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中露の支援が北朝鮮の破綻を助長する - 岡崎研究所

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)研究員のエバースタットが、12月29日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、北朝鮮経済の失敗は指導者の失政に起因するが同時に中露からの経済支援がそれを一層悪化させてきた、と述べています。論説の要旨は次の通り。

経済破綻は歴代金政権政策の帰結

 経済失敗の最も顕著な例が北朝鮮である。特に1990年代の大飢饉は平和時のものとしては人類史上例がない。米韓の分析によれば、50-70年代には北の一人当たり所得は韓国を上回っていた。当時発展していた北朝鮮経済はなぜ急速に失墜したのか。

 北による情報秘匿にもかかわらず、北の貿易相手国側の統計により経済破綻の状況や原因などにつき十分な証拠を知ることが出来る。昨年の北の一人当たりモノの輸出額は70年代半ばのそれを下回っている。また私(エバースタット)の試算によると、14年の一人当たり輸入額(実質)は74年のそれの約6割程度だった。74年は北の貿易がピークを記録した年だった。

 経済の破綻は地政学的な影響の結果ではない。ソ連崩壊や洪水、核制裁などでは説明できない。経済破綻は歴代金政権の政策の当然の帰結として起きたものだ。

 北のビジネス環境は世界最悪である。2010年にヘリテージ財団とWSJが出した世界経済自由度指標によると、北朝鮮は179か国のうち圧倒的な最下位だった。北には法の支配はなく、財産権、民間貿易、信頼できる貨幣制度、経済社会統計は確立されておらず、政府部門に対する内的抑制力も存在しない。ビジネス環境の重要性を強調しすぎることはない。2010年の北の対世界貿易は北と同等の規模の国の20分の1程度に過ぎない。

 70年の北朝鮮経済は当時の中国やベトナムよりは良い状況にあった。しかし、この二か国は改革を進め、貿易を推進した。他方で、北は全く反対の方向に進み、戦時経済化し、消費部門を抑圧、「貨幣制度改革」と称して民間の資金を取り上げた。北のような経済政策をとれば経済は確実に破綻する。

経済支援が破綻を助長させた…?

 もう一つのカギは、海外からの経済支援が破綻を助長していることだ。北朝鮮は常に経済支援に依存し未だ嘗て自立していたことはない。60年以後、北は600億ドル(今日のドル価値で)以上の支援を受けてきた。そのうち約450億ドルが中国、ロシア(ソ連)からの支援であった。

 何故この莫大な支援が経済発展に繋がらなかったのか。90年代後半に公表された世銀報告は、劣悪なビジネス環境の下では経済支援は逆効果になると言う。つまり、そのような状況での経済支援は政府の失政を隠蔽することになり、すればするほど害になる。不幸なことに、海外の政治指導者が経済支援を通じて北の経済破綻に加担しているのである。北朝鮮は、モスクワと北京からの経済支援を通じ現代国家としては最悪の経済破綻に行き着いたのである。

出典:Nicholas Eberstadt, ‘How North Korea Became the World’s Worst Economy’(Wall Street Journal, December 29, 2015)
http://www.wsj.com/articles/how-north-korea-became-the-worlds-worst-economy-1451430114

経済支援が変化の妨げに

 エバースタットは、北朝鮮の経済破綻の原因は、①劣悪なビジネス環境と、②中国・ロシア(ソ連)の経済支援にあるとしています。しかし、政策は体制そのものと密接に関係しています。金正恩体制に移行した際は一抹の希望的観測もありましたが、結局変化は起こりませんでした。奇しくも1月6日に北朝鮮は初の「水爆実験」実施を発表しました。政治の優先順位が狂っています。

 決断をすればビジネス環境は変えることができます。経済の改革、自由化をすれば経済を活性化できます。ここ数年、北朝鮮も一部経済の自由化をしており、それを利用して金儲けをしている人々がいるとも言われます。英エコノミスト誌もここ数年北の変化に注目、報道しています。しかし、実際の状況は正確には分かりません。一定の改革開放に関心を示したのではないかと思われる張成沢も13年12月には粛清されてしまいました。

 中国などの経済支援が現状維持を擁護し変化を阻むことになっているとの指摘は全くその通りです。日本など通常の経済支援は必要な資本を与え、また人的資源を発展させることなどによって経済発展に貢献します。しかし、アフリカでの例でもわかるように、中国の経済支援は当該国「政府」の喜ぶことをする政治至上主義であり、経済の発展効果や改革刺激効果などは限定的です。まさに中国やロシア(ソ連)の経済支援が北朝鮮を悪くしています。その意味でも、中国等の対北経済支援政策を変えさせていかねばなりません。

 それでも、北朝鮮が大転換し改革が可能となり、日本などが北朝鮮に本格的に支援するようになれば、北朝鮮はかなり短期に発展することが可能となるのではないでしょうか。北朝鮮は、ベトナムやミャンマーほど大きな国でもないですし、人的資源は急速に教育できるようにも思われます。

 懸念されるのは、北朝鮮の対中国経済依存が高まっていることです。15年6月に発表された韓国KOTRA報告によると、14年の北朝鮮の対外貿易は総額76億ドル(輸出31.6億ドル、輸入44.5億ドル)で、その90.1%を中国に依存しています(輸出28.4億ドル、輸入40.2億ドル)。中国の影響力の大きさを示すとともに、中国がいかに国際社会の対北圧力の抜け穴になっているかがわかります。

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