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携帯の"ライトユーザー"とはどんなユーザーなのか

 安倍首相「携帯電話の使用料金に言及すれば支持率が上がるのでは?」という思いつきで始まったようにしか思えない、総務省による「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース(以下、タスクフォース)」は、結局は携帯各社が月1GBで5000円程度という、実に「誰得?」な料金体系を示し、ついでに0円携帯を駆逐するのみで終わったようである。(*1)

 各社にとって最も重要な「月5GB」や「月7GB」という最もユーザーの多い現行プラン(*2)の価格をいじらせなかった以上、携帯キャリアの勝利と言う他無い。


 こうした結果になってしまったのには明らかな原因があると考えている。それはタスクフォースに出てきた「ライトユーザー」というものに対する認識である。

 タスクフォースではライトユーザーをどうも「携帯をあまり使わないユーザー」であると認識していたのだろう(*3)。だからこそ通信制限の上限が低い「月1GB」というプランを提供するという結果となった。

 しかし僕は、それはまったく筋違いの話であると考える。

 しかし本当に通信量が月1GB程度で事足りるユーザーというのは、携帯をプライベート用や仕事用として使い分け、通信上限が少なく、仮にその携帯の通信速度が制限されたとしても生活に支障がないと自覚しているユーザーのことである。そういう「わかっている」ユーザーはライトユーザーではなく、ヘビーユーザーなのである。

 では、本当のライトユーザーとは、どんなユーザーの事なのだろうか?

 本当のライトユーザーとは「今後、どういう用途に携帯を使うか、わかっていないユーザー」のことである。

 普段はメールをチェックするくらいしかしないユーザーが、ある日突然、ソーシャルゲームにハマったり、youtubeやニコニコ動画やHuluなどの動画サイトを視聴し出したり、LINEで通話するようになって、通信を何ギガも使い出す。そんな可能性があるのが真のライトユーザーである。

 そうしたユーザーが仮にその月に1GBも通信を使わなかったとしても、それは結果として、たまたまそうだっただけのことであり、次の月もそうであるとは限らないのだ。

 そうしたライトユーザーにとっては、制限の上限が低いプランは、むしろ契約に踏み切りにくく、実際には1GB程度しか使わなくとも、5GB程度プランを契約するということになってしまう。

 携帯キャリアにとってみれば、そうした真のライトユーザーこそが「実際に使わない(帯域を消費しない)のに、高い月額料金を支払ってくれるありがたいお客様」なのである。

 本来、総務省は、ここに切り込まなければならなかったのだ。ところがライトユーザーの定義をしっかりとできなかったがために、お茶を濁されてしまったのである。

 では、月1GBで5000円のプランは、本当に無価値だろうか?

 価値があるとすれば、これまでにも合ったように「老人向けプラン」や「子供向けのプラン」だろう。特に後者に関しては子供の携帯依存を避けるためとして、積極的な利用が求められることもあり得る。

 しかし、それもどうなのだろうかと、僕は思う。

 スマートフォンは今や「インフラ」である。

 私企業はもちろん、公共のサービスもネット上で提供されている。子供の学習についても、ネットで塾の講義を視聴できたり、NHK教育の番組がいつでも見られるなど、ネット動画は子供の学習にも欠かせない存在になりつつある。

 ネット動画は自宅のパソコンで見ればいいと考える人もいるだろうが、パソコンでのインターネット利用者が小幅ながら右肩下がりである一方、スマートフォンでのネット利用は右肩上がりに増え、もはやパソコンの方が少数派になりつつある(*4)。これはつまり、パソコンを持たない家庭が増えているということだ。

 さらに、パソコンを持たない家庭が自宅に無線LANを引いている可能性は低いと考えられる。つまりネット動画を利用できるのがスマホでの通信だけという家庭も、今や少なくないのである。

 そのような状況で、インフラが満足に使えないというのは、あまり感心できることではないだろう。

 もちろん、携帯キャリアが暴利を貪っているということではない。今や通信帯域の確保はどこの通信キャリアにとっても一大事である。

 ひと昔前のスマホ料金といえば「通話は30秒で10から20円ほど、ネット接続は使い放題プラン」みたいなものが一般的であったが、今は逆に「通話は話し放題、ネットは月5GB制限」のようなプランが中心である。これは動画サイトの隆盛や、LINEを使った通信を利用した通話といった、スマホの多くの機能が通話ではなく通信に偏ったていることが原因と言える。そうした使い方をする多くの人に対して、それなりの料金を設定するのは当然のことと言えよう。

 だが、それだけ通信需要が増えているということは、通信を消費者が気軽に安く使えることが、消費者の利益だけではなく、インターネットというインフラを利用する業者の利益のためにも重要であるとも言えるのである。単純に上限を低くして、自由に使えなくするだけではダメなのだ。

 本来、タスクフォースには携帯キャリアの利益と、インターネットを利用する他の業者の利益、そして消費者の利益を取りまとめる役割が求められていたはずだ。だが、今回生み出された「月1GBで5,000円」というプランは、その役割を全く満たしていない。

 僕は今回のタスクフォースは完全に失敗したと考える。

 だが、失敗してしまったものは仕方ない。失敗を責任問題と考えるのではなく、失敗は失敗として明確に認識し、次こそはライトユーザーの定義を組み直し、本当に利益調整のできるような指導を行っていただきたいと、切に思う。

(*1)3キャリアから出揃った“ライトユーザー向けプラン”を整理する(ケータイ Watch)
(*2)ドコモの約7割のユーザーが月5400円5GBの“Mパック”を選択 4年ぶりの増収増益の決算会見(週刊アスキー)
(*3)“公平性”のためにスマホの価格が上がる?携帯料金タスクフォース報告書案を読み解く by 三上洋(週刊アスキー)
(*4)スマートフォンからのインターネット利用者、2015年冬にはPCを超える可能性 ~ ニールセン、最新のインターネット利用状況を発表 ~(ニールセン株式会社)

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