- 2016年02月14日 15:09
小さな嘘と事実誤認が毎日繰り返されると
ベルト着用の跡、乗客13人中1人だけ 長野バス事故
朝日新聞デジタル 2月14日
長野県軽井沢町でスキーツアーの大型バス(乗客39人)が道路脇に転落した事故で、亡くなった乗客13人のうちシートベルトを着用していたとみられる痕跡が体に残っていたのは、1人だけだったことが捜査関係者への取材でわかった。
バスの車内ではシートベルト着用を指示するアナウンスがなかった、という証言もあり、長野県警はバス会社の幹部らから詳しく事情を聴いている。
捜査関係者によると、事故車両の座席には、腰にベルトを巻いて体を固定する2点式のシートベルトが取り付けられていた。乗客13人のうち、下腹部に皮下出血したとみられる痕が帯状で残っていたのは、男性1人だったという。
検視に立ち会った軽井沢病院の中村二郎副院長によると、犠牲者の中には頭や首を骨折している人が多かった。ベルトを着けていなかったことが、こうした傷につながった可能性もあるという。中村氏は「就寝時間帯の事故だったため、手でかばうことができず、頭や首に致命傷を負ったのではないか」と話す。
2008年施行の改正道路交通法で、路線バスをのぞくすべての車で、運転手は同乗者にシートベルトを着用させることが義務化された。一方で、複数の乗客が「シートベルト着用を指示する車内アナウンスはなかった」と朝日新聞の取材に証言している。
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事故の対策といっても、その方法はいくつかある。
事故そのものを発生させない方法もあれば、事故があっても被害を最小にする方法もある。
タイタニック号は、船を沈没させない方法を用いて建造された。そのような船では救命ボートが要らないと考えられたし、当時はそのように船を不沈化することで救命ボートを減らすことがむしろ推奨されたとか。しかし結果的にはタイタニック号は沈んでしまい、多くの乗客が死亡した。実際に事故が起きたときに被害を最小限にする方法を考えなかったことで発生した悲劇であるとも考えられる。
先日発生したバス事故であるが、運転手以外は解剖されなかったようだ。御嶽山の噴火の時もそうだったが、日頃からいい加減に死因を診断し、いい加減な対応をしてきたことに日本は慣れすぎてしまっている。きちんと死因を診断していれば、災害や事故に対する対策も変わってくる可能性があるのに、日頃から虚偽や事実誤認に囲まれ、それが当たり前になってしまっているので、そのような発想が持てないのだ。
シートベルトをしていたのか、していないのか。遺体を外表から観察しただけではなかなかわからない。腹部は高エネルギー損傷があっても見た目に異常を残しにくい場所であることは救急現場では常識だ。腹部の周りにシートベルトをしていても痕跡は残りにくい。解剖をして腹部の皮下に点状出血があるのか、ないのかといった確認をしないとなかなか判断できないだろう。しかも腹部の皮下の点状出血はCTなどでも確認できない。
この事故の場合、バスの天井がへしゃげたことで被害者が頭部を損傷して死亡したのか、被害者がシートベルトをしていないから車外に放出され車に押しつぶされたのか、しっかり見極めるべきだろう。今後同様の事故が発生した場合、被害者を最小にするためには、その結果次第で対策が全く異なってくると思われる。
ほかの国では、ほとんどがより詳細に遺体を検証されたと思われるし、報道もその点に気付くべきなのだが。