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日本政府の契約精神の欠如

タイトルをみて「反日」だと思うならばここで読むのを止めましょうね。

ご存じのように、英国デザイナーのザハ・ハディドさんの新国立競技場のデザインは撤回され、隈さんによる新しいデザインが発表されました。これまでの時間と費用はもったいないのですが、契約中止自体はよくあることです。契約書の中止条項に基き、各自が義務を果たせば何の問題もありません。

しかし、今年になってハディドさんは「日本JSCは支払を拒否し私の著作権を奪取しようとしている・・・満足できる解決がなければ法的措置をとる」と世界のマスコミに訴えたのです。ザ・テレグラフ紙が入手した日本JSCの文書複製によると、日本JSCはハディドさんの元デザインを新デザインに「無制限な変更および再利用」ができるように、条項改変を要求したのです。
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/12097541/Japan-Sports-Council-refusing-to-pay-British-architect-for-2020-Tokyo-Olympics-stadium-designs.html

ここに日本JSCの契約精神の欠如を見ることができます。
まず、契約に書いていない内容を後になって追加するのは相手にお願いすることです。それを理由に支払いを停止するのは契約違反です。

次にハディドさんのデザインを止めて隈さんのデザインを採用した以上、隈さんのデザインにハディドさんのデザインを含めてはいけません。含めるならば、事後ではなく事前の了解が必要でした。

最後にもし、ハディドさんが指摘した新デザインのパクリ問題(腕状体、地上出入口、内部構造レイアウト、ランドスケープ、アクセス戦略、サービスアクセスなど)が本当であれば、日本JSCの契約変更要求は明らかにパクリ問題を隠すための口封じ作戦です。

パクリに不払い。まさに契約精神の欠如の極まりです。

考えてみれば日本JSCのパクリとの縁はなかなか深いものがあります。審査過程を操作して選んだエンブレムはパクリの指摘でしぶしぶ撤回されました。スタジアムは「世界一」の建設費で国民の怒りを買って中止しましたが、その僅か14週間後に予算に合う新しいデザインが発表されました。


ハディドさん達はデザインに二年間も費やしたことを考えると新デザインの速さはまたも「世界一」に見えたのですが、外形のデザインだけを変え、ハディドさんの内部設計とコスト削減案を流用すれば、確かに14週間で予算に合う「新デザイン」は可能です。やっぱりパクリの色が濃厚です。

日本JSCは日本政府ではないという人もいますが、これは日本外務省が日本政府ではないというような台詞です。東京オリンピック招致の時から安倍総理が日本政府を代表して約束しました。すべての最終決定は政府高官が行っていますし、最終責任を持つのも日本政府です。

インドネシア政府と中国企業との高速鉄道の契約を、日本の官房長官が激しく批判しました。この取れない契約への批判はまさに契約精神の欠如です。契約しない権利は誰にでもあるからです。数カ月後、インドの日本新幹線方式の採用について問われた中国のスポークスマンは「インド政府には選択する権利がある。我々はそれを尊重する。」と回答しました。

日本はインドネシアが中国企業に地質データを提供したことも批判しました。賄賂をもらったとの報道も流行りました。しかし、契約に使用制限条項がない限り、地質データはあくまでも地主(依頼主)のものです。店員が測った客の身体サイズは店のものではないのです。客が他の店で服を買った時に「俺が測ったサイズを使うな」と言ってはいけません。

さて、今回のハディドさんの扱いについて、私の知っている限り、日本人の殆どが日本政府のやり方に恥ずかしい思いをしています。「まるで途上国のようだ」という方もいますが、賛成できません。契約精神が欠如する人はどんな国にもいるからです。途上国では民間人が多く、日本では政治家が多いようですが・・・。
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宋 文洲


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