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蜘蛛のお話しって色々あるよね

 世界経済は混沌としており、リーマンショックを彷彿とさせるような荒れた相場が続いてる。日経平均株価は音を立てて下落し、15日には、北海ブレンド原油価格が1バレルあたり、29ドルを下回った。原油の供給過剰が目に見えて明らかになってきており、イランとサウジラビアとの地政学的リスクも上昇している。もはや各国中銀の量的緩和だけでは、この状況を打破できようはずもなく、悪戦苦闘している。さらにここに中国経済のハードランディングが懸念されてきており、新興国に暗い影を落としている。

 さらに最悪なことに金融規制は年々厳しくなってきており、グローバル金融機関は、リスクアセットを大幅に減少せざるをえない現状だ。これからますます投資資産に叶う収益率が求められるのは紛れもない事実で、それに沿うような形で、組織を縮小するしかない。そうなると、経営層は、なんとかコストを減らして見た目の収益率を良く見せようと躍起になる。つまり初期投資を恐れずにシステム開発にかじ取りを向けるはずで、これからますます「生産性」は向上するだろう。人件費削減という犠牲を恐れずに。

 ぼくはあまりにも暗い気持ちになったので、ふと本棚から芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が目に入り、手に取った。あまりにも有名であらすじを話す必要はないかもしれないけれど、一応書き記していく。これは釈迦が、極楽の蓮池を通して、地獄をみていたとき、罪人の中にひとりの男を見つけた。この男は大変な悪党であったが、過去に一度だけ善行を成したことがあった。それは小さな蜘蛛を踏み殺しかけて止め、命を助けたことだった。それを思い出した釈迦は、彼を地獄から救い出そうと、一本の蜘蛛の糸をこの男めがけて下ろした。極楽からの白い蜘蛛の糸が見え、男は「この糸を登れば助かる」と考え、糸につかまって昇り始めた。ところがふと下を見下ろすと、数多の罪人達が自分の下から続いてくる。このままでは重みで糸が切れると思い、「この蜘蛛の糸は俺のものだ。下りろ」と喚いた。すると蜘蛛の糸が男の所から切れ、彼は再び地獄の底に堕ちてしまった。


 この話を読んでぼくは、ふとギリシャ神話を思いだした。それは「蜘蛛になったアラクネ」というものだ。これは少しあらすじを話しておいたほうがいいかもしれない。

 昔、リュディアという地方にアラクネという機織りの上手な娘がいた。そして娘の技術は相当なもので、「工芸を司る女神アテナ」に教わったに違いないと噂になるほどだった。アラクネは、この噂を誇りに思うのではなく、逆に自尊心を傷つけられた。そこでアラクネは、「私の機織りの技術は、アテナ様であろうとも負けるはずがなく、当然アテネ様から教わったものではない」とふれまわるのだ。

 これを聞いた村の人たちは、「早くその言葉を取り消しなさい」と諭すが、一向に聞き入れずにいると、あるとき、老婆に姿を変えたアテナが地上に降りたち、アラクネを戒めにいった。しかし、その言葉も無視して頑として言葉を取り消さなかったため、アテナは、ついに変身をとき、「それなら私と勝負しましょう」とけしかけた。

 そこで機織りの勝負が始まったが、アラクネの技術は本当に素晴らしく、甲乙つけがたい腕前だった。しかしアラクネの織る布には、ゼウスが人間の娘たちを誘惑する姿が描かれており、尚も神々を侮辱するものだったことから、アテナはこれに対してひどく怒り、アラクネの織った布を引き裂くと、頭を機織りの道具で叩いた。この時になってアラクネは、やっと自分の犯した罪に気がつき、その恐ろしさに絶望したアラクネは、自殺を図ってしまうのだ。しかし、これを哀れに思ったアテナは、彼女の命を助け、彼女を蜘蛛に変えることでその罪を許した。こうして、助けられたアラクネは、今でも空中にぶら下がって、懸命に機織を続けているのだそうだ。


 ぼくはこの二つの話が繋がっているような気がした。蜘蛛になったアラクネは、懸命に機織りを続け、罪を償おうとしていたのかもしれない。そして釈迦がその蜘蛛になったアラクネを地獄に向けて糸を下ろすように指示したのだと思うと、興味深い。人間は一度失敗しないと、学ばないのだろう。このあと糸を切られた男は、どう地獄で過ごしたかはわからないが、「あのとき皆を登らせてやればよかった」と後悔するかもしれない。


 リーマンショックの影響は計り知れない。今もなお続いていると言って過言ではない。米国からはじまった金融危機が、欧州債務危機を引き起こし、それをなんとか正常に戻そうと各国中銀が巨大なマネーを市場にばらまき体力を失っただけでなく、規制委員会は、二度とあのような大惨事を引き起こすまいと、過剰なほどの規制を作って、金融機関を締め付けている。金融機関は、もはや絶対額の収益をあげることから、少ないアセットで、莫大な収益をあげるという無理難題を課せられている。当然ながら、負担が過度にかかり、多くの金融機関は疲弊しきっている。

 この辺で蜘蛛の糸おろしてくれないかなぁ。もういいころだとおもうのだけれど。

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