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やり手上司に警告:その根性は誰のため?

粘り強い、あるいは頑張り続けることは、大半の場合において良いことだ。しかし、中には自分自身の利益のために頑張り過ぎているリーダーもいるかもしれない。

 「やり手」の代名詞だった「根性」という言葉が、このところ注目を集めている。その主な理由は、ペンシルベニア大学のアンジェラ・ダックワース教授(心理学)の研究発表にある。同教授は、「根性」(長期的な目標に向かう情熱と粘り強さと同教授は定義)というものが、才能や知性以上にその人の成功を予測できる要素になることを発見したという。同教授が2013年にプレゼンテーションイベント「TED」で行った講演は800万回近く視聴されている。

 人材コンサルティング会社ラッセル・レイノルズ・アソシエーツ傘下のリーダーシップ・インサイト・センター代表、ディーン・ステモリス氏も「やり抜く力のある企業幹部は仕事ができ、昇進の潜在力が最も高い」と話す。同氏によれば、同社は2005年以降で7000人以上の企業幹部に関する詳細な評価を実施したが、「粘り強さのある人にはやる気、精神的な忍耐力、明確な計画性が見られる」と結論した。この分析によると、最高経営責任者(CEO)は他の幹部よりも粘り強さの水準が高かったという。

 一方、従業員支援プログラムを提供するコムサイクのリチャード・チェイフェツ代表は、幹部の中には「あきらめる時」が分からず、「頑張り続けるなかで燃え尽きてしまう」人もいると指摘する。同社によると、ここ1~2年ほど、こうしたストレスを抱えている幹部からの相談が増えているという。

 BPIグループの幹部コーチング担当マネジングディレクター、メアリー・ハーマン氏は、「過度の根性はその人のキャリアを脱線させる場合がある」と警告する。同社のコーチング依頼の推定約35%は根性や粘り強さに関するものであり、多くの企業幹部が転職ないし大きな昇進後に「自分の目標に向かって情熱的になり過ぎる」という。

 USCインスティチュート・フォー・クリエーティブ・テクノロジーズが最近行った粘り強さのマイナス面に関する研究によると、こうした人は負け戦でも頑張り続ける傾向がある。たとえ、粘ることでボーナスのチャンスをかえって逃すとしても頑張り続けるという。研究チームは「やめるという潮時を知ることにも価値がある」と結論付けている。

 ヘルスケア企業でバイスプレジデントを務める女性は、自分自身の粘り強さが他人をうんざりさせていることに気付くまでに何カ月もかかった。調査機関の部門長という重要な役職に就いた彼女は、自分のアプローチが徐々にチームのメンバーを遠ざけていることに気が付いた。チームのメンバーは彼女の考える部門再編に抵抗していたからだ。

 この女性は当時を振り返り、「そこで私はもっと強く押した。すると彼らはみな腹を立て、うんざりした顔をみせた」と話した。

 さらに、部門外の同僚との関係も悪化したという。困難な課題にどう対処すべきか提案を受けたのに怒った反応を示してしまったからだ。

 そこで、このヘルスケア企業は2015年2月に幹部向けコーチとしてドナ・ストーナム博士を雇い、この女性に助言するよう要請した。過剰なストレスに自分の体がどう反応するか(ももの筋肉が硬直するなど)、ゆっくり息をして気持ちを落ち着かせることなどが教えられたという。

 ストーナム博士によると、この女性は現在、以前よりも力を発揮できるようになったとの評価を上司から受けている。同博士はコーチング会社ポジティブ・インパクトの社長を務めている。

 専門家たちは、頑張り過ぎるタイプの人には、自分の行動の率直な感想を周囲の人たちに求めるよう勧めている。例えば社内のメンター(助言者)、ビジネス上の知人、知識のある親戚などだ。

 前出のUSC研究論文の主執筆者ゲール・M・ルーカス氏はこう指摘する。「根性のある企業幹部にとっての真のリスクは、目標までの代替手段を考えないということだ。一度歩き始めた道だからといって、それが必ずしも正しい道とは限らない」

By JOANN S. LUBLIN

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