- 2016年01月28日 13:00
2020年までに実現! 無人運転車のキーマン【1】 -対談:ZMP社長 谷口恒×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」
田中角栄が描いた40年前の構想
【田原】2015年5月、谷口さんのZMPはDeNAと組んでロボットタクシーという会社を立ち上げた。ロボットタクシーって、いったい何です?
画像を見るZMP社長 谷口恒氏
【谷口】自動運転技術を活用した新しい交通サービスです。イメージとしては、携帯端末で目的地を指定するだけで自動運転車が迎えにきて、カメラで自動認識してドアを開けてくれて、最短ルートで送り届けてくれるようなサービスですね。
【田原】夢のような話だけど、そもそもどうしてそんなサービスをしようと思ったのですか。
【谷口】私は兵庫県姫路市の出身ですが、7~8年前に地元のタクシー会社が廃業して、駅前からタクシーがいなくなりました。仕方がないから隣の駅から呼んでいたのですが、隣の駅も似たような状況になって、いまは隣の隣の駅から呼ばないとタクシーに乗れません。これは姫路だけではなく、全国の地方で起きている現象です。本当は田舎にもいいところがいっぱいあるのに、交通の便が年々悪くなり、住みづらさが増しています。これを解決するには、運転手が要らない自動運転タクシーがいいだろうと。
【田原】過疎化が進んで人手が足りない地方で、新しい交通インフラをつくろうということですか。
【谷口】そうですね。地方の発展に交通インフラの充実は欠かせないと思います。3カ月くらい前、古本屋さんで田中角栄元首相の『日本列島改造論』をたまたま手に入れました。そこにはCVS(Computer-controlled Vehicle System)、つまりコンピュータで制御された乗り物システムの話が登場していました。私たちがやろうとしているロボットタクシーがまさにそれにあたりますが、40年以上も前にそれについて触れているのは、さすがだなと思いました。
【田原】へえ。僕も『日本列島改造論』を何度も読みましたが、それは知らなかった。田中角栄は「国土の均衡ある発展」と言って、そのころ“裏日本”と言われていた日本海側を発展させるためにいろいろ苦心していた。昔もいまも、地方活性化の答えの一つは交通インフラだというのは面白いね。
画像を見る東京・文京区の開発拠点には世界中から技術者が集まる。
【谷口】田中角栄さんが情熱を持って国を変えたように、私もロボットタクシーで地方を変えたい。その思いが、この事業の根本にあります。
【田原】わかりました。気になるのは、本当にロボットタクシーが実現するかどうか。自動運転技術は、いまどこまで進んでいるのですか。
【谷口】自動車の運転は、レベル1から4まであります。人が運転する自動車はレベル1。次のレベル2がADAS(Advanced Driver Assistance Systems)と呼ばれる運転支援システムで、よそ見してぶつかりそうになったときにブレーキをかけてくれたり、高速道路なら人が運転しないでも真っすぐ走ってくれたりします。次のレベル3は、ADASがさらに高度になったもの。そしてレベル4が、運転手が要らない完全な無人運転です。いま自動車メーカーはレベル2を実装し始めていて、次のレベル3を目指している段階です。
【田原】谷口さんのところも、まずはレベル3を実現させるのですか。
【谷口】いや、私たちはいきなりレベル4の無人運転を狙っています。レベル3までは人が運転するので、ビジネスモデルも現在の延長線上といえます。一方、レベル4は無人なので、ゲームチェンジが必要になる。日本の既存の自動車会社はビジネスモデルを変えることを嫌ってレベル3を目標にしていますが、国際競争力を考えると、レベル4をやらないとダメ。いま、日本でレベル4に手を挙げているのはZMPだけです。
【田原】海外ではどうですか。
【谷口】アメリカのウーバー(UBER)というタクシー会社や、グーグルも自動運転の実験をやってます。
【田原】グーグル?IT企業が自動運転の研究をするんですか。いったい何が目的だろう。
【谷口】グーグルの社員じゃないのでわかりませんが、伝えられているところでは、自動運転車からいろいろデータを取り、グーグルマップなどと組み合わせて新しいサービスをつくるという話です。私たちと考えていることは違いますが、レベル4を前提としていることは同じです。
技術的にはあと3年で実用化
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ZMP社長 谷口恒氏の経歴
【田原】レベル4の無人運転は、もう技術的に可能なのですか。
【谷口】法律の問題で人が乗ってハンドルは握る必要がありますが、もうアクセルやブレーキは踏まなくていいというところまできています。ただ、一般道では難しいところがまだ多いですね。高速は真っすぐで何もないからいいのですが、一般道は道が狭く、人もどんどん飛び出してきます。とくに日本は道路が複雑です。たとえば渋谷の交差点は人がうじゃうじゃいるし、汐留は工事が多くてプロの運転手でも車線に迷います。ああいうところでは、まだ自動運転はできません。
【田原】一般道でできないなら、ロボットタクシーなんて無理じゃないですか?
【谷口】高速道路は日本で1割くらいしかないので、たしかにご指摘の通り、一般道で自動運転できなければみなさんの役に立てません。私たちはベンチャーなので、そこに挑戦しなければ意味がない。ですから、いま一般道で実験を重ねているところです。具体的にいうと、いま名古屋の守山というところで市街地のバス専用レーンを走らせています。次は、神奈川県藤沢市の公道。徐々に複雑なところで実験を重ねて、この町のここまで行けたか、事故は起こらなかったというレポートを政府に提出して、ドライバーがいなくても大丈夫だということを説得する計画です。
【田原】このままいくと、いつごろ実用化されますか?
【谷口】技術的には、あと3年です。それで2019年には国に承認してもらい、そこからロボットタクシーを3000台生産します。生産に半年かかったとしても、東京オリンピックには十分に間に合います。
【田原】3000台を一気につくるとしたら、大きな工場が必要ですね。半年でできるかな。
【谷口】工場を自社で持つのではなく、自動車整備工場のネットワーク化で対応するつもりです。ロボットタクシーは、ゼロから自動運転車をつくるのではなく、既存の自動車を買ってきて改造してつくります。改造技術があればいいので、整備工場と契約して、部品を納めてセットアップしてもらいます。
【田原】なるほど。もう一つ、気になるのは価格です。過疎地域に交通インフラとして定着させるには、運賃を安くしないといけません。低運賃を実現するには、ロボットカーのコストも下げないといけない。1台つくるのに、いくらかかりますか。
【谷口】いま自動運転車を1台約5000万円で販売していますが、3000台生産時は、本体を500万円で買ってきて、500万円で改造し、1台1000万円というところまで持っていきたいです。1000万円というと高く感じるかもしれませんが、従来のタクシーは車両だけでなく人件費がかかります。人件費が不要ということを考えれば1000万円は高くないし、そのぶんサービス料も安くできるでしょう。
田原総一朗1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
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