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現場に広がる担い手不足・高齢化/安さ重視の風潮を脱し、品質重視社会へ

痛ましいバスの事故が再び起こってしまった。多くの若く尊い命が奪われ、胸が張り裂ける思いだ。事故の直接的な原因は調査中だが、私はその背景に、わが国の社会経済が現在直面している構造的な問題があると考えている。

建設現場2014.jpg

まず第一の問題は、現場の担い手不足、高齢化だ。バスやトラックの運転手のほか、自動車整備士やパイロット、建設業の技能労働者(職人)、医療や介護、電力の分野などでも、現場で専門技術をもって働く人手が不足している。人が足りないだけでなく、若い人が入職してこないため、高齢化も急速に進んでいる。例えば建設業の現場では、29歳以下が約1割に対し、55歳以上は約3割にも及ぶ。現場での仕事は体力が必要となるし、悪天候や深夜でも働かなければならない場合もある。過酷な勤務環境で、高齢者ではきつい場面も多いだろう。現場の担い手不足、高齢化の現状は、日本の未来を考える上できわめて深刻な事態だ。

その背景には、経済のサービス化という産業構造の変化がある。この20年間、建設業やものづくり、運輸の現場で処遇が悪化し、就職する若者はサービス産業に流れていった。しかしそのサービス業は、労働生産性の上昇率が低く所得の伸びも低いため、わが国全体の格差拡大の一因となった。今こそ建設業やものづくり、運輸の現場の処遇を改善することで、日本全体の格差是正にもつながるはずだ。

私は、「これからの現場はプラス3Kが大事」と言っている。これまで言われてきた現場の3Kは「きつい・危険・汚い」だったが、これからは「給料がいい、休暇がある、希望がある」のプラス3Kに変えていかなければならない。現場の処遇を改善し、若者が誇りを持って働ける職場環境をつくることにより、人手不足・高齢化の問題を克服していかなければならない。

そして第二の問題は、安ければいいという社会の風潮だ。わが国のものづくりの現場では、技術革新でコストをできるだけ抑え、生産性を上げることにより、より良い品質のものをより安く作ることに力を注いできた。高度経済成長時代に外国製品との競争に打ち勝って経済成長を実現できたのは、そのような「メイド・イン・ジャパン」のモデルが有効に働いたことが一つの要因だったのだ。

自動車整備2014.jpgのサムネイル画像

しかしその後、バブル経済が崩壊して長期停滞の時代に入り、デフレが長く続く中で、品質が置き去りにされ、「ただ安ければいい」という風潮が社会に蔓延していった。より良い品質のものを作ろうとすれば一定のコストは必要となるはずだ。コスト削減・低価格を優先するあまり、品質をないがしろにしては、ものづくりやサービスの信用を大きく損なうことになる。

特に生命や安全性に直結する分野では、「安かろう悪かろう」であってはならない。生命・安全を守ることを何よりも優先し、必要なコストはしっかりかけることが必要だ。「より安く」というデフレ型の風潮を打ち破らなければならない。

悲惨な事故を繰り返してはならない。「プラス3Kの現場づくり」「デフレ型風潮の打破」を通じて社会を変えていく必要がある。

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