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元スター選手の覚せい剤事件Q&A

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プロ野球の元スター選手が覚せい剤事件で逮捕され、メディアは競ってこの話題を取りあげ、私のもとにも、お問い合わせが相次いでいます。皆さんから寄せられたご質問をまとめて、Q&Aを作ってみました。
この件では、
自宅で、約0.1グラムの覚せい剤が発見されたと伝えられています。

Q1 「覚せい剤0・1グラム」はどれぐらいの量なのですか?

覚せい剤の平均的な1回使用量は、注射の場合、0.03グラムといわれています。量にすると、およそ耳かき1杯にあたります。ここでいう「0・1グラム」とは、平均使用量の3回分、耳かき3杯程度の量ということになります。
ただし、人によって使用料は異なり、初心者や女性ではやや少なめ、常用している人はやや多めを使う傾向があります。

注射で使用する場合は、1回分の覚せい剤を水で溶き、注射します。使われる注射器は、糖尿病患者がインスリン注射をするときに使うタイプです。

あぶり(加熱吸引)という使用方法は、ガラスパイプの中に少量の覚せい剤を入れ、ライターなどであぶって、蒸発する成分(一般に煙と呼ぶが、正しく言うと蒸気)を吸引するものです。使用したパイプには、覚せい剤が溶けて焦げた跡が残ります。

あぶりの場合、煙が周囲に拡散し、またパイプに焦げたカスなどが残り(約30パーセントがパイプに残るという報告があります。)、ロスがあるため、使用量は、注射に比べてやや多いように思いますが、断定はできません。
いずれにしろ、乱用者は秤を使うわけではなく、あくまで目分量なので、厳密な使用量が特定されるわけではありません。

Q2 「覚せい剤0・1グラム」の値段はどのくらいなのでしょうか?

一般的な密売ルート(インターネットや街の密売人から手に入れる場合)での覚せい剤の相場は、現在では1グラム当り3~4万円くらいだと思います。そうすると、0・1グラムの覚せい剤の密売価格は、3~4000円ということになりますが、販売単位の量が少ないと値段は割高になるので、もし0・1グラム入りの覚せい剤を買うとしたら、1万円くらいになるでしょう。
一番よく売られているのは、0・5グラム前後が透明なビニール袋(「パケ」といいます)に入った商品で、私が最近扱った事件では、1万7000円前後ということでした。

ちなみに、最近私が扱った事件では、1万以下の覚せい剤を買ったという事件は1件だけで、金がなかったので知り合いの密売人に頼み込んで、1回分を5000円で売って貰ったというものです。ユーザーが密売人から覚せい剤を買う際には、量の多少にかかわりなく、1回に1万円以上を支払っているようです。

なお、入手ルートによって、価格がかなり違う例もあります。2014年に逮捕された大物ミュージシャンのケースでは、特別なルートで手に入れていたので、一般的な相場の数倍のお金を払って覚せい剤やMDMAを手に入れていました。
今回の事件でも、そのような特別なルートで手に入れていたとすれば、一般的な相場は必ずしも当てはまらなくなります。

Q3 ガラスパイプやストロー、注射が押収されていますが、いろいろな器具があったということは、覚せい剤を常習的に使っていたことにつながりますか?

使用方法は、使う人の好みですから、常習性とは直接の関係ありません。
最初から注射で使っていたなら、注射器が発見されたからといって、常習性が高いとはいえません。今回初めて使ったということもあります。
ただし、あぶりからから始めて、注射に移った場合は常習性が高いといえます。長年にわたって常用している人では、ロスの少ない注射使用を好む人が多いからです。

報道では、(最初があぶりかどうかはわかりませんが)注射とあぶりを選択して使っていたようで、いわばTPOを考えて使用法を考えていた(腕に注射痕が残ると人目に付くという理由で、加熱吸引をする人もいます)、使い慣れているともいえるので、常習性が高いといってよいのではないかと思います。

ストローは、パイプを使わないあぶりによく使われます。アルミホイルの上やカラス瓶の中であぶったときに、煙を吸引するために短く切ったストローが使われます。
しかし報道では、身辺からパイプが出てきているのであぶり用とは考えにくく、覚せい剤を袋からすくうために使われていたのかもしれません。少量をすくい取る用具として、ストローの先をななめに切ったものが、しばしば使われます。

Q4 また携帯電話が4台、押収されていますが、覚せい剤使用と関係があるのでしょうか?

基本的には覚せい剤の乱用と直接に関係するものではありません。むしろその人の生活スタイルによるものといえます。
ただし、日常使う携帯とは別に、密売人と連絡するための別の携帯をもっていた、ということはあり得ます。
警察は、押収した携帯の通話履歴やメールから、覚せい剤の購入や使用に関係した通話相手を細かく調べ、入手先の割り出しや、周辺の覚せい剤仲間などを調べる手がかりにします。

Q5 自宅の捜索で、もしも覚せい剤が見つからなかった場合は、どうなったのでしょう?

