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「松坂大輔」は良い買い物 ソフトバンク孫オーナーの本音 - 赤坂英一

プロ野球キャンプたけなわの折、スポーツ新聞にソフトバンク・松坂大輔の記事が載るたび、どうしてこんなにも和田毅とは扱いが違うのか、と思わないではいられない。

「松坂投げた」、「和田〝も〟投げた」

 昨年、鳴り物入りで大リーグから日本球界に復帰しながら、一度も一軍で登板せず肩の手術までした松坂が、やれキャッチボールをした、やれブルペンに入ったと言っては一面でデカデカと報じられる。一方、仮にもかつてはソフトバンクの左腕エースで、今年2年ぶりにメジャーから復帰した和田は常にベタ記事扱いだ。キャンプ初日、ふたりそろって投球練習を行った記事の見出し、某スポーツ紙では「松坂投げた」、「和田〝も〟投げた」になっていた。まったく、随分な話である。

 では、松坂と和田のどちらが今季の戦力になる可能性が大きいか。キャンプ地に取材に来ている知り合いの評論家に聞くと、誰もが「現時点では和田のほうだろうね。左であるぶん使い出があるから」と口をそろえる。

 12球団一の陣容を誇る先発陣は武田翔太(昨季13勝6敗)、バンデンハーク(同9勝0敗)、中田賢一(同9勝7敗)、攝津正(同10勝7敗)と4本柱がいずれも右。彼らに続く寺原隼人(同8勝3敗)、千賀滉大(同2勝1敗)も右で、左でめぼしい存在は大隣憲司(同5勝4敗)しかいない。だから和田はローテーションに食い込むチャンスがあるが、右の松坂は主力投手がバテてくる夏場にでもならないと出番は回ってこないだろう、出せば勝てる投手だった昔ならともかく、肘も肩も手術して往年の球威など見る陰もないとなったらなおさらだ、と言うのである。

 そんな松坂と、孫正義オーナーは3年12億円という契約を結んでいる。このままでは大金をドブに捨てることになるのは確実で、さぞかしご立腹ではと思ったらそうでもないらしい。先に書いたスポーツ紙に大きく取り上げられていることから、むしろこれほどの人気者を他球団にさらわれないでよかった、というのが孫オーナーの本音であるようだ。

 4年ほど前、ソフトバンクの元球団幹部にこんな話を聞いたことがある。あるとき、孫オーナーがその元幹部にこう尋ねた。

 「いま、メジャーで一番いい選手は誰かね」  

 元幹部はこう答えた。

 「そうですねえ。デトロイト・タイガースのミゲル・カブレラでしょう。メジャーで45年ぶりに三冠王となったくらいですから」

 「そのカブレラは、いくら払えばホークスに来てくれるだろうね」  

 単なる雑談だと思った元幹部は、苦笑しながら軽い調子でこう答えた。

 「さあ、200億円か300億円か……」

 すると、孫オーナーはこう聞き返した。

 「それだけ払えば、本当に来るんだな」

 どこまで本気だったかはわからない。が、冗談で言っているわけではなかったのだ。孫オーナーとはそういう人物なのである。これほど剛胆で太っ腹で気前のいいオーナーは、恐らく大リーグにもそうはいないだろう。

松坂は終わったのか?

 松坂に対して、少々皮肉っぽいことばかり書いてしまった。しかし、私自身は今年こそ松坂に復活してほしい、と切に願っている。

 松坂がボストン・レッドソックスで投げていた2008年、私はフェンウェイパークで彼が当時日本人最多タイ記録となる16勝目を挙げたゲームを見せてもらった(同年8月29日、シカゴ・ホワイトソックス戦)。それも松坂の招待席で、バックネット裏の前から3列目、ホームベースの真後ろという最高の特等席である。8回2安打無失点という内容は、松坂のメジャー時代でベストに近いピッチングだったと言っていい。決して大げさではなく、私にはそのとき、松坂自身が眩しいまでの光を放っているように見えた。

 いまのソフトバンクの先発陣に割って入ることは容易ではない。もう松坂は終わったという声も聞かれる。しかし、私はもう一度、あのボストンの夜の輝きを見たい。

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