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福島の事故を受け、米国原発見直し

 近年米国では反原発ムードは薄らぎ、政府内では党派を超えて原子力エネルギーを推進する動きが広がってきていた。その中で起こった福島の原発事故は、米国にも大きな衝撃を与えた。議員・市民レベルで原発見直しを求める声は上がってきている。福島第一原発と同じタイプの原子炉をもつバーモント州ヤンキー原発前では、集会が開かれ人々は日本への支援と祈りをささげた。

 ペンシルベニア州スリーマイル島で起きた原発事故は、全米に反原発運動を広げ、政府も原発建設に臆病になってきた。それから約30年、中東原油に依存せず、国内でのエネルギー生産への気運が高まってきた。2001年の同時テロも、その機運に拍車をかけた。

 現在米国で104基の原発が稼働し、国内電力の約20%をまかなっている。オバマ大統領は、共和党と足並みを揃えて原発建設に力を入れてきた。現在20の建設申請が米原子力規制委員会(NRC)に出されている。3基が建設予定で、中でもオバマ大統領はジョージア州の2基に、今年2月80億ドル(約6500億円)の融資保証をしている。

 しかし、福島での事故はこの勢いにブレーキをかけたようである。NRCのヤツコ委員長は、「国内原発は日本に起こった災害のタイプに対応できる」と強気な姿勢を見せたが、米国内での原発の安全性を問う声は高くなっている。

 その懸念の一つにあるのが、施設自体の老朽である。NRCによると、104基の内の半数は建設されてから30年以上経つ。さらに、その内の23基は、福島の原発と同じタイプのゼネラル・エレクトリック社の沸騰水型原子炉マーク1を使用している。

 バーモント州のヤンキー原発も、このマーク1を使用している。ヤンキー原発は、2012年に操業終了予定であったが、10日に20年の更新許可を得た。しかし、昨年放射線漏れを起こしたこともあり、州議員・市民団体から更新を見直し閉鎖すべきという声が上がっている。

 地元ブログ「バレー・ポスト」によると、20日には600人以上が、ヤンキー原発の前で反原発集会を開き祈りをささげた。主催は「原子力公害ニューイングランド同盟」、「安全・グリーン運動」、「市民の意識ネットワーク」。この平和の祈りは、福島で放射能の危険性と隣り合わせにいる人々との連帯・支援を示している。

 また環境・原子力監視団体「憂慮する科学者同盟」(UCS)は、昨年14基の原発で安全性に問題があったというレポートを発表し、NRCの監視体制を批判した。

このように、議員・専門家・一部市民の間では、福島の事故は原発見直しになるきっかけとなっているようだ。広がる不安の声に対し、オバマ大統領は、「米原発の安全性を強調」しながらも、「原発施設の包括的見直しを考える」としている。とはいえ、原子力エネルギーの重要性をあらためて強調した。

 米連邦緊急事態管理局(FEMA)によると、米国では300万人が原子力発電所から16キロ以内に居住しているという。人為ミスというスリーマイル島事故での「原発安全神話」は崩れたにもかかわらず、30年経った今も、多くの人が危険と隣合わせに住んでいる。

 しかし、危機感は一般に薄いようである。筆者の住むアリゾナ州には、米国最大のパロ・ヴェルデ原発が砂漠の真ん中に立っている。無視することができない程の大建造物群であるが、住民の間でこの原発が話題に上ったことはない。その安全性を信じきっているのか、触れたくないのか。あえて住民に尋ねると、「そうよね、誰も話題にしたことがないね」と口をそろえて言う。

 パロ・ヴェルデ原発が出しているプロモーションDVDを見た。大まかに施設を紹介し、それぞれの部署の従業員が現れ、いかに安全かと繰り返す。しかし、どれだけの大災害に耐えうるかの説明はない。

 一部活動家は原発の恐怖を真剣にとらえているが、一般市民には、原発事故は起きるまでテロ同様に考えられているようだ。「テロは起こるかもしれない。でも、まずうちの町では起こらないだろうね」という安易な考えである。

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