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2020年までに実現! 無人運転車のキーマン【2】 -対談:ZMP社長 谷口恒×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」

ソニー、コマツ、DeNA……次々に有力企業との提携を進めるZMP。自動運転技術で注目される同社を率いるのが、谷口恒社長だ。東京五輪までに無人のタクシーを走らせる――目標実現の算段はいかに。

倒産の危機を救った自律移動技術

【田原】ZMPは自動車の自動運転に特化した会社かと思いましたが、最初は二足歩行ロボットをビジネスにしていたそうですね。どうして二足歩行ロボットを?

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【谷口】私はもともとインターネット事業で起業していました。ただ、ネットはアメリカの技術をいち早く日本に持ってきたところが勝ちなので、正直いってあまり面白くなかった。日本ならではの事業がしたいなと考えていたところ、二足歩行ロボットの研究をしている文部科学省の知人から、技術移転を受けてベンチャーをやらないかという話をいただきました。当時はホンダの「ASIMO」、ソニーの「AIBO」が出たころ。この分野なら日本企業でも存在感を出せると思い、国と契約して新たに会社を設立しました。ちなみに社名のZMPは、二足歩行ロボットが動くときのゼロモーメントポイント(zero moment point)理論にちなんでつけています。

【田原】それで04年に「nuvo」というロボットをつくった。これは民生用ですね。

【谷口】はい。家庭用二足歩行ロボットで、声をかけるとこっちに歩いてきたり、ダンスをしたりします。いわば高級な玩具ですね。機能はもう一つあって、携帯電話で連絡すると、ロボットの目についたカメラで家の中を映して、その映像を遠隔で見ることができます。実際は警備や防犯というより、外からペットの様子を見て楽しむという使い方のほうが多かったみたいですが。

【田原】「nuvo」は売れたのですか?

【谷口】売れました。愛玩用はすでに「AIBO」が世に出ていましたが、人型ロボットで量産されたものは当時なかったですから。台数でいうと、58万8000円の普通のモデルが500台、金沢の漆職人の会社と提携した漆塗りのモデル88万8000円が100台売れています。

【田原】その次に開発したのが、07年に販売した「miuro」。これはどういうロボット?

【谷口】「nuvo」は売れたものの、いくつか課題も見つかりました。人型ロボットは移動がヨチヨチ歩きで、段差があるとすぐ倒れます。また、価格も高かった。では、どうすれば移動を安定させ、価格も安くできるか。そこで開発したのが、二足歩行のかわりに二輪で動くロボット「miuro」です。ただ動くだけでは面白くないので、音楽を運んでくれるという付加価値をつけました。たとえば朝5時半にヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」で起こしてくれというと、朝、充電ステーションから自動で寝室まで来て音楽を流してくれます。これも売れて、最初つくった500台は完売しました。

【田原】勝手に寝室まで来てくれるって、自動運転みたいなもんだね。

【谷口】そうなんです。じつは私たちが自動運転にシフトしていくのも、「miuro」がきっかけでした。

【田原】どういうこと?

【谷口】「miuro」がヒットしたので、さらに安いモデルを大量生産しようと、ベンチャーキャピタルから十数億円を集めました。ところが08年のリーマン・ショックでベンチャーキャピタルが潰れかけ、わが社も資金が底をついてしまった。このままでは倒産するというとき、目に留まったのが「miuro」の自律移動技術です。この技術を自動車につければ自動車メーカーが買ってくれるのではないかとひらめいて、ミニチュアの自動運転車をつくった。それがロボットタクシーの原型です。

【田原】ごめんなさい。ちょっとよくわからなかった。自動運転のミニチュアカーを自動車メーカーが買うって、どういうこと?

【谷口】自動車メーカーは自身で運転支援や自動運転の研究をしています。実験は本物のクルマを使ってテストコースでやりますが、実験にはコストがかかるし、いろいろな開発チームがあるので順番も簡単に回ってこない。そこでテストの前に小さな模型でシミュレーションするのですが、その実験機として私たちの自動運転車を売り込んだのです。

【田原】実験機?メーカーは実験用のミニカーも自分でつくれないの?

【谷口】つくれると思いますが、彼らにしたら道具を買う感覚です。たとえばクルマの設計にはCADが使われます。でも、トヨタは自社でCADのソフトをつくらないで、他社から買ってくる。そのほうが早くて安いからです。自動運転の実験機も同じです。私たちから買ったほうが、メーカーも楽ができます。

【田原】なるほど。それでメーカーは買ってくれたの?