今回の捜索は、自宅マンションから出されたゴミなどから覚せい剤が検出されたことから、ゴミとして出された「覚せい剤の所持」を被疑事実として行われたとのことです。

覚せい剤使用に関係する「ゴミ」としては、
①吸引に使ったパイプやアルミ箔についた、燃えカス
②注射使用の際に使ったコットンやティッシュ
③注射液を作る、パイプに詰めるなどの際にこぼしたもの
などがありますが、いずれにしろ微量なはずです。

微量の覚せい剤でも逮捕、勾留されることはありますが、しかし、覚せい剤の効果が得られないほどの微量であれば、覚せい剤にあたらないという裁判例もあります。

また、当事者が「ゴミ」として捨てたものについて、最終の所持の時点(捨てる直前)に、覚せい剤の認識や所持の認識があったと認められるかは疑問です。
こうしたケースでは、逮捕しても最終的には覚せい剤の所持を立件することは難しいと思います。

今回のケースで、もしもマンションを捜索した結果、覚せい剤が発見されなかったなら、「ゴミ」中から検出された覚せい剤の件で逮捕・勾留したとしても、結局、最後は釈放で終わった可能性が高いと思います。ただし、逮捕中に採尿し、尿から覚せい剤が検出されれば使用で立件されます(本人が尿の提出を拒否した場合に、強制採尿までゆるされるかどうかは、また別問題ですが)。

2014年の大物ミュージシャンの事件でも、当初はゴミから発見された覚せい剤の所持で逮捕されましたが、途中で、ゴミから発見された覚せい剤の件については処分保留で釈放となり、同日、ミュージシャンの自宅で発見された覚せい剤などの所持で逮捕されたと記憶しています。
2月4日、東京地裁が
Kさんの勾留を決定したと報じられました。

Q6 今回の事件が起訴された場合、保釈の見込みはありますか?

報道によれば、Kさんは覚せい剤の所持についても、使用についても認めているということですから、保釈が許可される可能性はあるでしょう。

ただし、保釈中の監督体制や住居といった問題をクリアすることが必要です。まず、保釈中の本人を監督し、保釈条件を守らせる監督者が必要です。手続きの上では、身元引受人という立場の人で、普通は、同居の家族などがこの役割を引き受けます。同居している家族がない場合は、適切な監督者を確保できるかどうかがポイントになります。

次に、住居ですが、保釈中は裁判所が指定する住居(制限住所)で生活することを求められます。ところが、報道によると、Kさんの住まいは月契約のマンションだと言います。つまり身一つで暮らしている仮住まいですから、保釈中の制限住所としての安定感があるかどうか、いささか不安も感じます。

Q7 裁判になった場合、どんな刑が予測されますか?

覚せい剤などの薬物事件では薬物の量と前科の有無で量刑が決まります。同じ量でも前科があると重くなります。
また、営利の目的(他人に売るなどして経済的な利益をえる目的)がある場合には、法律でより重い刑罰が定められているので、同じ量でもより重くなります。

現在の情報からすると、今回のケースでは
①覚せい剤の所持について
押収された覚せい剤は0.1グラムだといいます。これは、ユーザーが手元に持っている、使いかけ(残量)の覚せい剤としては、よくある量です。とくに多くもない、少ないともいえない。最近は、論告ではあまり使われないようですが、「少なくない量」ということで、刑が重くなる量ではありません。
②覚せい剤の使用について
すでに尿の提出を済ませ、正式な鑑定でも陽性だとの報道です。

このような場合の使用と所持は、犯罪としては一体として扱われますから、使用でも起訴されたとして、刑が重くなるものではありません(東京での実務として)。

これ以外に犯罪に当たる事実がないとすれば、前科もなく、営利目的がない(自分で使うために持っていた)ならば、起訴されて裁判になった場合に、言い渡される刑は、懲役1年6月程度になるでしょう。そして、反省の態度などが認められて執行猶予つきとなるケースが多いです。

前科があれば、重くなり、執行猶予が付くのは難しくなります。
営利の目的があるということになればさらに重くなり、初犯でも実刑の可能性が高くなります。

Q8 執行猶予がつくと、どうなるのですか?

具体的には、
被告人を懲役○年〇か月に処する。
この裁判確定の日から〇年間その刑の執行を猶予する。
という判決を言い渡されます。

執行猶予とは、有罪判決で言い渡した刑の執行(懲役刑であれば刑事施設への収容)を一定の期間猶予し、猶予期間を満了すれば、宣告された刑の効力が消滅するという制度です。猶予期間中は、資格制限などがありますが、満了すれば有罪判決を受けたことによる制約がなくなります。
もしも、猶予期間中に犯罪に関わるなどすれば、執行猶予は取り消され(刑法26条以下)、猶予されていた宣告刑(○年〇か月の懲役刑)を現実に受けなければなりません。執行猶予期間中はこうした立場なのです。

執行猶予は、比較的軽い刑(3年以下)の場合に限ってつけることができるもので、これまで犯罪に関わったことがない、再犯のおそれが少ないなどの場合につけられます。犯罪の内容が悪質だったり、犯罪歴がある場合は、執行猶予付き判決を期待することは難しくなります。

執行猶予付き判決を受けると、普通の社会生活に戻ることができるので、無罪になったと思い違いをする人もあるようですが、決して無罪になったわけではなく、懲役刑の執行が期限付きで保留されているわけです。もし、期限内に再び犯罪に関わって逮捕されるようなことがあれば、執行猶予は取り消され、前に言い渡された懲役刑を受けなくてはならないことになります。

また、刑事裁判で有罪の判決を受けるということは、社会的には大変厳しい制裁を科されることになります。
公的な資格のなかには、有罪判決を受けた人に対して、一定期間資格を制限しているものもあります。一般人にとって、最も影響があるのは、パスポートや外国への入国ビザの問題でしょう。執行猶予の期間中は、パスポートの取得が制限されることがあります。また、アメリカなど、薬物事件での逮捕歴のある人には入国許可が出にくい例もあります。

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