶養児童のいない成人の新規受給制限である。現在制度下にいる者は今後も引き続き受給できるが、新たな受給申請は受け付けられない。

 この一部弱者を切り捨てることで、アリゾナ州は1年で1億9千万ドル(約150億円)が浮くと予想している。

 国民皆健康保険制度のない米国で、貧困層が多額の民間医療保険を払えるわけはなく、扶助なしに高額な医療費を払うのは不可能に近い。高齢者には比較的安価で加入できるメディケアーとよばれる公的医療保険制度があるが、65才に満たない者はこの制度にも入れない。

 また制度や規則のはざまで、身動きできなくなっている人もいる。同州南西部ユマに住むスティーブン・スチーブンソンさんだ。

 地元紙ユマ・サンによると、スチーブンソンさんは長く心臓病を患いメディケイドの受給者となった。09年の心臓手術の際、医療費は全額州が負担した。しかし、健康状態は改善せず、最近医師の警告を受けて仕事をやめ、社会保障制度から年金を受け取るようになった。

 その年金額は以前の収入より多くなり、メディケイドの受給資格の所得上限額・月903ドル(約73000円)を超えてしまった。超えた金額は12ドル。結果受給資格が喪失した。

 よって、スチーブンソンさんには、医療保険もなく州からの扶助もない。収入が増えたとはいえ、年金の915ドルでは、家賃、食費、ガソリン代を払えば、あと医師の診察料や月400ドルの医療費を払う余裕はない。


 最近発表された世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査では、約6割の市民がメディケイドの医療扶助は従来通りであるべきだと回答している。

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