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謝罪とは違う自己批判という名の処罰 - 増沢隆太

人間が人間である理由に、自分という認識、自己概念の存在があります。何らかの失敗やトラブルで謝罪をすることは誰にもありますが、カルト宗教や左翼過激派集団などは、自己批判という手段を強要することがあります。謝罪の一部にも見える自己批判ですが、その目的は明確に異なります。

■夫婦ゲンカで謝罪強要させると何が起こるか


夫婦ゲンカなどで、相手に謝罪を強要することはないでしょうか?もちろん本来の、自らの気付きによる自己批判は悪いものではありません。しかし自ら謝るのではなく、それを無理じいするようなことが、身内のケンカなどでもあり得ます。これはとても危険な行為なのです。

謝罪「させた側」には万能感や勝利の喜びという快感をもたらすかも知れません。一方「させられた側」は、心底納得することがなかったとしても、謝罪を強要されるに至った言葉による暴力による脅迫や、この場を収めたい一心で謝罪をすることになります。その心の中は納得感ではなく屈辱感と敗北感、そして何より復讐につながる怒りの種がまかれることになります。

これが積み重なることで夫婦や家族にも亀裂が生じ、最終的に崩壊に至る可能性は十分あります。一時の勝利による満足感の代償として、深い恨みと復讐の芽を植え付ける行為が謝罪強要であることは、決して軽んじることができません。

■連合赤軍事件


政治や宗教のカルト組織・集団で、何らかの問題を起こしたメンバーは、猛烈な批判を受けます。罵詈雑言という言葉の暴力だけでなく、実際の物理的暴力、生命まで脅かした事件が過去にも多数起こっています。

犯罪集団内は、反組織行動の取締りが目的ですから、単に自分で反省の弁を述べたところで許されることはありません。連合赤軍事件などでは、組織統率者が満足できる回答にたどり着くまで、執拗な暴力で肉体とともに精神を破壊して行く過程が明らかになりました。

被害者は暴力から逃れたいあまりに、統率者の意向を忖度し、それを言い当てように努力します。これにより統率者の意向通りの回答を「自ら」発信しはじめることで、自己批判が完成するのです。オウム事件などでも同じような行為があったとされ、暴力集団の組織統制において良く使われる手法といえます。

■人質が無表情な訳


当然ですが自己批判には「自己」と名がついてはいますが、こんな暴力行為の結果強要された発言が自己であるはずがありません。暴力などによる変性意識状態という、普通ではない状態において他者が作ったのが自己批判です。

ISISが人質を取って身代金要求する事件で、人質はビデオで自国政府批判を語ったり、自らの行為を批判します。正に絵にかいたような自己批判の姿を見ることができます。

その言葉を発している人質たちの表情、目線はいわゆる死んだ顔や死んだ目となっていることが見る人には伝わります。話している言葉のトーンも当然覇気はありません。しかし嫌々やらせれているように話せば、さらなる暴行を受けるでしょうから、最大限できる抵抗が無表情・無感情なふるまいなのです。

■自己批判をさせても勝利ではない


孫子は「是故百戦百勝、非善之善者也。不戦而屈人之兵、善之善者也」と書いています。戦って必ず勝つ状態が優れたものではなく、戦わずして屈伏させることこそ最上であるという意味です。

「戦わずして」相手に負けを認めさせることができれば、味方の損傷もなく、相手に深い恨みや反逆心を持たせることを避けられます。肉体や言葉による暴力で相手に強要した自己批判など、一時の満足感でしかありません。

自己批判をさせたことが勝利ではなく、まだ戦いは終わっていません。表向きの戦いが無くなったとしても、深い恨みが底流に残り、いつか再び反攻ののろしを上げることになるでしょう。

人間の心、尊厳というものは決して力だけで圧倒することはできません。北風と太陽の寓話のように、自らが考えを変えるように納得させてこそ、本当の勝利といえます。

【参考記事】
■敗者は勝者に 「観応の擾乱」の歴史に学ぶ
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850257
■ソーシャルメディアを使う資格
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850304
■「石の上にも三年」の真の意味
http://sharescafe.net/47148491-20151209.html
■「出世したくない」人の未来
http://sharescafe.net/46742045-20151030.html
■内定辞退の作法。
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html

増沢隆太 人事コンサルタント 株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役

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