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ミサイル防衛:SM-3ブロック2AはICBM対処能力がある?

ハワイのカウアイ島にはイージス・アショアの試験施設(Aegis Ashore Missile Defense Test Complex(AAMDTC))があり、現在、迎撃試験などで運用されています。

イージス・アショアは、運用経験を積み重ねたイージス艦による海上のシステムを陸揚げしたものですから、信頼性は初めからある程度高いものといえます。すでに1度目の迎撃実験「FTO-02イベント1a」にも成功しています。
ハワイ・カウアイ島沖にて、空軍のC-17から準中距離弾道ミサイル標的が発射され、AN/TPY-2レーダー(前方配備モード)がこれを探知、追跡データをC2BMCシステムへ送信。イージス・アショアのイージス・ウェポン・システムがデータを受信し、AN/SPY-1レーダーを用いて標的を追跡、交戦のための火器管制を行い、イージス・ウェポン・システムがSM-3ブロック1Bを発射、標的を直撃し、運動エネルギーによって破壊しました。

陸上型イージス:「イージス・アショア」による初の迎撃実験が成功
このハワイにあるイージス・アショア試験施設を、なんと実戦配備施設(combat-ready facility)にすべき、という議論が始まりました。
Exclusive: U.S. weighs making Hawaii missile test site operational - sources(2016/1/23 ロイター)
米本土にはGBI、グアムにはTHAADがありますが、ハワイを弾道ミサイルから守る陸上配備型迎撃手段は手薄でした。米議会予算局(CBO)の資料[PDF]によると、イランの弾道ミサイルに対してハワイは一応GBIの守備範囲であるという説明ですが、なにぶんGBI自体の開発が順調とはいえない中、進展する北朝鮮や中国の弾道ミサイル脅威に対して脆弱ではないか、という懸念がCSIS(戦略国際問題研究所)の報告書[PDF]でも示されたばかりです。

ハワイのイージス・アショア試験施設を実戦配備施設へと変更するというのは、そうした文脈上にある議論ですが、このニュースにはちょっと驚きました。というのも、たとえば北朝鮮からハワイに到達する弾道ミサイルは射程約7,500kmの大陸間弾道ミサイル(ICBM)でなければ届きません。当然、中国から発射されるものは1万kmを超える射程を持つことになります。

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これらの弾道ミサイルからハワイを防護するということは、SM-3ブロック2AはICBMを迎撃する能力がある、と見てよいのでしょうか?ざっくりとした計算ですが、射程7,500kmの弾道ミサイル(射角45度、重力加速度g=9.8m/s2とすると約20分でハワイに到達)の最大到達高度は約1,800kmなので、SM-3ブロック2Aはこれをミッドコースで撃ち落とす迎撃高度をもっているというわけですね。

う〜ん、以前、ブロック2Aの最大射高は2,350kmと見積もる資料がありましたが、これはいよいよブロック2Aの能力が考えられている以上に高いということになるかもしれませんね。

◇ ◇ ◇

ここのところ、ミサイル防衛関係のニュースが続いています。このハワイのイージス・アショア以外にも以下のようなものが。メモ代わりに。

THAAD関連:

CSISの報告書[PDF]で結構な量で言及されています。現行型THAADの9〜12倍の射程を持つ迎撃距離延伸型「THAAD-ER」。極超音速システムを迎撃する能力も持つとのこと。以前報じられていた二段式THAADの事ですかねえ。2025年までには配備するよう求めているようです。また、計画されている7個中隊では足りないので、9個に増やすべき、との提案も。

THAADに関しては在韓米軍への配備だけでなく、韓国へもTHAAD導入を提案しています。韓国独自で進めているKAMD(韓国防空ミサイル防衛)は何十年もかかるだろうから、THAADのほうが経験も豊富だしお得だよ、とのこと。この報告書は韓国にわりと厳しくて、「MDシステムにおいて日本は同盟国の中で米国と相互運用能力が最も高いが、日韓間の情報共有不足が地域全体におけるMDシステムの効率的な運用を制限している」と指摘しています。米国が仲立ちして進めていた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)のことですね。2012年に韓国側が土壇場でゴネて立ち消えてしまいました。日韓どちらを責めているわけではありませんが、報告書のニュアンスは韓国を急かしている感じですね。

米韓間でリンク16連結:

北朝鮮ミサイル、米と情報共有強化=日本含む3カ国協力可能に−韓国国防省(2016/1/22 時事通信)
北朝鮮の弾道ミサイルに対し、米韓がリアルタイムで情報共有することになりました。日米ではすでに運用されており、これで日米韓3カ国の情報共有が可能になりますね。CSISが日米のMDシステムに韓国も参加するほうが良いのに、と提案し、かつ情報共有システム上、韓国だけが立ち遅れてるよ、という懸念に応えたことになると思いますが、韓国側は「韓国軍の不足分を補強するというだけでMDとは関係がない」(2016/1/22 中央日報)なんてことを言っております( ̄ω ̄;) 北京の顔色が気になるんですかねえ…。

ABL(空中発射レーザー)再び?

MDA hopes to trial laser-armed UAV for ABM defense in 2021(2016/1/22 Alert5)
2012年に凍結されたABLによる弾道ミサイル迎撃システムを今度はUAVに搭載するという話が出ています。以前のABL計画では、ボーイング747-400F型貨物機を改造した機体に、各種レーザーやターレット、管制システムを搭載したYAL-1AがABL機として運用されるものでしたが、小型化することで前線に配備するということなのでしょうか?少し楽しみです。

ミサイル防衛関連トピック詰め合わせでした。

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