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子どもの貧困対策は国民全体の利益に

国会で、2016(平成28)年度予算案の審議が進んでいます。論戦の中で焦点の一つとなっているのが、子どもの貧困対策です。単に当事者だけの問題ではありません。日本の将来にも大きく関わる、国民的な課題です。日本財団がまとめた報告書「子どもの貧困の社会的損失推計」をもとに、考えてみましょう。

政府の統計でも、全世帯平均と比べ、生活保護世帯では、高校進学率(全世帯98.6%、生活保護世帯90.8%)や大学・専門学校等進学率(各73.3%、32.9%)が低く、逆に中卒就職率(各0.3%、2.5%)や高卒就職率(各17.3%、46.1%)が高いことがわかっています。もちろん、早く社会に出て仕事をしたいというのも一つの人生の選択ですが、意欲や能力はあるのに、家庭の経済的な事情で進学を諦め、就職を選んでいたとしたら、問題です。高校中退率が高いのも(各1.7%、5.3%)、家計のためにアルバイトをして勉学に力を入れられないといったケースが少なくないことも推測されます。

進路選択を迫られる時点の問題だけではありません。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の分析調査でも、家庭の所得と保護者の学歴という「社会経済的背景」(SES)により、子どもの学力も左右されることが明らかになっています。家庭の貧困によって子どもの低学力が生み出されたとすれば、学力面で進学を諦めたとしても、必ずしも本人の能力の問題とは言い切れないでしょう。                    

報告書では、(1) 生活保護世帯 (2) 児童養護施設 (3) ひとり親家庭……の子どもの進学率・就職率等が、現状のままの場合(現状シナリオ)と、教育プログラムを受けることによって非貧困世帯と等しくなる場合(改善シナリオ)から、を推計しました。すると、正社員数が1割程度増加し、無業者数も1割程度減少するなどして、対象となる子どもが64歳になるまでに、改善プログラムでは所得が2.9兆円、税・社会保障の純負担も1.1兆円アップするといいます。逆に言えば、貧困対策を現状のまま放置すれば、この数字分が「社会的損失」となるわけです。同財団では、児童手当の予算額は同じ年齢層の子ども当たり約1,500億円であることを考えれば、貧困対策は十分に効果のある「投資」だとしています。

ただでさえ今ある仕事は10年後に半数がなくなるという推計もあります。どの子にとっても、教育・訓練の重要性は高まるばかりです。ましてや、生まれながらにして不利な環境に置かれる貧困家庭の子どもへの対策を放置していてはいけません。

政府も、2013(平成25)年に定めた「子どもの貧困対策法」に基づき、翌年には「子供の貧困対策大綱」を閣議決定しましたが、改善の数値目標などは定められませんでした。現在の予算案や政策で本当に十分なのかどうか、エビデンス(証拠)に基づく精緻(せいち)な議論を期待したいものです。

(筆者:渡辺敦司)

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