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アングル:米国債利回り低下、一部の保守的な投資家に恩恵

[ニューヨーク 3日 ロイター] - ドル高や原油価格下落、社債の低迷、世界経済停滞──。これらは米国の大半の投資家にとって有害な混乱をもたらす悪材料だ。だが、米国債利回り低下の影響を受けやすい分野に資金を集めていた一部の保守的な投資家にとっては、歓迎すべき追い風になっている。

「30年にわたる債券市場の強気相場は終わった」「もしも米連邦準備理事会(FRB)が利上げすれば米国債の投資ポジションは破滅する」といった予想が何年も前からなされてきた。

しかし現実に起きているのは、正反対の事態だ。運用額1億9300万ドルのタッチストーン・トータル・リターン・ボンド<TCPAX.O>など、米エージェンシー債への投資比率が高く社債の比率が低いファンド勢は、勝ち組になりつつある。

タッチストーン・インベストメンツのシニアストラテジスト、クリット・トーマス氏は「利回りを押し下げ続ける何らかの構造的な力が存在しており、市場参加者はようやくそれに気づいている」と話した。タッチストーン傘下ファンドの機関投資家保有株は、モーニングスターによると今年のリターンが1.56%で、同グループに属するファンドの90%よりも成績が良い。

米10年国債利回りは昨年末の2.28%弱から3日には1.88%まで低下(価格は上昇)した。

抜け目のない投資家は値上がりを見越し、1月27日に終わった週までの7週間で95億ドルの資金を米国債ファンドに投入していたことがリッパーのデータから見て取れる。

ただ、大方にとってこれほど米国債利回りが下がったことは衝撃だった。

今年末の米10年債利回り水準を2.65%と予想しているバンク・オブ・アメリカ<BAC.N>のストラテジスト、マーク・カバナ氏は「われわれが想定外だったのは間違いない。当社の利回り見通しは年初時点でコンセンサスより低めだったので、業界の多くが事態に驚いているように見える」と述べた。

景気弱気派はさまざまなリスクを大げさに言い立てている可能性がある。実際、5日に発表される1月米雇用統計で労働市場がなおしっかりしている状況が示されてもおかしくはない。それでも米国債投資を勧めてきた向きは足元であらためて自信を強め、利回りの低下はまだ続くと主張している。

過去2年にわたって利回り低下を正確に予想してきたヒルトップ・セキュリティーズのストラテジスト、マーク・グラント氏は、10年債利回りは1.75%に向かうとの見方を示した。

グラント氏によると、原油価格が一段と下がってエネルギーセクターを圧迫する可能性が大きく、それが世界的な景気後退リスクを増大させるという。

米国債は今、海外主導で値上がりする展開になっている。日銀が先週にマイナス金利を導入したことなどで、日欧の国債よりも利回りが高い米国債への需要が高まったのだ。ドイツと日本の国債は残存7─8年以下すべてがマイナス金利となり、ドイツの10年債利回りでも0.28%と米1カ月物財務省証券にすら及ばない。

ジャニー・モンゴメリー・スコットのストラテジスト、ガイ・ルバ氏は、1月の米国債市場の価格変動の61%を通常の米国取引時間外が占めたとした上で、例年に比べて海外での売買規模がずっと大きいことの表れだと説明した。

セージ・アドバイザリー・サービシズのボブ・スミス社長は、多くの米投資家はこうした現実を見逃してしまったと指摘する。

スミス氏は「だれもが金利上昇の方向にばかり目を向けていた」と語り、社債価格がデフォルトリスクの増大を映し出していたので、スプレッドリスクに大半の関心が注がれていたと解説した。

シエラ・インベストメント・マネジメントのテリー・スパス最高投資責任者は、遅まきながら10日前に米10年債の保有を増やし始めたことを明らかにした。今後原油や高利回り債の価格が下げ止まったり、FRBの利上げ継続を市場が予想しなくなってインフレリスクプレミアムが高まるまでは、10年債の買い増しを続ける方針だ。

スパス氏は「投資家はカバーに走っている。もはや原油や小型株といった資産クラスにおいてひそかな弱気ムードが存在する市場ではなく、弱気がどんどん加速している市場になっている」とみている。

(Trevor Hunnicutt記者)

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