【谷口】09年に10分の1の模型を100万円で売り出したところ、ほぼすべてのメーカーが買ってくれて、一番厳しい時期を何とか乗り越えることができました。この実験機はいまも売れていて、累計で400台以上売れています。その次が、もう少し大きいサイズの1人乗りのロボットカー。これは500万円で、40台ほど売れています。原付のナンバーをつければ公道も走れるので、自動車メーカーや部品メーカーのほか、大学や自治体が小型モビリティの研究用に購入するケースも多いです。

【田原】ミニチュアカー、1人乗りときたら、次は普通車ですね。

【谷口】普通車のロボットカーは、人とお金の体制が整った12年から販売しています。本体はプリウスを使っていますが、やはり実験車両として自動車メーカーが買うことが多いので、その場合はメーカーさんのクルマにセンサーやコンピュータ、ソフトウエアを載せてお渡しします。価格はセンサーの数によりますが、だいたい3000万~5000万円。いままで30台ほど売れています。

アジア市場を獲れば世界で勝てる

【田原】ところで、御社は自動運転技術をクルマ以外にも応用しているそうですね。説明してもらえますか。

【谷口】たとえばコマツさんと資本提携したり農機メーカー数社と組んで、建設・鉱山機械や農機の自動運転化を進めています。また、来年には自動運転で人の後を勝手についてきてくれる台車「CarriRo(キャリロ)」のリースを開始します。これが倉庫にあると一度に2倍、3倍の荷物を運べます。人数でいうと、10人の集配所なら8人で済む計算です。

【田原】建機に農機、台車。車輪がついていれば何でもいけそうですね。

【谷口】車輪のあるものだけじゃないですよ。この年末からサービス開始を予定しているのが、ソニーモバイルコミュニケーションズと一緒に手掛ける自動運転のドローンです。ビルなどの大きな建築工事では、ゼネコンやデベロッパーが施工管理しますよね。それを自動運転のドローンでやるのです。具体的にはドローンが飛んで現場の3次元マップをつくり、上から俯瞰して工事の進捗や資材の量をチェックします。

【田原】面白い。これは1台いくらで売るのですか。

【谷口】自動運転のドローンを直接販売するのではなく、ドローンで収集したデータを日報として現場監督の端末に届けるサービスを予定しています。価格は1年で1台500万円くらいです。

【田原】最後にもう一度、クルマの話を聞きましょう。谷口さんは世界で存在感を出したいといって日本のロボット産業に目をつけた。自動運転車で、ZMPは世界を獲れますか。

【谷口】そのつもりです。いまはまだ従業員60人の小さな会社ですが、来年には全体で200人に増やす予定です。そこまで増えれば海外に支社をつくって、1割ぐらいの人をあてる余裕も出てきます。もともと社員の半分は外国人という会社ですから、海外展開に壁はないはずです。

【田原】支社はどこにつくりますか。

【谷口】悩ましいですね。開発を重視するならドイツです。ただ、マーケットとしては中国かな。じつは各国の道路交通法は、約60年前に国連で採択されたジュネーブ条約に縛られています。レベル4の無人運転はジュネーブ条約の制約から抜け出さないと実現できないのですが、ドイツや日本、アメリカと違い、中国はこの条約を批准していません。つまり国がオーケーといえば、どこよりも無人運転が普及する可能性がある。交通インフラが整うのもこれからだし、とても魅力を感じています。

【田原】世界で争うとしたら、ライバルは日本の自動車メーカーよりグーグルですか。

【谷口】レベル4のサービスで競合するのはウーバーでしょうね。勝算はあります。技術の追求も大事ですが、ビジネスとしては先に実装したほうが勝ち。私たちはロボットタクシーを日本で成功させ、アジアにもすぐ展開します。アジアを獲れば、世界でも優位に立てるはずです。

【田原】頼もしいですね。ぜひ頑張ってください。

田原氏への質問:ずばり、商売で成功する秘訣は何ですか?

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【田原】僕は商売人じゃないから、成功する秘訣はよくわかりません。これまでさまざまな経営者と会ってきましたが、成功の共通点は見出しづらいというのが正直なところです。

ただ、失敗するパターンはある。それは、値下げすることです。価格を下げることでしか勝負できなくなったら、たとえ名経営者でもかなりの確率で失敗します。価格を下げるということは、価格に見合う付加価値がないということ。あたりまえですが、付加価値を生み出せない商売は長続きしない。より安く売るところと我慢比べになって、最後は倒れるだけです。幸い、自動運転車は付加価値が高い事業に思えます。自分たちが提供できる価値を見失わないことが大切です。

遺言:商売の失敗は、値下げから始まる

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

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