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フリースピーチvsヘイトスピーチ

 2日、カンザス州教会の「言論の自由」訴訟判決がなされた。最高裁は、戦死兵の葬儀近くで集会を開き、差別・過激的にやじってきた教会側の言論は、憲法修正第一条で擁護されるという判決を下した。

 カンザス州トペカのウエストボロ・バプテスト教会は、同性愛者へのヘイトグループ(差別扇動集団)として知られている。教会グループは、同性愛に寛容な姿勢を示している米軍を批判。イラクやアフガニスタンで戦死した米兵は、神からの罰を受けたと主張、全米をまわり戦死兵の葬儀近くでピケをはり、同性愛抗議集会を行ってきた。プラカードには、「神はお前を憎んでいる」「神はホモを憎んでいる」「お前は地獄へ行く」といった言葉が見られる。

 06年にイラクで戦死したマシュー・スナイダー海兵隊下士官の葬儀にも、フェルプス牧師率いる教会グループは現れた。スナイダー下士官の家族は、葬儀を妨害され精神的苦痛を与えられたと訴訟を起こし、地方裁判所・連邦控訴裁判所を経て、今回の最高裁判所の判決に至った。

 ジョン・ロバーツ裁判長は、判決文の中で「(教会側の)言葉は、人々に大きな苦痛を与え得る」としながらも「その苦痛に反応して、話し手を罰することはできない。公的な論争の息の根をとめることのないように、たとえ人を傷つけるような言葉であっても、言論の自由を守るという姿勢を国は選んできた」と述べた。

 憲法修正第一条の専門家は、今回の判決は先例を作ったと言う。判事はスナイダー海兵隊下士官の家族の悲しみに反応しながらも、憲法修正第一条の根幹といえる「言論の自由」を捨てることをしなかった点で、いい判決だと認めている。

判決後ウエストボロ教会は、今後抗議集会には、従来の4倍のメンバーを出席させると意気込んでいる。一方、スナイダー下士官の家族は、「この法廷は、国のため戦場へ行き、遺体となって戻ってきた者への敬意も示さないのか」と憤りを表した。

 米国では、言論や表現の自由は公の議論を守るために必要であると考えられ、言論の内容が差別的であるからといって規制することは避けられる。リベラル・保守の集会でも、あげられるプラカードの中には差別的言語が多々見られる。

 確かにウエストボロ教会側は、個人の葬儀近くとはいえ、道路など公の場で集会を行っている。プラカードには、特定の者の名前は書かれてはいない。しかし、フリースピーチとはいえ、同教会が好んで使う言葉はヘイトスピーチと呼べるものである。

 たとえ米軍の方針に反対だとしても、息子を失って悲しみにくれる家族に「地獄へ落ちろ」などといった言葉を見せつけたり発したりすることは、社会的常識の範囲を超えている。

 「アメリカはフリーな国。フリースピーチは民主主義の要」といった言葉も耳にする。しかし、相手を思いやることなく、自分の好きなことを述べてもいいということではない筈だ。

 生活の中で、ヘイトスピーチは氾濫している。憲法で擁護されたとしても、相手にもたらす痛みを想像せずただ憎悪をまき散らす行為は、社会的に認められていいわけはない。多民族・多宗教国家であるからこそ、互いに敬意をもって接することが肝要ではないだろうか。ヘイトスピーチとフリースピーチを混同する風潮が、増長されるのではないかと懸念する。

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