記事

オバマは北朝鮮を優先外交課題にすべき - 岡崎研究所

1月6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙が、社説で、オバマ政権は北朝鮮を優先外交課題に復帰させるべきであると述べています。

 北朝鮮は、今日の世界で、安全保障に対する最も危険な脅威である。これは今までわかっていたことだが、4回目の核実験は、それが水爆だったかどうかは別として、北朝鮮の核問題のジレンマがいかに深刻かつ手におえないものかを改めて示している。

 20年以上にわたり米国など国際社会は「飴と鞭」によってあらゆる手立てをとってきた。1994年にはクリントン政権が枠組み合意をした。しかし、その後合意は崩壊した。近年、関係国は制裁措置による強硬アプローチに転換した。今回も安保理はこのアプローチを継続して新たな制裁をとることになるかもしれない。しかし、そのような制裁措置は北朝鮮の孤立感を深めるとともに北朝鮮の決意を一層強めることになってきた。そのため今後の対応は一層難しい。

中国はもっと大きな義務を果たさねばならない

 北朝鮮への対応に当たっては、金正恩(32歳)の性格を見極める必要がある。彼は核開発が自分の権力強化にとって不可欠だと考えている。権力基盤が安定すれば同人も軟化するだろうとの楽観的な見方もあるが、今回実験をみるとそのようなことが早期に起きるとは思えない。

 オバマ政権は北朝鮮を優先外交課題に復帰させるべきだ。オバマはイランとの交渉を重視し合意を達成したが、それに安閑としている訳にはいかない。その間に北朝鮮は静かに核兵器を開発した。

 中国はもっと大きな義務を果たさねばならない。2013年の核実験のあと中国は明らかに怒り、金融制裁を強化する安保理決議を支持した。中国は北朝鮮に石油、ガスを供給するなど北朝鮮にとっては最大の貿易相手国である。中国は北朝鮮の崩壊を避けたい。習近平は厄介な北朝鮮をそれが暴発する前に抑えるべきだ。

 この危険な膠着状態を破るためには、経済協力と引き換えに非核化を金正恩に受け入れさせることが必要となる。同人がかかる合意を受け入れる合理性を持っているかどうかは分からない。しかし、目下大事なことは、米中が協力して北朝鮮に対峙することが共通利益だと認識することだ。アジア太平洋で米中は多くのことで対立しているが、北朝鮮の脅威は米中双方にとって危険な事だ、と述べています。

出 典:Financial Times ‘The intractable dilemma posed by North Korea’(January 6, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/cb187806-b470-11e5-8358-9a82b43f6b2f.html#axzz3wStQaenM

 常識的で、重要な正論です。社説の表題に「The intractable dilemma」とありますが、問題の本質を旨く表現しています。この問題に日米など関係国は過去20年対決してきましたが、北朝鮮は執拗に挑戦を続け全く解決の糸口が見出せていません。国際社会には疲労感さえ漂います。その間に北朝鮮の核能力が着実に進展しているのは大きなジレンマです。良くも悪くも、北朝鮮に最大の影響力を持つ中国の立場がジレンマを大きくしてきています。取りうるオプションも多くある訳ではありません。結局、圧力と対話の間で辛抱強く揺さ振っていくしかないのではないでしょうか。100%圧力でもうまく行かないでしょうし、100%対話でもうまく行きません。さらに交渉の梃(レバレッジ)を持つためには、一定の相互依存が必要です。ここ数年の状況は、圧力・対話の双方がやや不足していたのではないでしょうか。

 核不拡散については、理論的には次の三つの選択肢しかないと思います。第1は、南アフリカやイランのように、制裁など国際社会の圧力により当該国自らの決断あるいは交渉により核開発をやめさせることです。第2は、イスラエルによるイラクやシリア空爆のように、軍事的な攻撃により当該国の開発を止めることです。第3は、インド、パキスタンのように、新しい核の存在の下で生きることです。北朝鮮について、第1の選択肢が最も望ましいことは言うまでもありません。

 焦ってはいけませんが、時間がなくなっているのも事実です。交渉の引き延ばしの間に北朝鮮の能力は確実に発達し、問題解決の難しさはどんどん大きくなり、解決のコストも一層大きくなってきたのが現実です。あれから20数年の時間経過は確実に北朝鮮側の利益になってきました。

 今すぐにではないにしても、六カ国協議の再開か二国間協議を行うべきです。特に米朝間交渉と日朝間交渉が重要です。中国のほか、ロシアの影響力も利用していくべきでしょう。それは、二つの面で意味があります。一つは、危機管理です。北朝鮮が今や何らかの核兵器を保有していることは明らかで、その開発度や運用を知ると同時に、わが方の対応を知らせ、北朝鮮の核暴走を抑止することが必要です。二つ目は、非核化に向けての圧力です。北朝鮮に利用されるだけだとか、既に試みたことであり無益に終わるだろうとの批判はあるかもしれませんが、外交交渉にバーゲンは不可欠で、注意深くやる方が何もしないよりはベターなのではないでしょうか。

 イランが核交渉に乗ってきた大きな要因は、制裁による経済の疲弊がありました。北朝鮮貿易の9割を占める中国が対北朝鮮経済関係をもっと規制することが不可欠です。

 1月6日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2014年12月のソニー・エンターテイメントに対する北朝鮮によるサイバー攻撃に対するオバマの対応が生ぬるかったとの批判を紹介するとともに、今回の核実験は韓国などの防衛政策にも影響を与えるだろうとしています。韓国は、対中配慮のため、THAADミサイル防衛システムの設置につき慎重な姿勢に固執してきましたが、前向きになるかもしれません。また、最近北朝鮮が潜水艦能力を高めているので、対抗のため潜水艦能力の強化にも積極的になるかもしれません。

あわせて読みたい

「北朝鮮」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。