- 2016年02月06日 09:19
ウォール・ストリート・ジャーナルが追ったもう1人の高校球児
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版では、不定期に編集長インタビューをお届けしてきました。今回は、2014年に執筆した高校球児についての長編記事に関連したミニインタビューです。
記事で取り上げた立田将太投手(奈良県立大和広陵高校)はドラフトで北海道日本ハムファイターズから指名を受け入団。プロ1年目の昨シーズンは2軍で過ごした。プロ選手を多数輩出している強豪校ではなく、部員のほとんどが卒業後就職する大和広陵高校からの立田投手の入団は注目されたが、実は他にもう一人プロへの道を選んだ選手がいた。
正捕手として立田投手の投球を受けていた向谷拓巳選手。地元での就職を一旦は検討したものの、周囲の勧めもあり独立リーグで野球を続けることを決断。現在は兵庫県三田市に本拠地を置く兵庫ブルーサンダーズの一員としてNPB入りを目指している向谷選手に話を聞いた。
―独立リーグの選手として今はどのような生活をしているのか
給与はもらっていないが、住居は提供してもらっている。同じチームの選手数人で共同で一軒家に暮らしている。食事もそれぞれ自分で作ることもある。家賃は払っていないが光熱費は自己負担なので、飲食店でアルバイトをし、親からも仕送りを受けている。そういう意味では大学生の生活と似ているのかもしれない。
―なかなか大変だが後悔はしていないか
地元で工場への就職も検討したが、続かないだろうと思っていた。そのような気持ちで就職するのは良くないとも思っていた。これが一番良い選択だったと確信している。今は一日中野球ができ、野球のことを考えられる。今までで一番野球が楽しい。
―昨シーズンは所属のベースボール・ファースト・リーグ(BFL)で安打、盗塁の数では共に2位で打率も3割を超えたが、手ごたえは
目指しているのは機動性のあるリードオフマン。盗塁はできたが、数だけではなく今後は意味のある盗塁をしたい。
―昨年秋のドラフトでは指名を期待したか
チームメイトの中には声がかかると言ってくれた人もいたが、自分は絶対ないと思っていた。3年間はやるつもりなので、今年指名されればよいが、来年までは頑張る。
―立田投手に加え、ライバル校であった智辯学園の岡本和真選手は巨人に1位指で入団し、昨シーズンは1軍デビューもしたが
立田や岡本には負けたくない。身近にいて一緒に野球をやっていたので、彼らには負けたくない。
―バッテリーを組んでいた立田投手のことはどう思うか
プロに入るという目標に向け、あれだけやっていたのはすごい。高校のチームメイトも皆そう思っていたと思う。彼がいたから自分もプロ目指すことになった。彼がいなかったらプロなんて考えていなかったと思う。
インタビューを終えて
高校時代も1番バッターを務め、2014年夏の県大会では果敢な走塁で幾度となく勝利に貢献した向谷選手。常に冷静で口数少ない立田選手とは対照的に、闘志を前面に出すタイプ。立田投手を視察に来ていたプロのスカウトにその野球センスを買われて独立リーグに進んだ彼のその後は気になっていた。
大阪からは電車で40分程度だが、車窓からは山並みや渓流が見え、訪れた先月下旬は最低気温がマイナス5度にもなる日もある三田市。市内の小高い丘の上にあるホームグラウンドで話してくれた向谷選手は、野球に集中できる環境に感謝し、日本野球機構(NPB)傘下の12チームでプレーするという目標に向けて何をするべきかをしっかりと語ってくれた。
所属のBFLからドラフトを得てNPB入りした選手はまだいないが、バッテリーを組んでいた2人が同じNPBのグラウンドでプレーするのを是非見てみたいと思う。
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西山誠慈
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版編集長
2011年より東京支局にて経済政策報道の編集責任者を務め、アベノミクス発表当初から日本銀行による大胆な金融緩和政策などについてWSJ独自の視点で報道を行ってきた。2014年には、プロを目指す高校球児を1年にわたって取材した長編記事を執筆。WSJ入社以前は18年間ロイター通信社にて金融市場、経済政策、政治、外交など幅広い分野を担当し、2008年に日本語ニュースサイトの副編集長に就任。早稲田大学政治経済学部卒業。ニューヨーク出身。Twitter: @g_nishiyama
By GEORGE NISHIYAMA
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